2007/01/25

IDは米国人の無知につけこむ by Lord J-Bar

Lord J-BarによるブログLord J-Bar For Democracy, Not Theocracyの2007年1月17日付のエントリ「Intelligent Design Is Actually Quite Clever (from a PR Standpoint) 」[via ID is supposed to be sneaky by PZ Myers on pharyngula]が、インテリジェントデザイン運動が人々の無知につけこんだものであると指摘している。

4点ほど指摘しているのだが、特に重要なのは次の2点。まずは科学とは何かを米国人の大半は知らないという点:
Unfortunately, most citizens of this country don’t have a solid understanding of science. The scientific method is almost always misunderstood, especially when it comes to the idea that hypotheses and theories have to be falsifiable. Furthermore, theories don’t actually “prove” anything, but are supported by evidence. Most people assume the opposite. They think science proves the existence of something and that scientific truths become infallible “laws.” One common argument I hear in favor of “scientific truths” is: “science has proven that the Earth revolves around the sun,” which is not entirely true. All science is driven by evidence, and evidence supports the theory that the Earth revolves around the sun. This theory could still be falsified with the proper evidence. I seriously doubt we’ll ever find this evidence, but that’s the best part of science. The door always stays open to allow new ideas to flourish and refuses to encourage rigid dogma.

ID advocates have seized this ignorance and run with it. Since most of the public has no idea that scientific theories must be falsifiable, ID advocates can push a “theory” that is impossible to falsify, and the public accepts it out of a lack of knowledge.

残念ながら、米国の大半の市民は科学についてちゃんとした理解がない。特に仮説や理論が反証可能でなければならないという点について、科学的方法をほぼ誤解している。さらに、理論は何かを証明するものではなく、証拠によって支持されるものだ。ほとんどの人々はこれを逆だと思っている。人々は科学は何かの存在を証明し、科学的真理が絶対確実な法則になるのだと思っている。私がよく聞く科学的真理の例は「科学は地球が太陽の周りを公転することを証明した」というもので、これはまったく正しくない。あらゆる科学は証拠によって駆動され、証拠は地球が太陽の周りを公転するという理論を支持する。この理論はそれでもなお、特定の証拠によって反証されうる。そんな証拠が見つかるとはまったくないと思うが、それが科学というものだ。新しい考えを花開かせ、固まった教義を奨励することを拒否するように、常に扉は開いている。

インテリジェントデザイン支持者たちは、この無知につけこんだ。ほとんどの人々は科学的理論が反証可能でなければならないことを知らないので、インテリジェントデザイン支持者たちは、反証不可能な理論を提示できて、人々は無知ゆえにこれを受け入れる。
反証可能性を理科で教わることもないので、日本でも同様だろう。

一応、インテリジェントデザイン理論家Dr. William Dembskiはインテリジェントデザインが反証可能だと言っている。しかし、それはまったくの"God of the gaps"論である:
If it could be shown that biological systems like the bacterial flagellum that are wonderfully complex, elegant, and integrated could have been formed by a gradual Darwinian process (which by definition is non-telic), then intelligent design would be falsified on the general grounds that one doesn't invoke intelligent causes when purely natural causes will do. In that case Occam's razor finishes off intelligent design quite nicely.

素晴らしく複雑で、エレガントで、統合されているバクテリアの鞭毛のような生物システムが、定義上では非目的である、漸進的なダーウィンの過程で形成され得るなら、インテリジェントデザインは、純粋に自然の原因によって説明されるとき、インテリジェントな原因を呼び出す必要がないという一般的な根拠において、反証されるだろう。
[Dembski 2001]
インテリジェントデザインは「あるものが進化論で説明できていない」という証拠に支持された「あるものは進化論で説明できない」という理論らしい。まあ、"反証可能性"を知らない人々には通用するかもしれないが。


続いて、Lord J-Barが指摘した点は:
Furthermore, people don’t know enough about ID to realize what it stands for. When most people think about intelligent design, they assume it’s something closer to theistic evolution (evolution directed by God). Few people realize that ID is the complete antithesis to evolution and suggests that animals just suddenly appeared on Earth after being made by the “intelligent designer.” I’m certain ID advocates know this, which is why they remain vague with the public when it comes to explaining ID.

さらに、人々はインテリジェントデザインが何を言っているのか理解できるほどには、インテリジェントデザイン十分に知らない。大半の人々がインテリジェントデザインについて考えるとき、(神に方向付けられた)有進化論的進化論のようなものだと仮定する。インテリジェントデザインが完全に進化論に反対で、動物がインテリジェントデザイナーによって創られた後、突如として地球上に出現することを示唆していることを、ほとんどの人々は知らない。インテリジェントデザイン支持者たちはそのことをわかっているからこそ、インテリジェントデザインを説明するとき、あいまいなままにしておく。
これも日本でもありそうだ。インテリジェントデザインはもともと「地球も宇宙も6000歳で、すべての生物は最初の6日で創造された」という"若い地球の創造論"および「地球45億年・宇宙130億年・生命の歴史には神が不断に関与している」という"古い地球の創造論"と互換性を保つことを目的としてデザイン[忘却からの帰還 2005/11/15]されているので、主張はあいまいだ。このため、有神論的進化論と同一視される場合もあるが、インテリジェントデザイン運動にとっては進化論以上に有神論的進化論は敵である[ie. ARN:Isn't Intelligent Design Another Name for Scientific Creationism? , 忘却からの帰還 2005/11/08]。

たとえば、インテリジェントデザインの本山たるDiscovery InstituteのCasey Luskinは:
Intelligent agents can rapidly infuse large amounts of genetic information into the biosphere, reflected in the fossil record as the abrupt appearance of novel fossil forms without similar precursors. These designed "basic types" may undergo limited genetic change, diversifying into similar species belonging to the same basic type clade. Paleoanthropological studies reveal that early hominids appear suddenly, without clear direct fossil ancestors, and distinct from previous hominoids.

インテリジェントエージェントは大量の遺伝情報を生物圏に素早く注入できる。そして新しい化石が外見が類似した先行種なしに突然出現する。これらのデザインされた"基本型"は限定的に遺伝的に変化し、同じ基本分岐群に属する類似した種へと分化するかもしれない。古人類学の研究で明白な直接の化石の残っている祖先なしに、それまでの種とは全く異なる初期の人類が突如出現したことが明らかになった。
[Casey Luskin, 2004][強調はKumicitによる]
と書いて、事実上創造行為を主張している。

ちなみに、統一教会の下部組織の一つ勝共連合の関連会社である世界日報の月刊誌「世界思想」に連載記事を書いている渡辺久義先生は、このあたりを完璧に誤解していて、「創造は神秘ではあるが魔術や奇術ではない。」とか「奇術のような創造だけがあって進化はなかった、などとは言っていない。」と書いている。渡辺久義先生はインテリジェントデザインに関して素人なので、そのような誤解をしたのだろう。ということは、同様に誤解する人々は幾らでもいるということかもしれない。



posted by Kumicit at 2007/01/25 00:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | Skeptic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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