インテリジェントデザインとは:
The theory of intelligent design holds that certain features of the universe and of living things are best explained by an intelligent cause, not an undirected process such as natural selection.これは言い換えると「"当分は完結することがない多数のモデルと観測事実と実験の集合体"である"Synthetic theory of evolution"(現代進化総合説)によっても、将来の進化論によっても説明できない、特定の生物器官・生物・現象がある」ということになる。
インテリジェントデザインは理論は、宇宙と生物のある特徴が、自然選択のような方向性のない過程ではなく、インテリジェントな原因によって最もよく説明されると考える。
[Discovery Institute FAQ]
the "gap" in Darwinian evolution is not a gap in knowledge, but a fundamental theoretical gap that represents an aspect of biology which Darwin's theory is simply incapable of bridging.
ダーウィン進化論の隙間は知識の隙間ではなく、ダーウィンの理論が使えない生物学現象を示す原理的な理論的隙間である。
[FAQ: Is ID a "god-of-the-gaps" argument? on IDEA Center]
これは
- 進化論論: 現在の進化論で説明できていない特定の生物器官・生物・現象が、将来の進化論で説明できる
- 反進化論論: 現在の進化論で説明できていない特定の生物器官・生物・現象が、将来の進化論でも説明できない
つまり、インテリジェントデザインは「生物についての理論」ではなく、「進化論についての理論」である。従って...
- Irreducible Complexity(還元不可能な複雑さ)とかComplex Specified Information(複雑な指定された情報)とか情報量保存則とかといったインテリジェントデザイン特有の概念は、あくまでも「進化論を検証」する手段である。
- インテリジェントデザインの研究対象は、生物ではなく、生物学の進化関連論文である。
- 研究対象が生物ではないので、インテリジェントデザインの研究にあたっては、実験・観察・シミュレーションを行うことは稀である。
生物が研究対象ではないので、インテリジェントデザイン理論は、生物学の一分野としては検証可能な予測を作れない。しかし、反進化論論としては検証可能な予測を作れる
- 進化論では説明できないもが見つかる
- ・・は進化論で説明できない
- 見つかったものに進化論な説明がつく
- ・・は進化論で・・と説明がついた
当然のことながら、インテリジェントデザインを証明・反証する証拠は、生物・生物器官・生物現象そのものではなく、生物学の進化関連論文。
こんなインテリジェントデザインは、"科学理論"ではありえない。研究対象が、生物学の進化関連論文であるような研究は、自然科学ではない。
インテリジェントデザイン理論家たちは「デザインを検出する」と言っているのだが...
この方法は、やっぱり文献調査。というのは、デザイン検出方法たる「DembskiのExplanatory Filter」がそうなっているから
- 自然法則で説明できない ==>次へ進む
- 偶然で説明できない ==>次へ進む
- 意味ありげ(デザインに見える)==>次へ進む
- それはデザイン
生物・生物器官・生物現象を観察しても、それはどれも「デザイン」されたように見える。それが「デザインされたものではなく、自然法則に従って生じた・あるいは偶然に生じた」ものなのか、「本当にデザインされた」ものなのか区別できない。
「自然法則および偶然」すなわち「進化論」で説明できるか否かが、「DembskiのExplanatory Filter」の判断基準である。
これは、生物学の進化関連論文を調べないとわからない。どんなに生物・生物器官・生物現象を観察しても答えはない。
従って、デザインを検出するというデザイン論としての立場にたっても、やっぱりインテリジェントデザインは生物学の進化関連論文という研究手段しかとれない。
これは、形而上学としても、かなり奇妙な"学問"である。
そして調査もれ
というわけで、インテリジェントデザインは特に、研究を行うにあたって、文献調査はとっても重要。
- 誰もやっていないと思っていたら、実は既出
- その方法では答えが出ないことが確定済み
とはいえ、掃いて捨てるほど論文が量産されているので、ひとりでは調査モレが起きることもある。そこで...
- 大学の研究室とか、研究グループを組んで、モレが出にくくする。
- 学会発表とか若手の会とか、ツッコミを受け付けられる機会を持つ
- 論文には査読
- 生物を専門とするインテリジェントデザイン理論家が10名程度しかいない(研究室レベル)。しかも、研究グループを構成していない。ちりぢりばらばら。
なので、「進化論では説明できない」と主張するためには、おおよそ進化論を知っていなければならないが、重要な成果を知らないままに、ネタを作ることがある。
有名な例は、鞭毛の進化メカニズム案としてMatzke[2003]が持ち出してきたコオプション。既に1990年代半ばには広く知られていたコンセプトだが、インテリジェントデザイン理論家たちが知ったのは、Matzke[2003]をつきつけられたとき。
「現に進行中の研究分野の論文群」を研究対象とするインテリジェントデザインだが、実動が少なすぎて、そもそも「進化生物学」を追いかけることすらできていない。