2005/09/07

補足

十分な情報を"引用"で許されそうな範囲でエントリに貼り付けておいたつもりだったが、図を読むのがめんどい人々もいるみたいだ。ということで整理しておく。

とはいうものの、
Springerのページで、
Kawai, Masao. 1965. On the newly-acquired pre-cultural behavior of the natural troop of Japanese monkeys on Koshima Islet. Primates, 6:1-30.
を買って読むことをお奨めする。むつかしい数式も物理法則も出てこない。日本人の英語だから読みやすい。そして、なんといっても、「研究ってこういうものなんだ。」という感動を与えてくれる名品だから。
見るべき図は
1962年時点のイモ洗い習得/せずと誕生年[Table 2]


-1948 (M) Kaminari-, Akakin-, Mobo-, Hiyoshimaru-, Hanakake-
(F) Utsubo-, Nori-, Eba+, Nami+
1949 (F) Natsu-
1950 (M) Gosuke-
1951 (M) Kon+, Ita+, Semushi+
(F) Sango+, Aome+, Harajiro+
1952 (M) Uni+, Naki-
(F) Imo+
1953 (M) Nomi+
1954 (M) Jugo+, Ei+
1955 (F) Nogi+, Sasa+
1956 (M) Tsuru+, Nabe-
(F) Enoki+, Zabon+, Hama+
1957 (M) Ika+, Saba+
(F) Ego+, Nashi-, Nofuji+
1958 (M) Ebi+, Hamo+
(F) Tusge+
1959 (M) Namako+, Eso+
(F) Zai+, Ine+, Sakura+
1960 (M) Same+, Eboshi+, Namazu-, Nobori+
(F) Hasu+, Tsuga+




習得過程[Table.1]

1953: Imo, Semushi, Eba
1954: Uni
1955: Ei, Nomi, Kon
1956: Sasa, Jugo, Sango, Aome
1957: Hama, Enoki, Harajiro, Nami
1958: Zabon, Nogi

整理すると
1958年時点の未習得は

[a] Kaminari, Akakin, Mono, Hiyoshimaru, Hanakake, Utusbo,
Nori, Natsu, Gosuke (大人)
[b] Naki, Nabe, Nashi, Ita, Tsuru (若猿)
[c] Ika, Saba, Ego, Nofuji, Ebi, Hamo, Tsuge (1957,1958年生まれ)

これが1962年になると

[a] の大人集団はやっぱり未習得
[b] の若猿のうちNaki, Nabe, Nashiは未習得, Ita, Tsuruは習得
[c] の新人たちは、Namazu以外は全員習得
[d] 1961, 1962年生まれが未習得

ということで

・大人(NamiとEba以外)はそのまま未習得
・若猿のうちNaki, Nabe, Nashi, Namazuは未習得
・前年と当年生まれは未習得

という状況が続いているわけだ。
ここで、Fig.1の系図をみれば

・Namiの子供のうち
 Naki, Nabe, Nashi, Namazuは未習得
 Ita, Jugo, Namakoは習得済み

ということで、若猿で未習得なのはなんと、習得した大人2匹のうちの1匹であるNamiの子供たちの半数ということがわかる。

この他に

1948年に観察開始。ここから個体識別と母子関係の追跡が始まる。
1952年に餌付け開始。これ以前はサツマイモはKoshimaに存在しない。
1953年に生後18ヶ月のImoがイモ洗いを始める。
1960年にJugoが対岸へ泳ぎ渡り、1964年秋に帰還。
posted by Kumicit at 2005/09/07 00:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | Hundredth Monkey | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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