[2014/01/11追記: 「進化の目的」を撤回。別途記述予定]
「進化の目的」
創造科学では進化には目的があるというが (謎解き超科学 p.136)これはおそらく「ID論」を「創造科学」と誤記したものと思われる。
その考えは19世紀にスペンサーが唱えて一世を風靡した説の焼き直しである。(謎解き超科学 p.136)Spencerは、「究極の到達点へ向かって進化する」というラマルクの定向進化の立場に立っていた。
この定向進化を、現在のインテリジェントデザインと比べると
- 大きな進化の道筋について、Lamarckが理神論的なフロントローディングを想定するのに対して、インテリジェントデザインはデザイナーの超自然からの介入(intervention)を想定する
- 小さな変化について、Lamarckが獲得形質の遺伝を、インテリジェントデザインが突然変異と自然淘汰による小進化を想定する
と違いはある。しかし、「究極の到達点」のようなアンチダーウィニズムな考えは同じ。「進化は究極の目的へ向かっての進歩であり、その進化はデザイナーによってのみなされる」とも言えるインテリジェントデザインは、定向進化の変種と見てもよいかもしれない。
とすると、「スペンサーが唱えて一世を風靡した説の焼き直し」と言ってもいいのかもしれない。
「インテリジェントデザインは反進化論ではない」という自称
創造科学と違い、ID論では進化そのものまでは否定していない。 (謎解き超科学 p.136)それほど単純ではない。
インテリジェントデザイン理論家Dr. Stephen Meyerは進化を以下にようにクラス分けしている。
- 時間を経ての変化。自然の歴史。自然のイベントの時系列。
- 集団の遺伝子プール内の対立遺伝子の頻度の変化
- 限定的共通祖先。特定の生物集団が共通祖先の子孫であるという考え
- 共通祖先から限定的変化を起こすメカニズムで、主としてランダムな突然変異について働く自然選択
- ユニバーサル共通祖先。全生物が一つの共通祖先の子孫であるという考え
ブラインドウォッチメーカー。共通祖先からの進化は、ランダムな突然変異について働く自然選択のような、導かれない、インテリジェントでない、目的のない、物質的プロセスのみのよって起きる
一方、インテリジェントデザインは、1.に時系列には言及しないが、変化そのものは認めていて、おおよそ4.まで認めて、5.から拒否。Dr. Michael Beheのみ、5.も認めている。つまり、創造科学とほぼ同じ。
進化には知的なシナリオがあるはずで、進化が偶然の産物だというのは間違いだというのだ。 (謎解き超科学 p.136)これには注記が必要で、インテリジェントデザインはこのシナリオの実装を、初期値と自然法則だけで行う(フロントローディング)のではなく、超自然からに介入で行うことを必須としている。
提唱者に昇格したCasey Luskin
ID論の提唱者であるディスカバリー研究所のケーシー・ラスキン氏 (謎解き超科学 p.136)とあるが、Casey LuskinはDiscovery Instituteの弁護士・広報担当である。これは、National Geographicsの記事が、ナショナルジオグラフィックスの記事になったときに起きたことである。
インテリジェント・デザイン(ID)論の提唱者であるディスカバリー研究所のケーシー・ラスキン氏は次のように語る。
[進化論対「ID」論:クジラ (2009/11/27) on National Geographics]
... said Casey Luskin, a spokesperson for the Discovery Institute, a Seattle-based organization that advocates intelligent design.
(インテリジェントデザインを主張する、シアトルを本拠地とするDiscovery Instituteの広報担当Casey Luskinは語る....)
Evolution vs. Intelligent Design: 6 Bones of Contention (2009/11/23) on National Geogprahics]
宗教ではないという主張
多くのID論者は自分たちの研究は宗教と無関係だとしている。理由を書き出すと長くなるためか、理由は書かれていない。
...
創造科学を否定するような主張はなるべく避ける傾向がある。ID論者は進化論支持者と持論する際も、地球の古さや人類の起源を話題にしないことが多い。
...
知的デザイナーについても、その正体を追求するのは研究の目的ではない (謎解き超科学 p.140)
で、このように主張する理由として、インテリジェントデザインの父たるPhillip E. Johnsonは以下の2つを挙げている。:
これらのうち前者は、ビッグテント構想と呼ばれるインテリジェントデザイン運動の行動方針である。後者は公立学校の理科の授業に侵入する手段でもある。
この方針に従うと、次のような愚かな事態を招く
- 『「人間には不明である」目的を目指した選択をするインテリジェンスによる、「人間には意図不明な」部品の意図的配置である「デザイン」』というわけのわからない主張をしたことになる。
- 「生命の歴史」の話をしているのに、「時系列」がない。