2016/08/05

143年の歴史を誇る都市伝説「ブアメードの血」Update 2016/08/05

2009/07/11から、ときどき追いかけてきた「(1999年に笠巻勝利氏が命名した)ブアメードの血」だが、前回(2016/03/29)から少し進展があった。(Googleの雑誌スキャンが進んで、オンライン情報が増えているようだ。)

  • 英国のLancetが"Can Imagination Kill"という記事を掲載したのが1886年。それよりも13年前に、同様の記述を掲載した医学誌が米国にあった。
  • 英国のLancetの記事では、傷つける箇所は「首」だったが、米国では1884年まで「腕」とする記載が複数見られた。
  • いつ実験が行われたか記載はなく、場所もフランスだったり、ドイツだったり


で、まずは、1873年、米国ミシガン州Battle Creekの"The health Reform Institute"が発行している"The Health Reform"に、「多くの読者にとって新たに知ることではない」事例として、死刑囚を使った実験例に触れた記事が掲載された。
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「実際に死の瞬間まで、まったく疾患ではないのに、想像力によって人が死ぬことがある」と私は言った。ここでは、多くの読者にとって新たに知ることではないが、そのような症例をここで指摘しよう。一人の男が、フランスで犯罪により、死刑を宣告された。数人の医師たちが、その男をただちにギロチンにかけるのではなく、実験に使うことを許可された。実験計画では、男の想像力を刺激し、心の働きによって、実際に死亡するのか、見極めることになっていた。医師たちは男に、出血死することになると信じ込ませたが、実際には、その男は一滴の血も流れることはなかった。医師たちは、「自分が出血するという想像が神経系に強く働きかけ、男は死亡する」と主張した。その男の例では、それが実証された。

男に見えるように、血液を受けるためのボウルが置かれた。一人の医師の手にある鋭いメスがきらりと光った。傷をつけるために、男の腕がむき出しにされた。そして、男は目隠しをされ、テーブル(台)の上に寝かされた。医師たちは話し合い、大動脈を探し、男がすぐに出血死する、適したところを指した。医師たちは、出血しない程度に、男の腕を刺した。医師たちは、血が流れ出ているかのように会話した。欺瞞を完全なものにするため、暖かい水を男の腕に流して、ボウルへと流し落とした。医師たちは出血量を話した。医師たちは男の脈をとり、そのゆらぎを話した。経過時間を少し長めに話した。男は実際に意識が遠くなり、出血死の症状を呈して、実際には一滴も出血することなく、死亡した。医師たちが男の想像力に働きかけた欺瞞だが、男にとっては実際に出血死すると思っていたことにより、男は死亡した。

[Good Health 1873, p233]
具体的な記述だが、いつ、起きたのかは書かれていないが、フランスで起きたことになっていた。。また、出血したと思い込ませるために傷つける箇所は腕だった。

1879年、米国ペンシルバニア州Wernersvilleの医学誌に、同じく「腕」を傷つけるストーリーが掲載された。ただし、場所はフランスではないようだ。
LawsOfHealth1879s.PNG
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LawsOfHealth1879a.PNG

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私は別の例にも触れずにはなるまい。多くの医師たちが、ドイツ王子に、死刑を宣告された犯罪者を使って、心がどの程度、身体に影響を及ぼすのかの実験を求めていたという。ある人物が、首を刎ねるかわりに出血死させられると信じ込ませされた。指定時刻に医師たちは、彼の独房に出かけた。彼は簡易ベッドに寝かされ、目隠しをされた。そして、医師たちは血液を受ける容器を用意した。医師たちは彼の腕を傷つけ、暖かい水が腕を流れるようにし、床に落ちるようにした。目隠しされた人物は、出血死すると信じ込んでおり、医師たちはそのように印象付けるべく、脈拍を計測し、流れ出た血の量を計測し、弱っていく状態を調べた。彼が聞こえることは、彼が死にかけていると彼の心に思い込ませるものだた。そして彼は死亡した。まさしく想像力によって死亡した。彼は一滴の血も失っていなかった。これは凄いことだろう? 出血死するところ、あるいは事故か何かで死亡しかかっていると考えたとき、どんな気分になるか考えたことがあるだろうか?

[Laws of Health, 1878, p96]


続いて、1880年に、米国オハイオ州シンシナティの医学誌"The Cincinnati Lancet and Clinic"に、次のような記事が掲載された。これも出血したと思い込ませるために傷つける箇所は腕だった。
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Attention with imagination is a fruitful source of physical disorder. The schoolmen had an axiom: A strong imagination begets the events. The suggestion of a disease has been known to cause that disease, more especially if the disorder be a neurosis. Even death has ensued from a vivid imagination. A criminal is blindfolded, it having previously been represented that he was to be bled to death: a scratch is made upon his arm and trickling water represents to his ears the flowing blood, and he dies. Another dies upon the scaffold, just awaiting the descent of the fatal ax; a reprieve comes, but the man is already dead.

想像力に注意することが、身体的障害の豊かな源泉である。教師は格言を持っている。強い創造力は事象を生み出す。疾患を示唆すると、疾患を生じることが知られている。特に神経症ではそうである。死さえもが鮮やかな想像力によって起きた。一人の犯罪者が目隠しをされる。彼は出血死させられると、事前に告げられる。彼の腕に引っかき傷がつけられ、彼の耳には血の流れに聞こえるように、水を滴らせる。そうすると、彼は死亡する。別の死亡例もある。男は死刑執行を待っている。そこに執行猶予の知らせが来る。しかし
男は既に死亡している。

[The Cincinnati Lancet and Clinic 1880, p528]
この記事では、「腕に引っかき傷」以上の情報はない。いつ、どこで起きたのかも、椅子に座っているか、ベッドの上かもわからない。

そして、1884年のDaniel Hack Tukeの本には、1880年の記述と同様に、腕から出血していると信じ込んだ男と、執行猶予前に死亡した男の話があった。
Imagination1884b.PNG

[Daniel Hack Tuke: "Illustrations of the Influence of the Mind Upon the Body in Health and Disease: Designed to Elucidate the Action of the Imagination" (1884)]



この後、傷つける箇所が「首」になったLancet (1886)の記事が登場する。そして、「首」系列から、指などの派生バーションが登場する。
出典人名場所年代針の場所固定場所流出したと信じた量
Lancet (1886)---台(table)- (6分後)
Items of Interest (1886)---台(table)- (6分後)
Chambers's Journal (1887)------
Chambers's Journal, Volume 64 By William Chambers, Robert Chambers (1887)-フランス(の医師)数年前(ナポレオン3世の許可)台(table)- (6分後)
Columbus Medical Journal (1889)------
Annales médico psychologiques (1886)-英国前世紀7-8パイント
Rochas 1887-英国前世紀7-8パイント
Flammarion (1900)[F]-コペンハーゲン1750台(table)7-8リットル
Flammarion (1900)[E]-英国前世紀台(table)7-8クォート
フラマリオン 著 ; 大沼十太郎 訳(1924)-英國先世紀テーブル六、七升
Toledo News Bee (1922)-英国の医科大学-心臓近くの皮膚手術台-
St. Petersburg Times (1926)-フランス(の医師)数年前動脈台(table)- (5分)
Arthur Brisbane (1930)---裸足の裏全体椅子-
谷口雅春 (1932)--或る時頸部椅子全身の血液の三分の二
PHILADELPHIA NEUROLOGICAL SOCIETY (1935)-インド(の医学誌)-四肢の先端台(table)-
谷口雅春 (1962)--あるとき頸椎椅子全身の血液の三分の二
広告屋のネタ帳 (1998)-アメリカ----
笠巻勝利 (1999)ブアメードオランダ1883足の親指ベッド全身の1/3
長谷川淳史(2000)ブアメードヨーロッパのある国第2次大戦前足の全指ベッド全身の10%
Lowel(1996)-インド(の医師)-四肢の先端ベッド-
Sones&Sones(2004)-インド1936四肢の先端ベッド-
Minasian(2010)--20世紀初頭--(翌朝)

posted by Kumicit at 2016/08/05 06:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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