2013/04/28

ATOMICA 15章のサルベージ

archive.orgに残っていた「ATOMICA 15章」は、2003/07/27付けのもののみ("mext-atm.jst.go.jp"ドメインにあったとき)。うち15-02-02-11は以下の内容:
ATOMICA (20030727)
<大項目> Q&A
<中項目> 原子力発電のしくみと安全性
<小項目> 原子力発電の安全性
<タイトル> 原子力発電所は津波に対してどんな対策が取られていますか。 ( 15-02-02-11 )

<概要>
 原子力発電所は、立地の段階において、その立地条件が適切であるか否かを原子炉安全専門審査会によって審査される。この段階で、津波等の自然災害の可能性について検討される。さらに、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」に基づいて耐震設計される。設置場所は過去の地震歴等を十分調査し、活断層は避け、敷地として適切な場所を選定している。また、「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」にしたがって、設計の妥当性を審査されている。これらによって、原子力発電所は地震についで襲来する津波に対して、安全を確保している。


<更新年月>
2001年12月


<本文>
 津波と原子力発電所の安全との関わりには、二つの場合がある。一つは遠隔の地に起こった地震によって、襲ってくる津波であって、津波がくるまでに十分な時間があり、対処するに十分な余裕がある。また、この場合の津波そのものは、高潮に比べて、潮位は低く周期の長いもので、原子力発電所に脅威を与えるような条件は備えていない。台風よりもはるかに御しやすいものである。

 もう一つの場合は、原子力発電所の近辺で起こった地震による津波の場合である。この場合、津波の規模は、震源の位置、地震の規模、海岸の形状に関係して変化する。原子力発電所が湾の奥深い陸上にあって、地震が湾の中で起こる場合は、津波の規模は大きくなると考えられる。高潮の場合も同様である。原子力発電所は、このような事態に遭遇しないような場所に立地することが、肝要である。

 原子力発電所は、立地の段階において、その立地条件が適切であるか否かを原子炉安全専門審査会によって審査される。その際の立地条件の適否を判断する拠り所として、原子炉立地指針がある。

1.原子炉立地審査指針
 原子炉は、どこに設置されるにしても、事故を起さないように設計、建設、運転及び保守を行わなければならないことは当然のことであるが、なお万一の事故に備え、公衆の安全を確保するためには、原則的に次のような立地条件が必要である。

(1) 大きな事故の要因となるような事象、例えば、立地場所で極めて大きな地震、津波、洪水や台風などの自然現象が過去になかったことはもちろん、将来にもあるとは考えられないこと。活断層の真上を避けることは当然のことであるが、設置場所の過去の地震歴、周辺の活断層の分布状況等を十分に調べ、地盤についても十分調整した上で、敷地として適切か否かを評価している。また、災害を拡大するような事象も少ないこと。これは例えば、隣接して人口の大きな都市や大きな産業施設があるかとか、陸、海、空の交通の状況などの社会環境や、地盤が軟弱といった自然条件を考慮することである。

(2) 原子炉は、「その安全防護施設との関連において」十分に公衆から離れていること。例えば、原子炉からの気体廃棄物を処理するため、活性炭式希ガスホールドアップ装置や放射性塵埃を除去するための各種のフィルターが設けられているが、その能力と容量は原子炉から公衆の敷地境界までの距離を考慮して、平常時は勿論、事故時にも基準値または規制値以上の放射線被ばくを公衆に与えないように設計し、管理されていることを要求するものである。

(3) 原子炉の敷地は、その周辺も含め、必要に応じて公衆に適切な措置が講じられる環境にあること。これは敷地が十分な広さをもち、周辺もそれほど過密でなく、万一の場合には退避等が可能なことを意味している。

 原子力発電所は、この指針によって自然災害としての大きな地震が起こらない場所に立地されている( 図1 )。このために、大きな津波に見舞われることはないといえる。
 しかし、地震国であるわが国の実態を踏まえ、原子力発電所は、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」に基づいて耐震設計が施されている。

 耐震設計( 図2 )にあたっては、原子炉施設別に重要度を定め、それぞれの重要度に応じて静的地震力、又は基準地震動S1およびS2による動的地震力を考慮して設計されている。

 基準地震動S1は歴史的資料から過去に発生したと思われる地震および活断層のうち過去1万年間に活動したもので活動度A級(平均変位速度S≧100cm/1000年)のものから想定される最大の地震を基にした地震動である。

 また基準地震動S2は、サイト周辺の活断層のうち過去5万年間に活動したもので活動度B、C級(平均変位速度S<100cm/1000年) のもの、及び地震地体構造や直下地震(M6.5、震源距離10�) を基にした地震動と定義されている。

 静的地震力については、原子炉圧力容器、原子炉停止系等安全上特に重要な機器等については、建築基準法に定められた基準の3倍以上の静的地震力に耐えることとされている。

 また、原子炉の設置に当たっては、「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」にしたがって、設計の妥当性を審査されている。59項目に及ぶ指針の中で、地震等の自然現象に対する考慮、原子炉の停止系の停止能力、安全保護系の機能等が要求されている。

 また、一定の大きさの地震等を感知して直ちに原子炉を停止する安全装置の設置が求められている。

 大規模な地震が発生した場合、原子炉は、地震動を検知して、停止する。仮に津波に襲われるとしても、原子炉の停止後のことであり、原子炉に対しては、安全を確保する措置が取られた後のことである。特に安全上問題となることは起こり得ないと考えられている。



<図/表>
図1 わが国における原子力発電所の地震対策
図2 わが国における原子力発電所の耐震設計の概念
図はArchive.orgでは見つけられなかった。

また、atomin.go.jpドメインにあったときのアーカイブはメンテ中のもののみ。



posted by Kumicit at 2013/04/28 20:38 | Comment(2) | TrackBack(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Posted by Kumicit 管理者コメント at 2013/04/28 20:55
2009/08/03時点ではなく、2011/04/09のアーカイブだった。
Posted by Kumicit 管理者コメント at 2013/04/29 05:39
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