2007/08/18

反"進化論"というより反"進化論論"なインテリジェントデザイン

反進化論論というポジション

インテリジェントデザインとはDiscovery Instituteによれば
The theory of intelligent design holds that certain features of the universe and of living things are best explained by an intelligent cause, not an undirected process such as natural selection.
インテリジェントデザインは理論は、宇宙と生物のある特徴が、自然選択のような方向性のない過程ではなく、インテリジェントな原因によって最もよく説明されると考える。
一見、反進化論に見える定義である。しかし、
the "gap" in Darwinian evolution is not a gap in knowledge, but a fundamental theoretical gap that represents an aspect of biology which Darwin's theory is simply incapable of bridging.

ダーウィン進化論の隙間は知識の隙間ではなく、ダーウィンの理論が使えない生物学現象を示す原理的な理論的隙間である。
[FAQ: Is ID a "god-of-the-gaps" argument? on IDEA Center]
と踏み込むことで、実は"反進化論"というポジションをとれないことを示している。

インテリジェントデザインが戦う敵は、Darwinの執筆した種の起源でもない。「当分は完結することがない多数のモデルと観測事実と実験の集合体」である"Synthetic theory of evolution"(現代進化総合説)である。

従って、「原理的な理論的隙間」とは、「"Synthetic theory of evolution"に将来参加してくるモデルや観測事実や実験の集合体」を含めても、なお残る隙間でなければならない。

ということで、インテリジェントデザインの敵は、"進化論"というより"進化論論"になる。
  • タイプA

    • 進化論論A:
      現在の進化論で説明できていない特定の生物器官・生物・現象が、将来の進化論で説明できる
    • インテリジェントデザインA:
      現在の進化論で説明できていない特定の生物器官・生物・現象が、将来の進化論でも説明できない
  • タイプB

    • 進化論論B:
      現在の進化論で説明できていないすべての生物器官・生物・現象、および将来に見つかるすべての生物器官・生物・現象が、将来の進化論で説明できる
    • インテリジェントデザインB:
      現在の進化論で説明できていない生物器官・生物・現象および将来に見つかる生物器官・生物・現象の少なくとも一つは、将来の進化論でも説明できない。

タイプAとBのいずれの進化論論も科学ではなくメタな論。これに対抗するインテリジェントデザインもタイプAとBともにメタな論。すなわち、現時点で科学で、どちらが正しいか決着をつけられない。

ただし、メタな議論はできるかもしれない。


メタな議論A

タイプAの「特定の生物器官・生物・現象」たとえば、細菌の鞭毛とかをめぐるメタな議論は次のように帰納論になる。

  • 進化論論Aのメタな帰納論:
    進化論で説明できないと主張された血液凝固過程や免疫系の進化経路が示された。よって、同様に・・も進化論で説明されるだろう。
  • インテリジェントデザインAのメタな帰納論:
    "種の起源"出版時点から謎で、未だ解明されていない問題・・がある。150年にわたって謎だったのだから。これからも説明できないだろう。


メタな帰納論ではインテリジェントデザインAは説得力がない。

しかも、この勝負はその「特定の生物器官・生物・現象」が進化論で説明がつけば、進化論論Aの勝利、つかなければ勝負未決のまま。はじめからインテリジェントデザインAは勝利できない仕掛けになっている。


メタな議論B

一方、タイプBは違ってくる。こっちはメタにしても帰納な論はできそうにない。ヒラリー・パットナムな「理に適っている」とか「もっともらしい」といった認識論的価値を持ち出す他ないだろう。

「すべて vs 少なくとも一つは」という戦いでは、「少なくとも一つは」の方が、理に適っていて、もっともらしいと思われる。すなわち、インテリジェントデザインBが進化論論Bが説得力がある。

ただ、この勝負は永遠に決着がつかない。というのは、進化論で説明がつかなくても、進化論論Bは「いずれ解明される」と主張し、これをインテリジェントデザインBはくつがえせない。逆にすべての「生物器官・生物・現象」が進化論で説明されても、インテリジェントデザインBは、「新たに説明がつかないものが見つかる」と主張し、これを進化論論Bはくつがえせない。


タイプBのポジションをとる"古い地球の創造論の老舗

どちらかといえば、特定の拠点防衛するタイプAで、インテリジェントデザイン運動側は戦いを続けている。

これに対して、"古い地球の創造論の老舗"Reasons to Believeの主宰者Dr. Hugh Rossが定義する"進化論"は
the word "evolutionist" has generally been applied to someone who asserts that all the changes observed in the recored of nature (including te origin and history of the universe, Earth, and all life) can be attributed to strictly natural cause.

進化論者という言葉は、一般に「宇宙と地球と全生命の起源を含む、自然界の記録で観察されるすべての変化は厳密の自然の原因のせいであるはずだ」という主張をする人々に対して使われる。[Hugh Ross: Creation as Science, p.21]
これは、進化論論Bに相当するメタな論。あるいは、科学の原則たる方法論的自然主義(自然現象の説明に超自然を召喚しない)ではなく、形而上学的自然主義(超自然は存在しない)のポジションである。

これに対抗する形で提示される"古い地球の創造論"は、インテリジェントデザインBと同様にポジションになる。これなら、決して負けない。

しかも、メタな論である進化論論Bを科学だということにすれば、対抗する"古い地球の創造論"も科学だと主張できる。主宰者Dr. Hugh Rossはこのトリックを意図的に使ったと思われる。
posted by Kumicit at 2007/08/18 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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