2007/02/06

中味のいらないインテリジェントデザイン

進化論ブログStill awaiting the evidence (まだ証拠を待つ)」において、PvMは次にように:

  • インテリジェントデザイン理論家は、デザイナーの意図や能力には言及できないと言う。
  • しかし、デザイナーの意図や能力がわからないのに、肯定的な予測はできない。
  • インテリジェントデザインはフロントローディング(あらかじめ仕込まれている・最初から用意されている)と介入を識別できない
  • フロントローディングはオッカムの剃刀の原則によって、デザイナーは科学から削除される。
  • 従って、インテリジェントデザインの科学的なものは何も残らない
とインテリジェントデザインには科学的な中身が何もないと主張した

実際、インテリジェントデザインの本山たるDiscovery Instiuteシニアフェローであり、Gilder Publishing LLC代表であるGorge Gilderの2005年の名言[via [Gilder: “Intelligent design itself does not have any content” by Nick Matzke on Panda's Thumb 2005/07/28]に:
The evolution of George Gilder (Boston.com 2005/07/27)

"I'm not pushing to have [ID] taught as an 'alternative' to Darwin, and neither are they," he says in response to one question about Discovery's agenda. "What's being pushed is to have Darwinism critiqued, to teach there's a controversy. Intelligent design itself does not have any content."

Discovery Instituteの方針について問われたとき、彼(George Gilder)は「私はダーウィンの代替としてインテリジェントデザインを教えることを推進していない。そして彼らもだ。推進しているのはダーウィニズムを批判することであり、論争があることを教えることだ。インテリジェントデザイン自体に中味はない」と答えた。
というのがある。

インテリジェントデザインの父たるPhillip Johnsonもインテリジェントデザインに教える内容がないと昨年発言している:
Intelligent design founder argues against evolution (Register-Mail 2006/02/18)

GALESBURG - The father of intelligent design says his child is not ready for school.
The hypothesis of intelligent design, while being developed, is not complete enough to be taught in the classroom, Phillip Johnson, professor emeritus of law at the University of California at Berkeley, said during a lecture at Knox College Friday.
インテリジェントデザインの父は、彼の子供がまだ学校へ行く準備ができていないと言った。インテリジェントデザイン仮説は発展途上であり、授業で教えるに十分には完成していないと、カリフォリニア大学バークレー校の法学名誉教授Phillip Johnsonは、金曜のKnox Collegeでの講義で発言した。
まったく、インテリジェントデザイン主唱者サイドと進化論サイドで、インテリジェントデザインに中味がないことは一致している。

中味がないのは、中味は反進化論さえあればいいというGeorge Gilderの方針なのだろう。もっとも中味を創ろうにも、Geroge GilderやPhillip Johnsonにはできないことだが。

1987年には進化論には科学者よりも法律分析者の方が向いていると豪語していた:
“What I noticed in 1987, was that Darwinism and evolution were more in my field, legal analysis, than in science. The amount of biology you have to know to argue it is very slim. It was mainly a matter of assumptions and logic.”

http://www.ctlibrary.com/ct/2002/decemberweb-only/12-2-22.0.html
http://www.geocities.com/lclane2/johnson.html
それから20年が経過したが、何もない。また、George Gilderも生物の専門教育など受けたことがないと明言している。それでは、生物学の成果など創れるわけもない。

彼らは机上の空論で進化はないと言う前に、まず学んでおくべきことがある。何よりも自分の手で調べることを優先すべきというアリストテレスの考えを。

ロビン ダンバー (Robin Dunbar):「科学がきらわれる理由」[Amazon, 1995]によれば:
紀元前4世紀のギリシアの哲学者、アリストテレスである。その科学上の成果は、おそらく人類の思想史に並ぶものがないほどのものだ。アリストテレスは何よりも経験主義者だった。彼は、他のギリシア人からの文化的抵抗を前にしても、自分の手で調べることを優先すべきだと主張した。その物理学には不備なところも多々あるが、生物学における成果は驚異的である。彼が「最初」と言える科学上の発見の数々は、近代生物学の辞典のようなものだ。..いるかが魚類ではなく哺乳類であること(ヨーロッパの生物学者には、19世紀になるまでわからなかった)。胎生の鮫(つのざめの類)が卵ではなく子供を産むということ(1650年代に確認されたが、それでも1840年代までは、ヨーロッパの生物学者には知られていなかった)、爬虫類は体の一部を再生することができること、卵黄が実は鳥の胚の栄養であること(当時は誰もが胚そのものだと考えていた)、哺乳類の胎児は、臍を通じて栄養を受け取ること(誰もが子宮の壁にある絨毛を吸っていると信じていた)、みつばちが花から花蜜を集めていること、ハイエナは両性具有ではないこと(今世紀になっても信じている人は多い)を認識していた。耳にあるエウスタキオ管の性質や形を正しく記述した(他ならぬイタリアの解剖学者エウスタキオが1550年に行うまで、再び正しく記述されることはなかった)。みつばちの社会の要諦を正しく得ていた(1740年になるまで公式に行われていない)。17世紀にハーヴィがその解剖学の研究を発表するまでは、ヨーロッパではそれ以上のものが出なかったほどの、鳥の胚発生に関する記述を遺した。蛸の腕の一本が生殖器として用いられる化茎現象にも気づいた(今でも生物学上の謎である)。胎児の性が、発生のかなり早い段階で決まっていることも認識していた。(pp.62-63)
観測事実から帰納するという方法によって成果を挙げたアリストテレスは、一方で当時は観測事実を入手できないが故に、多くの間違いも後世に残している。
鰻が実はちゃんと生殖することを知ることができなかったのは、ヨーロッパの鰻が生殖するのは大西洋中部のサルガッソー海の海藻の森だからである(この海は、1492年にコロンブスがアメリカに行く途中で偶然通りがかるまで知られていなかった)。だから、アリストテレスの成果は経験科学の証である一方、その失敗の方も、正しい理論が結局はどれほどよい観察に依存しているかということをわからせてくれるという意味で、やはり有益なのだ。(p.64)
ひたすら第1原理からの演繹を繰り返してたギリシアの哲人たちのなかで、演繹と帰納の両方を方法論をとして採用していたこと。だからこそ、後世に反証される間違いも残した。


そういえば、インテリジェントデザインの実働理論家Dr. William DembskiやDr. Michael Beheはいつまでたっても、チンパンジーとホモサピエンスの情報量の数値化をできていない。数値化できないのに、どうやって情報量保存[Dembski 1997]とかが主張できるのやら。机上の空論を続けても成果が出ないことは古来より明らかなのだが。

いつまでたっても中味がない。というか、中味はいらないのか。
posted by Kumicit at 2007/02/06 01:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | DiscoveryInstitute | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック