2007/04/05

たまには創造論と温暖化

地球温暖化対策に反対する創造論支持者?たち

米国では公立学校の理科教育に関して、進化論と地球温暖化をまとめてやっつけようとい州法案が提案されることがある。たとえば、既にボツになったHOUSE BILL No. 5251(ミシガン州法案):
(10) Not later than August 1, 2006, the state board shall revise the recommended model core academic curriculum content standards in science to ensure that pupils will be able to do all of the following:

(a) Use the scientific method to critically evaluate scientific theories including, but not limited to, the theories of global warming and evolution.

(b) Use relevant scientific data to assess the validity of those theories and to formulate arguments for or against those theories.

2006年8月1日までに、州教育委員会は、理科の推奨モデル・コア・アカデミック・カリキュラムを改訂して、生徒が以下をすべてできるようにしなければならない。

(a) 地球温暖化と進化論を含むが、これらに限定されない科学理論を、科学的方法を使って批判的に評価する

(b) 関連する科学的データを使って、これらの理論の有効性を評価し、これらの理論を支持あるいは反対する議論を構成する
一見、何の関係があるのかわからない反進化論とアンチ温暖化。

でも、そんなことを書く人々がそれなりにいるようだ。たとえば、University of Vermontの学生新聞Vermont Cynicの2007年4月3日付の記事「Global Warming Disproved, Creationism Validated(地球温暖化は論破され、創造論は実証された)」によれば:
According to Chief NASA Scientist Edward Steubbon, global climate change is not an imminent threat, but in fact a non-existent one.

"Global warming will go down as one of the biggest hoaxes brought on by money grabbing global activists," he said at a press conference in Ft. Lauderdale Saturday.

"It's really a sad situation for all those poor companies that bought carbon credits."...
アンチ温暖化な記事、中味はどうでもいいのだが、表題がそそられる。「地球温暖化は論破され、創造論は実証された」である。しかも、"Creation"といった単語が見当たらない。


創造論主唱者たちは色々である

実際、創造論な人々の地球温暖化に対する意見がひとつにまとまっているわけではない。インテリジェントデザインの本山たるDiscovery Instituteは鮮明にアンチ温暖化で、"若い地球の創造論"サイトAnswers in Genesis中立っぽい。温暖化対策推進側に立つCreation Careという運動もあったりする。

==>忘却からの帰還: 創造論と温暖化
==>忘却からの帰還: Creation Care
==>忘却からの帰還: 地球温暖化問題に取り組めない福音主義



Photo courtesy Michael Oard
Athabasca Glacier, Canadian Rockies, was near the sign in 1890. It has since melted back to its current location due to global warming.
[Answers in Genesis]



純朴な信仰のようにも見えるが...

創造論を信じていて、地球温暖化対策に反対する理由は、創世記に記された神の約束:
主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも/寒さも暑さも、夏も冬も/昼も夜も、やむことはない。」

[創世記8章21-22節(日本聖書協会)]
を信じているからのように思える。実際、浸蝕が進んで海に沈みそうなツバルでも:
"Oh, it's a very important concern," is the standard and slightly mechanical response to questions on climate change, Farbotko says. In her experience, and in mine, some Tuvaluans refuse even to talk about climate, or dismiss it with a weary wave of the hand. Tuvalu is a deeply Christian country, and some islanders put their faith in the promise God made to Noah in Genesis 9:11: "And I will establish my covenant with you; neither shall all flesh be cut off any more by the waters of a flood; neither shall there any more be a flood to destroy the Earth."

「それは非常に重要な懸念です」というのが、気候変動について問われた時の、標準的でちょっと機械的な反応だとFarbotkoは言う。彼女の経験および私の経験で、一部のツバル人は気候について話しことも拒絶するか、手を振ってこれを避ける。ツバルは敬虔なキリスト教国であり、一部の住民は創世記第9章11節「わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものがことごとく滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない」というノアに対しての神の約束を信じている。
[S.S. Patel: "Climate science: A sinking feeling", Nature, 440, 734-736, 2006.]



そもそも、創造論的には地球温暖化研究そのものに反対する?

気候変動の研究は、境界条件としての太陽活動や太陽系外からの影響についての観測・シミュレーション、地球の気候モデルのシミュレーション、南極などのアイスコアなどからの過去の気候変動の推定など、大きな広がりの上に成り立っている。

これらの中で、「地球と宇宙は6000歳」な"若い地球の創造論"とバッティングするのがアイスコアによる過去の気候変動の推定。

教科書的な例では、南極のVostokのアイスコアからの気温と二酸化炭素の推移:vostok_TC.jpg
==>Vostok Data: Temperature
==>Vostok Data: CO2
[Unit 8a. Analysis of Vostok Ice Core Data, Global Change 1,Univsersity of Michigan]

もちろん、このような10万年スケールの過去の変動は、"若い地球の創造論"にとっては存在しないものだ。"若い地球の創造論"の時系列では、6000年前に地球と宇宙は創造され、ノアの洪水により一時的な氷河期があったというもの。その立場からすれば、Vostokのアイスコアからの推定などフィクションに過ぎない。

気候モデルの妥当性を、過去の寒冷化と温暖化を再現することで検証するのは普通のこと。しかし、"若い地球の創造論"にとっては、"過去の寒冷化と温暖化"そのものがフィクションであるため、フィクションを再現する気候モデルなど、まったく信用できない。


インテリジェントデザインの本山たるDiscovery Instituteの別部門Technology and Democracy Project (TDP)が、2001年3月15日付の記事「Stop everything . . . it’s Techno-Horror!」は、まさにそんなノリ:
George Gilder & Richard Vigilante

Especially apt for the politics of fear are threats deemed sudden in their onset, irreversible in their impact, and unverifiable in advance. Typical are exponential processes which, as eco-catastrophists often point out, are nearly undetectable until they virtually take over. Think of lily pads, doubling every week. Just a month before they take over the pond, they still cover only a cosmetic one-sixteenth of its surface. From this point of view, global warming is a perfect kind of threat, particularly in the form proposed by Joy, where it might be masked for years by the onset of a new ice age also precipitated by a global carbon-dioxide buildup. “It’s non-linear; it could tip either way.” Computer climate models trump all physical evidence that temperatures were two degrees higher a thousand years ago during the so-called Medieval Climate Optimum, and are now merely recovering from the throes of the little ice age of mid-millennium.

始まりは突然で、影響は元へ戻らず、前進しないと検証できない脅しは、恐怖の政策には適切だ。環境破滅主義者たちはしばしば指摘する、典型的な指数過程は、実質的に優勢になるまで検出できない。毎週2倍になっていく睡蓮の葉を考えればわかるだろう。睡蓮の葉が池を覆い尽くす一ヶ月前はまだ1/16を覆っているだけだ。この観点から、地球温暖化は完全な形の脅しである。特にJoyによって提示される、新しい氷河期の始まりによって長年にわたってマスクされた、世界的な二酸化炭素蓄積によって引き起こされるかもしれないという形式は。「それは非線形だ。それはどちらにも傾く」 1000年前の中世気候最適期は今より2℃高く、今は千年期なかばからの小氷期から回復しているだけだというすべての物理的証拠に、計算機気候モデルは勝る。
さすがに、6000年よりも過去のデータはありえないなどとは言っていないけど。



posted by Kumicit at 2007/04/05 03:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | Creationism | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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