2013/09/10

代替医療の紡ぎ出す物語から脱落すること

代替医療が紡ぎ出す"物語"を患者が選択したのであれば、その患者の選択を尊重すべきだと思う人もいるかもしれない。死の瞬間まで、物語の中にいられたならば。。しかし、苦痛のために途中で、物語から脱落してしまった例を見れば、そうも言っていられないだろう。

3年前に取り上げた、ホメオパスを信じて死亡したPenelope Dingleはそのような途中で物語から脱落した例である。その凄惨さは、Penelope Dingleの友人Gayle Chappellの検死法廷証言から見て取れる。
「私は彼女が回復しているという印象を完璧に持っていました。私は彼女を見た途端、涙があふれてきました。こんなに痩せた人を見たことがなかったからです。

「Fremantleに夫妻と滞在していた一週間、彼女は毎晩、痛みに泣き叫んでいましたが、決して鎮痛剤を使おうとはしませんでした。

「彼女はホメオパスであるFrancine Scrayenに日に十数回は電話をし、Sscrayenが調剤したホメオパシーレメディーだけを服用していました。

「Scrayenに電話で私の懸念を伝えましたが、『彼女の痛みは頭の中にあるもので、彼女はただの便秘です』といって、とりあってくれませんでした。Scrayenは彼女に他の薬剤を服用することを禁じていました。

「彼女はこれらのことを知りたがっていたとは思いません。それは、彼女自身が閉じこもった幻想を突き崩すものだったからです。

「Dingle夫妻はその幻想に魅了され、陥穽に落ちていました。私はそれをどういっていいか、わかりません。

「彼女はFrancineを心底信じていました。彼女はFrancineに完全に支配されていました。

「彼女は腸閉塞が12日間続いたとき、訪問看護師Bernie Pilgrimから入院しないと死ぬかもしれないと言われました。

「2003年10月11日の夜に、訪問看護師Pilgrimは痛みのレベルを9/10と診断しましたが、彼女(Penelope Dingle)は痛み止めの使用を拒みました。

「2003年10月12日の朝までに、彼女はあまりの痛みにモルヒネの使用に応じ、緊急手術のために病院に運ばれました。数日後に病院に見舞いに行くと、彼女は『私が自殺したと思った?』といいました。

[GIORDANO STOLLEY: "Couple 'in homeopath's control '" (2010/06/11) on The West Australian]
しかし、既に手遅れで、癌は体のあちことに転移していた。その後、Penelope Dingleは2005年8月に死亡した。この件について、検死法廷は次のような判断を下している。
検死官は、通常医療の癌治療を拒否した、パース在住の女性の死は、「誤った情報と貧弱な科学知識」によるものだったと判断した。

直腸癌の手術を最初拒否して、代替医療のレメディによる治療を選択したPeneplope Dingleは2005年8月に死亡した。彼女は45歳で、2003年10月に、生命を脅かしてい腫瘍の切除のための緊急手術を受けたが、既に癌は体のあちことに転移していた。

西オーストラリア検死官Alastair Hopeは、金曜日に判断を言い渡すにあたり、「ホメオパスFrancine Scrayenは正統な医療専門家ではなく、Penelope Dingleを治療中に危険な助言をした。また、著名な毒物学者で、Penelopeの夫であるPeter Dingleは、自身が自らの誤った情報の犠牲者であり、医療資格を持っていない」と述べた。

ABCの"Can We Help"という番組のゲストプレゼンターだったDr. Peter Dingleは、化学療法は癌治療には有効でないと論じる論文を書いたことがあった。

Hope検死官は、Penelope Dingleの相談を受けた医師William BarnesとIgor Tabrizianを西オーストラリア医療委員会へ送致することを推奨した。Hope検死官は「Barnes医師はPenelope DingleにビタミンCとCarnivoraで、腫瘍の成長を止められる可能性があると助言し、Tabrizian医師は彼女を適切に診断しなかったことは、西オーストラリア医療委員会へ送致するに十分な理由である」と述べた。
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しかし、検死官は「治療上の決定が最終的にはPenelope Dingle自身によってなされた。彼女は自分で調査し、手遅れになるまで化学療法・放射線療法・手術を受けないと判断した。そう判断したのは、彼女が、それらの療法を受けると不妊になるかもしれないと告げられたためだ。」と述べた。

「彼女の主治医であるCameron Platell教授は優れた医師である。彼は信頼できる明確な情報を提示した。しかし、Penelope Dingleは他の人々からの誤った情報と貧弱な科学知識に影響されていた」と述べた。

[ANGIE RAPHAEL: "Inquest into Dingle death" (2010/07/30) on Sydney Morning Herald -- AAP]
ところで、ビタミンCとCarnivoraで、腫瘍の成長を止められる可能性があると助言したWilliam Barnes医師は、患者の思いを肯定したわけだが、それは正しくないというのが検死法廷の判断だった。
posted by Kumicit at 2013/09/10 23:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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