2007/01/16

酒石酸とグリセリンと猿のリナージュ (1/7)

呪術とは、経験的事実に基づこうとする点で宗教よりも科学の方にに近いが、科学的に証明されざるもの。たとえば、"Intercessory Prayer"は科学的な方法でその効力を証明しようという試みが繰り返されているが、いまだその実在が証明されたことはない。

==>忘却からの帰還: "Intercessory Prayer"動向(1,2,3,4,5,6,7)

だから、"Intercessory Prayer"は呪術の版図内にある。そんな今日の代替医療が基づくものと主張し、6つの呪術を挙げたのが、Phillips Stevens, Jr.(2001)である。そのひとつが、"A coherent, interconnected cosmos"(コヒーレントで、すべてがつながった宇宙)である:
It is widely believed that everything in the cosmos is actually or potentially interconnected, as if by invisible threads, not only spatially but also temporally-past, present, and future. Further, every thing and every event that has happened, is happening, or will happen was pre-programmed into the cosmic system; and after it has happened, it leaves a record of itself in the cosmic program.

宇宙にあるすべてのものが、実際に、あるいは潜在的に見えない糸でつながれたように、相互につながっていて、それは空間的なつながりだけでなく、過去・現在・未来と時間的にもつながっていると広く信じられている。さらに、あらゆる物事、そしてこれまでに起きたこと、今起きていること、そしてこれから起きることが、すべてあらかじめ、宇宙のシステムにプログラムされている。そして起きると、それはそれ自体の記録を宇宙のプログラムに残していく。

この呪術に"Morphic Field"という名を与えて科学にしようとしたのが、1942年生まれのDr. Rupert Sheldrakeである。"Morphic Field"とはDr. Rupert Sheldrakeによれば、自然の記憶であり、時間とともに変化する自然法則、結晶構造、生物の形態などを記憶し、生物個体間のテレパシーを媒介するというもの。1981年の著書"A New Science of Life"で"Morphic Resonance"(形態共鳴)あるいは"Morphogenetic Field"(形態形成場)と呼んで提唱したものである。

"Intercessory Prayer"と同じく、メカニズムなどは一切提示されないので、"超自然"といってよい。ただ、メカニズムを特定しないからといって、科学としては成立しないというわけではない。

==>Lenny Flank: "Does science unfairly rule out supernatural hypotheses?"
==>忘却からの帰還:科学は先験的に超自然を排除するか?

とはいえ、Marks and Colwell[2000/09]と、Sheldrake [2001/03]と、Robert Baker [2000/03, 2001/03]の応酬などを見る限り、Dr. Rupert Sheldrakeは超自然を持ち込むだけの根拠は示せていない。


Lyall Watsonとの違い

Dr. Rupert Sheldrakeと同様な主張をしているのが、1939年生まれのLyall Watsonである。Lywall Watsonは、1979年出版の著書"Lifetide"で、"Contingent System"(コンティンジェントシステム)という名をつけ、その例として、"百匹目の猿現象"と"グリセリンの結晶化"などを挙げた。が、いずれも事実の捏造だったことが明らかになっている。

Lywall Watsonと違って、Dr. Rupert Sheldrakeは明白な事実の捏造をしていない。たとえば"グリセリンの結晶化"と似たネタで、酒石酸エチレンジアミンの水和物のエピソードを挙げている。これは現象自体は事実なのだが、"グリセリンの結晶化"のような派手さがないのか、あまりネット上で語られることがない。また、Dr. Rupert Sheldrakeは"百匹目の猿現象"について:
Rupert Sheldrake: Answers to Your Most Frequently Asked Questions

The 100th monkey story is often told and appears to support the idea of morphic resonance. However, I never use this myself because most of the versions of it that are in circulation have drifted a long way from the actual facts. It is then easy for sceptics to debunk.

百匹目の猿の話は形態共鳴(morphic resonance)を支持するものとして語られている。しかし、私自身はこれを使ったことはない。というのは、この話の流布されている大半のバージョンは事実とはかけ離れているからだ。懐疑論者が偽りを暴くのは容易だ。
と述べて、自説の論拠にはしていない。同様にグリセリンの結晶化について、Dr. Rupert Sheldrakeはまったく触れていない。


捏造ネタ"百匹目の猿現象"と"グリセリンの結晶化"に科学の装いを与える役回りに

Dr. Rupert Sheldrake本人が"百匹目の猿現象"を論拠にしないと明言している。ネット上でもDr. Rupert Sheldrakeの熱狂的支持者と思われるJames Kieferは、Lyall Watsonなど信用できず、"百匹目の猿現象"は事実に基づかず、Dr. Rupert Sheldrakeは"百匹目の猿現象"に言及していないと書いている[ここ]。

しかし、それは例外的で、むしろ"百匹目の猿現象"と"グリセリンの結晶化"とともに、Morphic Field(形態場)が語られる例の方が多い。というより、捏造ネタに科学の装いを与えるために、Morphic Field(形態場)が持ち出されるという方が正しいかもしれない。

というのは、Dr. Rupert Sheldrakeとその主張たるMorphic Field(形態場)を持ち上げるのなら、"百匹目の猿現象"と"グリセリンの結晶化"などというLyall Watsonの捏造ネタなど持ち出すはずもないからだ。

ということで、Morphic Field(形態場)がまっとうかどうかは、さておいて、"酒石酸エチレンジアミンの水和物"と、捏造ネタ"百匹目の猿現象"と捏造ネタ"グリセリンの結晶化"について、ちょっと追いかけてみたい。

posted by Kumicit at 2007/01/16 02:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | Hundredth Monkey | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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