2013/08/15

突撃敢行する人々

Scopes Trial (1925)以来、半世紀以上にわたる進化論教育にもかかわらず、創造論支持者が減らないのは何故か?すなわち、"Deficit model"がうまくいかないのは何故か?その疑問が、心理学者たちの関心を惹いて、目的論選好や、科学への抵抗感や、コントロールの回復と否定論や、動機付けられた推論・事実認識などの我々が科学を信じない理由についての科学の探求が進められてきた。

さらに、旧世紀末あたりから進行した共和党支持者のアンチサイエンス傾向。もはや世論の乖離要因として、性別・年齢・所得・学歴よりも政党支持の方が大きいという状況についても、心理学が踏み込み始めた。恐怖感が保守支持を高めることがわかってきた。すなわち、保守的な人々が恐怖を感じやすいのではなく、恐怖を感じやすい人々ほど保守的である。さらに、大きな扁桃体が信条システムに保守的な見方を加える傾向さえ見出されるようになってきた。それをおそらく知った上で、共和党は恐怖を煽っているようでもある。

ただ、これら共和党支持者・保守な人々の傾向は、自然界にあっては決して不利な形質ではない。より危険に関心を持ち、危険にすばやく反応し、危険に断固として対処することは、おそらく安全ではない状況では、とても有利な形質に見える。そして、もちろん、そのような危機的状況では、熟慮するよりも、即断即決が必要だろう。すなわち、思考の節約が必要だろう。そして、逆に思考の節約が人を保守的にすることも見えてきている。

一方、目的論選好とも関連するが、ダンバーの社会脳仮説を受け入れるなら、人間は、社会構造及び他人を理解するために構築された心を、自然界の理解にも流用している。結果として、自然界の背後の陰謀者を見るのか、自然界の要素そのものを陰謀のエージェントと見るかはさておき、自然現象に対しても、陰謀論的な見方をすることもありうる。そして、陰謀論信条の特徴として、互いに矛盾する陰謀論を信じることも容易である。結果として、自然科学を基礎とするなら、到底考えられないような論をも容易に信じ込んでいくことになるだろう。

これは、悪しき事態・問題について「偶然と自然現象」ではなく「必然と悪しき意図」を見ることにつながる。そうなれば、問題解決の方法は、「悪しき意図を持つエージェントの打倒」になる。そうやって、敵を見定めれば、やることは、そのエージェントへの突撃敢行だろう。その際に、他の懸念を過小評価する形で自然と無視できる方が、突撃には有利だろう。

で、ここからはかなりスペキュラティブだが、ひとたび敵を見定めて、攻撃を開始したなら、万難を排して、ゆらぐことなく突き進む方が、迷いながら進むよりも勝てる可能性は高いだろう。そして、排すべき万難には、「敵認定が間違っている」とか「別の敵に優先して対処する必要がある」とか言い出す味方も含まれるだろう。実際、現実によく起きる「裏切り者狩り」なんかが、まさにこれ。

そして、そんな勢いだと、敵を打倒するまでは、聞く耳持ちそうにない。もっとも、敵を打倒した後で聞く耳持つかどうかはわからないが。

そんな、万難を排して戦った一人に、全力で子供を守ろうとしたHIV否定論者Sophie Brassardがいる。彼女の場合は、まさに最期まで戦い続けた。
posted by Kumicit at 2013/08/15 20:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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