2007/03/05

テンプルトン財団はインテリジェントデザインを支持しない

John Templeton Foundation(テンプルトン財団)のPamela Thompson(Vice President)が、LA Timesに2007年2月4日付で、John Templeton Foundationはインテリジェントデザインを支持しないという記事を載せた:
LETTERS: Stance is misconstrued on 'intelligent design'(インテリジェントデザイン対するスタンスを誤解された)
February 4, 2007

"Testing the role of trust and values in financial decisions" (Jan. 21) incorrectly describes the John Templeton Foundation as having been an early supporter of the political movement known as "intelligent design."

LA Timesの2007年1月21日付の記事「資金手今日決定における信頼と価値の役割の検証」において、テンプルトン財団がインテリジェントデザインとして知られる政治運動の初期の支持者であると誤って記述されていた。

We do not believe that the science underpinning the intelligent-design movement is sound, we do not support research or programs that deny large areas of well-documented scientific knowledge, and the foundation is a nonpolitical entity and does not engage in or support political movements.

我々はインテリジェントデザイン運動を支える科学が正しいとは考えていない。我々は正しく記述された科学的知識を広範囲にわたって否定するような研究を支援しない。財団は非政治団体であって、政治運動に関係しないし、支援もしない。

The foundation has provided tens of millions of dollars in support of research academics who are critical of the anti-evolution intelligent-design position.

財団は、反進化論なインテリジェントデザインに批判的な研究者の支援に何千万ドルも提供してきた。

For almost a decade, the foundation has been a major supporter of a substantial program of the American Assn. for the Advancement of Science. One of the program's chief activities has been to inform the public of the weakness of the intelligent-design position on modern evolutionary biology.

ほぼ10年にわたり、財団はAAASのプログラムの主たる支援者である。これらのプログラムのひとつは、現代進化生物学に対して、インテリジェントデザインのポジションの弱さを一般の人々に知らせるためのものである。

In the past we have given grants to scientists who have gone on to identify themselves as members of the intelligent-design community. We understand that this could be misconstrued by some to suggest that we implicitly support the movement, but this was not our intention at the time, nor is it today.

過去には、我々はインテリジェントデザインコミュニティのメンバーと自ら認めた科学者にも補助金を出したことがある。このことが、我々が暗にインテリジェントデザイン運動を支援していると示唆するような誤解を招いたかもしれないことはわかっている。しかし、インテリジェントデザイン支持は、当時も今日も我々の意図ではない。

Pamela Thompson
Vice president, communications
John Templeton Foundation
West Conshohocken, Pa.
これについて、米国の進化論教育を守るNational Center for Science EducationのWesley R. Elsberryは、反進化論ウォッチサイトAntiEvolution.Orgにあるのブログの2007年2月10日付けのエントリ「The Templeton Foundation Distances Itself from "Intelligent Design"」において:
The statement is probably overdone a bit. The Templeton Foundation did fund a number of projects and people in the "intelligent design" creationism movement. While early recognition of the depth of worthlessness and the essential political nature of "intelligent design" creationism was probably too much to ask, certainly by mid-2000 these elements should have been clear to granting entities like the Templeton Foundation. Templeton's retreat from IDC, though, only became apparent in 2005.

この声明はちょっと言い過ぎだろう。テンプルトン財団はインテリジェントデザイン創造論運動のプロジェクトや関係者に補助金を出していた。当初は、インテリジェントデザイン創造論の役に立たなさと政治的性質について知るのは無理だったかもしれない。しかし、2000年中ごろまでにはテンプルトン財団のような補助金支援団体には明らかになっていたはずだ。テンプルトン財団がインテリジェントデザイン創造論から手を引いたのが明らかになったのは2005年のことだ。
と冷ややかに評している。
このWesley R. Elsberryの評に絡んで、Panda's ThumbのPvMは2007年2月27日付のエントリ「The Templeton Foundation Distances Itself from “Intelligent Design”」において:
Good to know that even foundations like the Templeton Foundation are taking a clear distance from the scientific vacuity known as Intelligent Design. Not surprising, ID has remained void of scientific research and proposals. At best, we have some pseudo-mathematical musings and an overarching appeal to ignorance.

テンプルトン財団ような財団さえもが、インテリジェントデザインとして知られる科学的愚鈍から手を引いたとは、いいねえ。インテリジェントデザインは科学的研究とその提案が空疎なままだ。せいぜいがとこ、疑似数学的さえずりと、無知への訴えにすぎない。
とってもめでたいことと評している。

タグ:id理論
posted by Kumicit at 2007/03/05 00:01 | Comment(5) | TrackBack(0) | News | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
テンプルトン財団の理事長がもう何年か前にネイチャーに進化論に肯定的な論文を寄せたことがあったそうですが、どんな内容のものだったのかご存じないでしょうか。
財団内で意見の不一致があったり方針に関するあれこれがあったりするんでしょうかね。
Posted by とおりすがり at 2009/03/07 21:25
テンプルトン財団は、進化生物学を含む通常の自然科学・人間科学および哲学・神学などの分野に研究助成金を出しています。
http://www.templeton.org/funding_areas/

テンプルトン財団が、進化論に敵対したり、創造論を支持した形跡はありません。

過去に、インテリジェントデザイン運動関係者に補助金を出したことがあるものの、インテリジェントデザインに対する補助金ではなく、インテリジェントデザイン運動を支持しないと明言しています。
http://transact.seesaa.net/article/115225039.html

本エントリでも触れたように、2005年11月にもインテリジェントデザイン運動を支持しないという声明を出しています。
On November 14, the WSJ ran a front page story mentioning the John Templeton Foundation in a way suggesting that the Foundation has been a concerted patron and sponsor of the so-called Intelligent Design (“ID”) position (such as is associated with the Seattle-based Discovery Institute and the writers Philip Johnson, William Dembski, Michael Behe and others). This is false information. In fact, quite the opposite is true. The John Templeton Foundation has provided tens of millions of dollars in support to research academics who are critical of the anti-evolution ID position.
http://www.templeton.org/newsroom/Intelligent_Design/Official_Statement.html


なお、テンプルと財団の初代理事長は、2008年7月8日に亡くなったSir John Marks Templeton
http://www.templeton.org/about_us/who_we_are/sir_john_templeton/
現在は息子のJohn M. Templeton, Jr., M.D.が継いでいます。
http://www.templeton.org/about_us/who_we_are/officers/

natureの論文・寄稿などにJohn TempletonやJM Templetonは見当たりません。
Posted by Kumicit 管理者コメント at 2009/03/07 22:42
「シマウマの縞、蝶の模様」という本を読んでて、p362に「ジョン・テンプルトン財団の理事長チャールズ・ハーパーが、最近になって科学雑誌ネイチャーに寄稿した」とあったのですが(原著2005年)。なんかの間違いだったんですかねえ。
Posted by とおりすがり at 2009/03/08 01:05
Charles L. Harper, Jr., D.Phil.は現在は財団のSenior Executive Vice President, Chief Strategistをつとめています。専門は惑星科学・太陽系生成で、NASA Johnson Space CenterやHarvard Universityで研究者をしていた後に、財団に参加。
http://templeton.org/about_us/who_we_are/leadership_team/charles_harper/

Nature掲載は2本で、1992年物は本業である地球のマントル関連の研究, 2001年物はBook reviewですね。

Charles L. Harper, Stein B. Jacobsen: "Evidence from coupled 147Sm?143Nd and 146Sm?142Nd systematics for very early (4.5-Gyr) differentiation of the Earth's mantle", Nature 360, 728 - 732 (31 Dec 1992), doi: 10.1038/360728a0, Letter

Charles L. Harper: "Why science and religion need to talk", Nature 411, 239 - 240 (17 May 2001), doi: 10.1038/35077129, Book Review

このBook reviewが進化論サイドにあたるかもしれません。
Posted by Kumicit 管理者コメント at 2009/03/08 08:07
調べなおし中...

財団側の声明では、Dembskiへの補助金を上げていましたが、これ以外にインテリジェントデザイン運動との関連では、1999年にDiscovery Instituteへの補助金、2004年に宇宙版インテリジェントデザイン本"The Privileged Planet"出版の補助金を出していました。
http://www.iht.com/articles/2005/10/17/news/Redid.php

Discovery Instituteとテンプルトン財団の戦闘は2007年から表面化し、2009年3月のVaticanのイベントに関して、Discovery Instituteはテンプルトン財団を非難しています。
http://transact.seesaa.net/article/115225039.html

インテリジェントデザインと戦闘状態にあるとはいえ、テンプルトン財団は科学と宗教の調停というテーマを持っています。

このため、宗教に対して友好的な発言をする科学者に補助金を出しているという問題があると、Richard Dawkinsは批判しています。[Richard Dawkins: "The God Delusion"]


Posted by Kumicit 管理者コメント at 2009/03/08 08:43
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