ナイジェリアにエボラアウトブレイクを起こしたリベリア系米国人Patrick Sawyer
Patrick Sawyer (40)はリベリアから米国に帰化し、妻Deconteeと3人の娘(5歳, 4歳, 1歳)とミネソタ州Conn Rapidsに住んでいた[CNN]。
2014/04: Patrick Sawyerは、世界的な製鉄鉱山企業ArcelorMittalのLiberia法人の公衆衛生管理者として、リベリアにあるArcelorMittalのBuchananサイトに単身赴任[SteelFirst]。
2014/07/08: Patrick Sawyerが看病していた[CNN]、エボラに感染した妹Princess Christina Nyennetue (27)が死亡[AllAfrica/Vanguard]。
2014/07/09: Patrick Sawyerは、ArcelorMittal Liberiaに対して、家族がエボラで死亡したと申告。ArcelorMittal Liberiaはリベリア保健省に届け出し、Patrick Sawyerに対して、28日間の出勤停止を命じた[SteelFirst]。
2014/07/20: Patrick Sawyerは、ナイジェリアのCalabarで開催されるECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)の会議に参加するとして、リベリア財務副大臣Sebastian Muahの許可を受けて出国[AllAfrica/PremiumTimes]。財務省は、保健省がSawyerをモニタリング対象にしていたことを知らなかった。リベリアのMonroviaのJames Spriggs Payne空港のCCTV記録で、彼は既に重病状態だった[NewDawrn]。彼はそのまま、ASKY航空でトーゴの Lomé経由で、ナイジェリアのLagosのMurtala Muhammed国際空港に到着[DailyBeast]。彼は機内で吐き、空港で倒れ、ObalendeにあるFirst Consultant Hospitalに搬送された[AllAfrica/PremumTimes]。
病院でPatrick Sawyerは自分はマラリアだと主張した。マラリアは人から人へは感染しないので、病院側は感染症対策をとらず、医師及び看護師の9名が感染し、その後4名が死亡。病院に搬送した担当者も死亡した[WHO]。
このときPatrick Sawyerは自分はリベリアの外交官だと自称し、リベリア当局からも彼を退院させるよう病院側に圧力がかかった[AllAfrica/PremumTimes]が、Dr Stella Ameyo Adadevohが阻止。
しかし、実際のPatick Sawyerの渡航目的は、未亡人Decontee Sawyerによれば、エボラ治療を受けられる施設を探すことだった[PremiumTimes]。
2014/07/24; Patrick Sawyer死亡[WHO]。
2014/08/04: Patrick Sawyerの治療にあたった医師1名が死亡[Reuters]。
2014/08/19: Patrick Sawyerの治療を監督し、退院を阻止したDr Stella Ameyo Adadevohがエボラで死亡[Guardian]。
ナイジェリアPort Harcourtでエボラ感染を起こしたOlubukun KoyeとIyke Enemuo
2014/08/01: Patrick Sawyerと接触し、エボラ検査結果陽性で隔離されたナイジェリアのECOWAS外交官であるOlubukun Koyeは、Lagosの隔離病室から逃亡した。その前に、Koyeは同僚LillianにPort Harcourtの医師Iyke Enemuoとコンタクトのアポイントを取らせていた。そして、Enemuoの開業するSam Steel Clinicに近いMandate Hotelにチェックインした[ThisDayAlive]。
その後、Olubukun KoyeはLagosに戻り、エボラ検査陰性となる。Olubukun KoyeはPort Harcourtに行ったことを当局や病院に申告しなかった[ThisDayAlive]。
2014/08/07: ナイジェリア政府はエボラ非常事態を宣言[WHO]。
2014/08/16: Iyke Enemuo医師はGreen Heart Hospitalに入院[WHO]。Iyke Enemuo医師はエボラ感染者の治療にあたったことを告げなかったが、病院の医師が何か隠していることに気づいた[ThisDayAlive]。
2014/08/22: Iyke Enemuo医師死亡[WHO]。
2014/08/27: Iyke Enemuo医師がエボラに感染していたことを、Lagos University Teaching Hospitalが確認[WHO]。
2014/09/08: ナイジェリア医師/歯科医師会は、ホテルでエボラ感染者の治療にあたり、その後死亡したIyke Enumuo医師について、論外な行動だと批難する声明を出した[AllAfrica]。
2014/10/20: WHOはナイジェリアのエボラアウトブレイクの終結を宣言[WHO]。このアウトブレイクで、Patrick Sawyer以外に、19名が感染し、うち7名が死亡した。
そして...
ナイジェリアへのエボラ感染拡大は、よりよい治療を求めてリベリアを脱出しようとしたリベリア系米国人と、その行為を事実上支援したリベリア財務省により起きたものである。ナイジェリア政府が、リベリア政府からの要請に応じてPatrick Sawyerを退院させていれば、彼はそのまま、米国ミネソタ州へと移動していた可能性もある。そして、Lagosの病院や空港及びECOWAS関係者にとどまっていたエボラ感染は、独自治療を求めたナイジェリア外交官Olubukun Koyeにより、Port Harcourtに広まった。
いずれも、自分がエボラ感染者であることを知りながら、使える人間関係を使って、エボラ感染防止措置を破って感染を広めている。司法警察力で、このような行為を阻止する必要があるが、それとともに、国外逃亡の動機たる治療施設の不十分さについて、対策する必要がある。
ギニアと隣国セネガル・マリ・コートジボワール・ギニアビサウの国境線封鎖は事実上不可能であり、治療を求めて、ギニア・シエラレオネ・リベリアから感染者があふれだすのを止められないからだ。