旧世紀は、人種・学歴・収入・宗教・性別による世論の乖離の大きさと、政党支持による世論の乖離の大きさはは、それほど違っていなかった。しかし、今世紀に入ると、政党支持による乖離だけが急激に大きくなっている。
[Partisan Polarization Surges in Bush, Obama Years -- Trends in American Values: 1987-2012 (2012/06/04) on PEW]
共和党支持者の意見が大きく変わったのは、まずセイフティネットについて。もともと、共和党支持者の方がセイフティネットに否定的だったが、今世紀に入って、より否定的になっている。これに対して、民主党支持者に変化は見られない。
もともと意見の異なる分野であるが、それが急に拡大している。
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さらにすざまじいのは環境保護政策についての支持。民主党支持者の意見はほとんど違っていないが、共和党支持者は環境保護に対して、劇的に否定的になっている。
このあたりは、環境問題の対象が、健康への悪影響のあるNOxやSOxやオゾン層破壊に関連するフロンなどから、地球温暖化に移ったことが原因として考えられる。この地球温暖化は、神の契約に反する出来事であり、温暖化対策は保守的キリスト教徒には受け入れがたい政策であると思われる。(これに対応して、神や聖書を掲げて温暖化否定を語る共和党議員たちもいる。)
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一方、共和党支持者に変化が見られず、民主党支持者に変化がみられるのが、神の存在についての確信及び、古い家族・結婚観。民主党支持者にのみ低下がみられる。
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マイノリティの立場の強化についても、民主党支持者がより肯定的になっているのに対して、共和党支持者に変化が見られない。
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以上、民主党支持者はより世俗的・リベラルに、共和党支持者は保守的になっている。ただ、それが人種・学歴・収入・宗教・性別による差異を大きく上回っていることは、やはり異様である。
これに関して、以前触れたように、民主党支持者と共和党支持者に生理的な反応の違いが見られることがわかっている。たとえば、共和党支持者には「世界を黒か白かで見て、不確実性に不寛容で、しかし経験への開放性の欠如(という性格特性)を持ち、閉鎖性を必要とする」傾向がみられる。これは、即断即決・初志貫徹という戦闘モードとでも言うべきもの。ただ、それが旧世紀から既にそうだったのか、今世紀になってより傾向が強くなったのかは不明である。
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