ライアル・ワトソンが「生命潮流」で、「百匹目の猿」の出所(ではなく道具として)として挙げたのが、Koshima(幸島)のニホンザルの行動についての河合雅雄の論文
Kawai, Masao. 1965. On the newly-acquired pre-cultural behavior of the natural troop of Japanese monkeys on Koshima Islet. Primates, 6:1-30.
である。もちろん、この1965年の論文には「百匹目の猿」はいない。
- 幸島のニホンザル全員を1949年(20匹)から1962年(59匹)まで観察し、新しい行動の習得と伝播、その原因と意味を研究
- 新しい行動とは、サツマイモ洗い・麦洗い・海水浴・なんかくれポーズ。
- 1958年までは、サツマイモ洗いは年1〜4匹の年少の猿が習得したが、成人した猿11匹のうち習得したのは2匹(いずれも母猿で、サツマイモ洗いをする子猿をまねたものと考えられる)。
- 1959年からは、サツマイモ洗いをする猿たちが成人し、子供を生むようになった。それ以後は、母から子へとサツマイモ洗いが伝わるようになった(つまり、サツマイモ洗いは新技術ではなく、普通の行動になった)。
なお、原論文を掲載した論文誌「Primates」は大学の理学部動物学教室か農学部の図書館にはあると思うが、一般の図書館にあるような雑誌ではなさそう。なので、出版社であるSpringerのページ でPDFを購入した。お値段は$30""
1962年に幸島に生存していたニホンザルの系図が示されている。下線はサツマイモ洗いを習得したニホンザル。
1958年までの各年にサツマイモ洗いを習得した猿の名前と年齢が示されている。毎年1〜4匹がサツマイモ洗いを習得している。
1960年までに幸島に生まれたニホンザルの名前・性別・習得した行動のリストが示されている。ここで、 SPW: サツマイモを洗う WW: 麦を洗う B: 海水浴(Δは泳ぐ) GM: なんかくれポーズまた、 ++, +:習得度、±:不完全な習得、0:習得していない、△:泳ぐ、*:孤立オス、S:スナッチ
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