Dr. Rupert Sheldrakeはテレビ隠し絵実験でMorphic fieldを証明できず
1980年代前半にDr. Rupert Sheldrakeは英国ITVおよび英国BBCを使って、Morphic resonance/Morphic fieldの存在を確認する実験を行っている。
- 隠し絵を2枚用意する。Dr. Rupert Sheldrakeを含めてテレビ放映されるのがどちらの絵かわからない
- テレビ放映の数日前に、被験者に隠し絵2枚を見せて答えさせる。このとき、"lady with hat"(絵1)、"cossack with a big moustache"(絵2)など明確な回答のみ正解と判断する。
- 1983年8月31日 14:00〜14:30 に英国全土にITVで、絵2を放映。
- 放映後数日後に放映前とは別の被験者に隠し絵2枚を見せて答えさせる。明確な回答のみ正解と判断する。
放映後の被験者が、テレビ放映を見ている可能性を排除するために
- 放映地区である英国およびアイルランド(Cambridge, Dublin, Edinburgh, London, Newark, Norwich, Oxford)と、放映されない7地点(スイスのDavos, イタリアのLucca, 南アフリカのCapetownとStellenbosch, コロンピアのSanta Maria, 米国ミズーリ州のKansas Cityとフロリダ州のPalm Beach)から選出。
- 放映後の被験者は予めテレビを見ないように指示された
- 絵1を対象実験に使った
全世界 | 英国とアイルランド以外 | 英国とアイルランド | ||||
放映前 | 放映後 | 放映前 | 放映後 | 放映前 | 放映後 | |
参加者数 | 1053 | 847 | 754 | 576 | 299 | 271 |
図1のみ正解 | 63 | 45 | 34 | 29 | 29 | 16 |
両方正解 | 34 | 40 | 9 | 11 | 25 | 29 |
図2のみ正解 | 7 | 18 | 0 | 8 | 7 | 10 |
図1正解 | 97 | 85 | 43 | 40 | 54 | 45 |
図2正解 | 41 | 58 | 9 | 19 | 32 | 39 |
図1正解率 | 9.2% | 10.0% | 5.7% | 6.9% | 18.1% | 16.6% |
図2正解率 | 3.9% | 6.8% | 1.2% | 3.3% | 10.7% | 14.4% |
[Rupert Sheldrake: "A new science of life", Paladin Books 1987, pp.257-262]
結果は、放映地域である英国およびアイルランドと、放映地域外ともに、対照実験(放映されなかった)である絵1の正解率の増加に比べて、絵2の正解率の増加は大きかった。
これでMorphic Resonance/Morphic Fieldが証明できたわけではない。何故なら、被験者たちの行動を制御できていないからだ。1983年当時はインターネットが立ち上がり始めた頃であるとはいえ、国境線を超えた情報のやりとりは国際電話など幾らでも可能。しかも、英国およびアイルランドと、それ以外の地域の正解水準そのものが乖離しすぎていることも別の要因を疑わせる。
もちろん、Dr. Rupert Sheldrakeはそんなことはよくわかっていて:
Obviously, this experiment can be regarded only as preliminary, and the positive results may be explicable in terms of factors other than morphic resonance. However, the outcome is encouraging enough to make it seem worth repeating this type of experiment on large scale.と書いている。
明らかに、この実験は予備的なものだと考えられるし、ポジティブな結果はMorphic resonanceではない要因で説明できるかもしれない。しかし、この結果は、同様の実験を規模を大きくして行うに十分な希望を与えるものだ。
そして、Dr. Rupert Sheldrakeは1984年11月にBBCを使って、被験者数を3倍以上の6265人にして実験を行った。このとき対照実験の方法を1983年のITVとは変更している。
- 米国で1984年11月8日の前と後に被験者に対して絵1と絵2を見せて、回答させる。11月8日には放映はないので、違いは出ないはず。
- 米国・欧州・南半球で、1984年11月15日の前と後に被験者に対して絵1と絵2を見せて、回答させる。
- BBCで1984年11月15日に絵1と絵2の正解を放映
出題1, 正解1
出題2, 正解2
[Robert Gilman 1985/1986]
米国とカナダ | 米国とカナダ | 欧州 | 南半球 | |||||
11/8前 | 11/8後 | 11/15前 | 11/15後 | 11/15前 | 11/15後 | 11/15前 | 11/15後 | |
参加者数 | 368 | 437 | 1475 | 1432 | 1045 | 1139 | 174 | 195 |
図1正解 | 38 | 54 | 246 | 218 | 102 | 147 | 22 | 37 |
図2正解 | 42 | 49 | 161 | 171 | 76 | 79 | 17 | 20 |
図1正解率 | 10.3% | 12.4% | 16.7% | 15.2% | 9.8% | 12.9% | 12.6% | 19.0% |
図2正解率 | 11.4% | 11.2% | 10.9% | 11.9% | 7.3% | 6.9% | 9.8% | 10.3% |
[Rupert Sheldrake: "A new science of life", Paladin Books 1987, pp.263-264]
結果は、Dr. Rupert Sheldrakeによれば:
A positive effect was obtained in Europe (Finland, France, Germany, Ialy, Sweden, Switzerland, and Yugoslavia) with an overall increase in the proportion getting Fig.1 of 32%. There was practically no change in the proportion getting Fig.2. This result is statistically significance a the 2.5% level of probability by χ2 test on the overall data, and at the 2% by the Wilcoxon signed rank matched pairs test on the setsof data from individual experimenters.欧州でFig.1のみχ2で2.5%の有意な結果が出たが、Fig.2では有意な結果なし。北米では対照実験と本実験ともに有意差なし。南半球では正解率向上が見られたが、統計的有意ではないというもの。
In the Southern hemisphere (Australia, New Zealand, and South Africa), there was an overall positive effect, with anincreasein the proportion getting Fig.1, but this was not statistically significant.
