==>忘却からの帰還: "Intercessory Prayer"動向(1,2,3,4,5,6,7)
だから、"Intercessory Prayer"は呪術の版図内にある。そんな今日の代替医療が基づくものと主張し、6つの呪術を挙げたのが、Phillips Stevens, Jr.(2001)である。そのひとつが、"A coherent, interconnected cosmos"(コヒーレントで、すべてがつながった宇宙)である:
It is widely believed that everything in the cosmos is actually or potentially interconnected, as if by invisible threads, not only spatially but also temporally-past, present, and future. Further, every thing and every event that has happened, is happening, or will happen was pre-programmed into the cosmic system; and after it has happened, it leaves a record of itself in the cosmic program.
宇宙にあるすべてのものが、実際に、あるいは潜在的に見えない糸でつながれたように、相互につながっていて、それは空間的なつながりだけでなく、過去・現在・未来と時間的にもつながっていると広く信じられている。さらに、あらゆる物事、そしてこれまでに起きたこと、今起きていること、そしてこれから起きることが、すべてあらかじめ、宇宙のシステムにプログラムされている。そして起きると、それはそれ自体の記録を宇宙のプログラムに残していく。
この呪術に"Morphic Field"という名を与えて科学にしようとしたのが、1942年生まれのDr. Rupert Sheldrakeである。"Morphic Field"とはDr. Rupert Sheldrakeによれば、自然の記憶であり、時間とともに変化する自然法則、結晶構造、生物の形態などを記憶し、生物個体間のテレパシーを媒介するというもの。1981年の著書"A New Science of Life"で"Morphic Resonance"(形態共鳴)あるいは"Morphogenetic Field"(形態形成場)と呼んで提唱したものである。
"Intercessory Prayer"と同じく、メカニズムなどは一切提示されないので、"超自然"といってよい。ただ、メカニズムを特定しないからといって、科学としては成立しないというわけではない。
==>Lenny Flank: "Does science unfairly rule out supernatural hypotheses?"
==>忘却からの帰還:科学は先験的に超自然を排除するか?
とはいえ、Marks and Colwell[2000/09]と、Sheldrake [2001/03]と、Robert Baker [2000/03, 2001/03]の応酬などを見る限り、Dr. Rupert Sheldrakeは超自然を持ち込むだけの根拠は示せていない。
Lyall Watsonとの違い
Dr. Rupert Sheldrakeと同様な主張をしているのが、1939年生まれのLyall Watsonである。Lywall Watsonは、1979年出版の著書"Lifetide"で、"Contingent System"(コンティンジェントシステム)という名をつけ、その例として、"百匹目の猿現象"と"グリセリンの結晶化"などを挙げた。が、いずれも事実の捏造だったことが明らかになっている。
Lywall Watsonと違って、Dr. Rupert Sheldrakeは明白な事実の捏造をしていない。たとえば"グリセリンの結晶化"と似たネタで、酒石酸エチレンジアミンの水和物のエピソードを挙げている。これは現象自体は事実なのだが、"グリセリンの結晶化"のような派手さがないのか、あまりネット上で語られることがない。また、Dr. Rupert Sheldrakeは"百匹目の猿現象"について:
Rupert Sheldrake: Answers to Your Most Frequently Asked Questionsと述べて、自説の論拠にはしていない。同様にグリセリンの結晶化について、Dr. Rupert Sheldrakeはまったく触れていない。
The 100th monkey story is often told and appears to support the idea of morphic resonance. However, I never use this myself because most of the versions of it that are in circulation have drifted a long way from the actual facts. It is then easy for sceptics to debunk.
百匹目の猿の話は形態共鳴(morphic resonance)を支持するものとして語られている。しかし、私自身はこれを使ったことはない。というのは、この話の流布されている大半のバージョンは事実とはかけ離れているからだ。懐疑論者が偽りを暴くのは容易だ。
捏造ネタ"百匹目の猿現象"と"グリセリンの結晶化"に科学の装いを与える役回りに
Dr. Rupert Sheldrake本人が"百匹目の猿現象"を論拠にしないと明言している。ネット上でもDr. Rupert Sheldrakeの熱狂的支持者と思われるJames Kieferは、Lyall Watsonなど信用できず、"百匹目の猿現象"は事実に基づかず、Dr. Rupert Sheldrakeは"百匹目の猿現象"に言及していないと書いている[ここ]。
しかし、それは例外的で、むしろ"百匹目の猿現象"と"グリセリンの結晶化"とともに、Morphic Field(形態場)が語られる例の方が多い。というより、捏造ネタに科学の装いを与えるために、Morphic Field(形態場)が持ち出されるという方が正しいかもしれない。
というのは、Dr. Rupert Sheldrakeとその主張たるMorphic Field(形態場)を持ち上げるのなら、"百匹目の猿現象"と"グリセリンの結晶化"などというLyall Watsonの捏造ネタなど持ち出すはずもないからだ。
ということで、Morphic Field(形態場)がまっとうかどうかは、さておいて、"酒石酸エチレンジアミンの水和物"と、捏造ネタ"百匹目の猿現象"と捏造ネタ"グリセリンの結晶化"について、ちょっと追いかけてみたい。
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