とはいうものの、
Springerのページで、
Kawai, Masao. 1965. On the newly-acquired pre-cultural behavior of the natural troop of Japanese monkeys on Koshima Islet. Primates, 6:1-30.
を買って読むことをお奨めする。むつかしい数式も物理法則も出てこない。日本人の英語だから読みやすい。そして、なんといっても、「研究ってこういうものなんだ。」という感動を与えてくれる名品だから。
見るべき図は
1962年時点のイモ洗い習得/せずと誕生年[Table 2]
-1948 (M) Kaminari-, Akakin-, Mobo-, Hiyoshimaru-, Hanakake-
(F) Utsubo-, Nori-, Eba+, Nami+
1949 (F) Natsu-
1950 (M) Gosuke-
1951 (M) Kon+, Ita+, Semushi+
(F) Sango+, Aome+, Harajiro+
1952 (M) Uni+, Naki-
(F) Imo+
1953 (M) Nomi+
1954 (M) Jugo+, Ei+
1955 (F) Nogi+, Sasa+
1956 (M) Tsuru+, Nabe-
(F) Enoki+, Zabon+, Hama+
1957 (M) Ika+, Saba+
(F) Ego+, Nashi-, Nofuji+
1958 (M) Ebi+, Hamo+
(F) Tusge+
1959 (M) Namako+, Eso+
(F) Zai+, Ine+, Sakura+
1960 (M) Same+, Eboshi+, Namazu-, Nobori+
(F) Hasu+, Tsuga+
習得過程[Table.1]
1953: Imo, Semushi, Eba
1954: Uni
1955: Ei, Nomi, Kon
1956: Sasa, Jugo, Sango, Aome
1957: Hama, Enoki, Harajiro, Nami
1958: Zabon, Nogi
整理すると
1958年時点の未習得は
[a] Kaminari, Akakin, Mono, Hiyoshimaru, Hanakake, Utusbo,
Nori, Natsu, Gosuke (大人)
[b] Naki, Nabe, Nashi, Ita, Tsuru (若猿)
[c] Ika, Saba, Ego, Nofuji, Ebi, Hamo, Tsuge (1957,1958年生まれ)
これが1962年になると
[a] の大人集団はやっぱり未習得
[b] の若猿のうちNaki, Nabe, Nashiは未習得, Ita, Tsuruは習得
[c] の新人たちは、Namazu以外は全員習得
[d] 1961, 1962年生まれが未習得
ということで
・大人(NamiとEba以外)はそのまま未習得
・若猿のうちNaki, Nabe, Nashi, Namazuは未習得
・前年と当年生まれは未習得
という状況が続いているわけだ。
ここで、Fig.1の系図をみれば
・Namiの子供のうち
Naki, Nabe, Nashi, Namazuは未習得
Ita, Jugo, Namakoは習得済み
ということで、若猿で未習得なのはなんと、習得した大人2匹のうちの1匹であるNamiの子供たちの半数ということがわかる。
この他に
1948年に観察開始。ここから個体識別と母子関係の追跡が始まる。
1952年に餌付け開始。これ以前はサツマイモはKoshimaに存在しない。
1953年に生後18ヶ月のImoがイモ洗いを始める。
1960年にJugoが対岸へ泳ぎ渡り、1964年秋に帰還。
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