In the North America(Canada and USA), there was no significant effect at all.
Dr. Rupert Sheldrake自ら、BBCでの実験ではMorphic resonance/Morphic fieldの存在を確認できる結果ではなかったことを記している。
とはいえ、Dr. Rupert Sheldrakeは自説を証明できない結果も自著(A new sciece of life)に記録しているところは、事実の捏造を行って自説を主張するLyall Watsonとの大きな違いと言えるだろう。
喰代栄一氏はうまくいったITVの結果だけを記す
Dr. Rupert Sheldrakeを持ち上げた本"なぜそれは起こるか"において、喰代栄一氏はこのテレビ隠し絵実験を取り上げている(pp.13-19)。喰代氏はITVでの予備的実験を詳細に記述する一方、BBCでの実験についてはまったく触れていない。そして:
このテレビ公開実験の結果が何を物語っているかは明白である。ひとたび多くの人々によって認識されたパズル絵の中の絵柄は、「シェルドレイクの仮説」により予想されたとおり、他の人々にも認識されやすくなってのである。さらに、この現象は、次に示す結晶にまつわる不思議な話とよく似ているのだ。(p.19)と、Dr. Rupert Sheldrake本人が主張していない"強い結論"を書いている。
喰代氏は参考文献に、BBCでの実験が載っているはずのPaladin Editionの"A new science of life"を挙げている。喰代氏はBBCでの実験結果を知らないはずはない。わかっていながら、Morphic resonance/Morphic fieldに不利なネタとして知らんぷりした。そして、そのまま次のページでLyall Watsonによる捏造ネタ"グリセリンの結晶"を語った(pp.19-21)。
喰代バージョンのリナージュ
日本語版も出版されているRupert Sheldrake:"A new science of life"は日本語版も出版されている。しかし、影響力があるのは喰代栄一:"なぜそれは起こるか"のようだ。googleで見つけたサイトたちだと:
http://bloom.at.webry.info/200612/article_1.html予備的実験なITVの実験だけに触れている。
1983年8月31日、イギリスのテレビ局テームズ・テレビによってシェルドレイクの仮説を調査する公開実験が行われた。...
http://www.tv-tokyo.co.jp/nms/column/tanaka/tanaka10821.html
また数10年前にイギリスのテレビ放送で行われた公開実験の結果はもっと衝撃的です。一枚の隠し絵に絡む実験ですが、テレビ放送の前と後では、明らかにテレビ放送後のほうが、より多くの被験者に隠し絵を認識されたのでした。
http://www1.ocn.ne.jp/~iyasiro/maji/sincro.html
この仮説を実証するために、イギリスのテレビ局テームス・テレビが公開実験を行いました。
http://www.ukinfo.jp/culture/sheldrake.php
他にも、テレビで公開実験もおこなっています。数10年前にイギリスのテレビ放送で行われた一枚の隠し絵に絡む実験ですが、テレビ放送の前と後では、明らかにテレビ放送後のほうが、より多くの被験者に隠し絵を認識されたのでした。
これの変形バージョンとして、ITVでの実験結果数値が、BBCでの実験の値になっているものもある:
http://synkro.livedoor.biz/archives/50119861.htmlこの変形バージョンは喰代氏のせいではない。数字も小数点以下が四捨五入されているが、喰代氏は小数点以下1桁まで書いている。また、BBCの実験に触れていない。
このシェルドレイクの仮説を元に、イギリスBBC放送局が実験をしました。
最初に「だまし絵」を認識出来た人は4%でした。
次に、同じ絵とその答えをテレビで放送。
その後で、まだこの絵を知らない人に見せた所、正解率は7%でした。
この4%から7%の上昇は統計学上偶然では説明出来ない数字だったのです。
http://kokoroblog.net/column/2005/11/post_45.php
http://www.unki-up.com/i/yoiko_53.html
この仮説を元に、イギリスBBC放送局が実験をしました。
最初に「だまし絵」を認識出来た人は4%でした。
次に、同じ絵とその答えをテレビで放送。視聴した何百万人かの人がこの絵を知った後で、まだこの絵を知らない人に見せた所、正解率は7%でした。
この4%から7%の上昇は統計学上偶然では説明出来ない数字だったのです。
Dr. Rupert Sheldrake本人と違って、Dr. Rupert Sheldrakeの支持者たちは、BBCでの隠し絵実験など見たくもない、あるいは知らないことなのだろう。
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