「原因物資がないのに、症状が起きる」という形の反証を、「無関係な物質や電磁波でも、微量でも起きる」という主張で封じている。完全に「有害な物質」を除去した環境を構築することは事実上不可能で、もし実現できたとしても、「無害だと思われていて除去されていない物質が、有害だった」と主張することで、反証を撃退できるからだ。
「原因物資があるのに、想定された症状が起きない」という形の反証を、「別の症状が起きた」という主張で封じている。今では、既知の病気の症状すべてが、MCSの症状とされている。結果として、MCSは、何かで何かが起きるという、幅の広いものとなっている。このため、米国CDCなどは、MCSをdistinctな病気とはみなしていない。
さらに「原因物資があるのに、何の症状も起きない」という形の反証を次のような形で封じようという人もいる(ただし、この人は医師や研究者ではない)。
The main distinguishing characteristic of MCS is that symptoms appear upon exposure to chemicals and they get better when the chemical is removed. However,遅延した症状か、新たな刺激への反応かを識別する方法がないので、証明できない主張である。
MCSの際立った特徴は、化学物質への曝露により症状が起きて、化学物質がなくなると症状が緩和するというものである。しかし
- Sometimes you have to be paying attention to notice this.
ときどき、このことに注意を払う必要がある、- Sometimes physical reactions are delayed (and NOT immediate), AND
ときどき身体症状が遅延する(すぐには症状が出ない)- The “baseline” of chemicals in the current environment can “skew the results” of your observations, especially if the “baseline” of chemicals is moderate to high.
環境中の化学物質のベースラインによって、観察の結果がずれることがある。特に化学物質の量がかなりある場合。
[MCS–Possible Symptoms on Blackhills Picturebooks]
研究者だと、原因物資と症状の関係が明瞭に見えないことについて、はるかにエレガントなモデルを作る。以下はモデルの提唱であって、検証ではないが、華麗である。
これを検証するには、著者であるCS Millerの言うように、患者を「クリーンな環境」に一定期間置いて、症状がすべて消えるのを待って、原因物資によるチャレンジを行えばいい。
Figure 4. Components of masking. (a) Apposition. This is the overlapping of stimulatory and withdrawal symptoms. If an individual is sensitive to many different substances, then the effects of everyday exposures to chemicals, foods, or drugs may overlap producing a confusing array of symptoms. The individual would feel sick most of the time, but the effect of any single exposure would not be apparent to either the individual or his physicians (ÓUTHSCSA, 1996). (b) Addiction. A person addicted to caffeine, alcohol, nicotine or another substance may take that substance at frequent, carefully spaced intervals in order to avoid unpleasant withdrawal symptoms. These addictants may mask the effects of other exposures, such as chemical inhalants (ÓUTHSCSA, 1996). (c) Habituation. Symptom severity declines over time with repeated exposures. (inhalant or ingestion) to the same substance (ÓUTHSCSA, 1996).
マスキングのコンポーネント。
(a)並存。これは刺激と禁断症状の重ね合わせである。多くの異なる物質に対して過敏であれば、日常の化学物質や食品や薬剤などへの曝露の効果が重ね合わされて、一人の患者に、症状の複雑な配列が作り出されるかもしれない。患者は大半の時間は病気だと感じているが、患者も医師も単一の要因への曝露に影響は明確には見えない。(OUTHSCSA、1996)
(b)中毒。カフェイン、アルコール、ニコチンまたは他の物質の依存症の人は、不快な禁断症状を避けるために、慎重に時間間隔をとって、繰り返して、その物質を摂取しているかもしれない。これらの摂取によって、化学吸入剤などの他の物質への曝露の影響をマスクするかもしれない。 (OUTHSCSA、1996)
(c)馴化。同じ物質についての症状の重症度は、曝露吸入または経口摂取)の繰り返し、及び時間の経過とともに低下する。 (OUTHSCSA、1996)
[CLAUDIA S. MILLER:"MECHANISMS OF ACTION OF ADDICTIVE STIMULI -- Toxicant-induced loss of tolerance, Addiction (2000) 96(1), 115–139]
ただし、「クリーンな環境」を実現することは事実上不可能であるため、否定的な結果が出た場合、「クリーンな環境」を実現できていなかったと主張すればいい。それで反証を封じれる(肯定的な結果が出た時に、「クリーンな環境」を実現できていなかったと対抗されるが)。