2008/01/03

"Blood type and personality" に手を出したことがある研究者(1) Cattell

Raymond Bernard Cattell [1905〜1998]は英国生まれの、20世紀ベスト12に入る心理学者。文献リストには1928年から1998年に至る論文および本が挙げられている。共著を含めれば50冊以上の本、500本以上の論文、30以上の標準化テスト作成という膨大なもの。

最も有名な成果は、因子分析に基づいて16 Personality Factorsを作り上げたこと:

A: Warmth 打ち解けない<-> 打ち解ける
B: Reasoning 知的に低い <-> 知的に高い
C: Emotional Stability 情緒不安定 <-> 情緒安定
E: Dominance 謙虚な <-> 独断的な
F: Liveliness 慎重な <-> 軽率な
G: Rule-Consciousness 責任感弱い <-> 責任感高い
H: Social Boldness 物おじする <-> 物おじせず
I: Sensitivity 精神的に強い<->精神的に弱い
L: Vigilance 信じやすい <-> 疑い深い
M: Abstractedness 現実的 <-> 空想的
N: Privateness 率直な <-> 如才ない
O: Apprehension 自信あり <-> 自身なし
Q1: Openness to Change 保守的 <-> 革新的
Q2: Self-Reliance 集団的 <-> 個人的
Q3: Perfectionism 放縦的 <-> 自律的
Q4: Tension くつろぐ <-> 高緊張

[wikipedia,丹野義彦, p9, 2003]



なかったことにされた?"Blood Type"関連成果

"Blood type and Personality"に関する論文は以下の2つおよび"Letter to Editor"のみ。

Cattell, R., Young, H., & Hundleby, J. (1964). Blood groups and personality traits. American Journal of Human Genetics, 16, 397?402.[PDF]

Cattell, R. B., & Hundleby, J. D. (1972). Blood groups and personality traits. American Journal of Human Genetics, 24, 485-486.[Link](Letter to Editor)

Cattell, R. B., Brackenridge, C. J., Case, J., Propert, D. N., & Sheehy, A. J. (1980). The relation of blood types to primary and secondary personality traits. The Mankind Quarterly, 21, 35-51.

これらはDr. John Gillisの管理するCattell文献リストには載っていない。理由は不明だが、おそらく黒歴史に属するものと思われる。というのは...

Cattellは「How Good Is Your Country? (Mankind Quarterly Monograph Series)」や「Beyondism: Religion from Science」などの本で、「進化を宇宙の基本過程として、進化的適応と発展に成功するために必要な倫理的および文化的条件を見出そうとする」Beyondisimを提唱していた。これが、Galtonian eugenicsと神学の混合物と見られ批判対象とされた。また、出版元のThe Mankind Quarterlyもともと優生学系の学術誌であり、知能と経済の関係にまつわる"Bell Curve"論争の元ネタを掲載していた。

このあたりを、Dr. John Gillisが黒歴史とみなして、文献リストからドロップしたかもしれない。


Cattellが"Blood type"に手を出した目的は

目的はCattel et al.[1964]の出だしに書かれている。
Among approaches to the study of psychological genetics, one of the most rewarding is that which seeks to associate a behavioral trait with a physical feature known to be largely hereditarily determined (Cattell, 1950). The human blood groups, relatively well understood genetically, are examples of somatic traits which are free of environmental modification.

心理学的遺伝学の研究へのアプローチの方法で、最も得るところが大きいのは主に遺伝的に決定されることが知られている身体的特性と、行動的特徴の関連を探索することである。人間の"blood groups"は比較的、遺伝的によくわかっていて、環境の変化の影響を受けない身体的特徴の例である。

Cattel et al.[1964]
心理学的遺伝学の研究のために、使えるネタを探そうというもので、その一環として"Blood type"を当たってみたというもの。


Cattel et al.[1964, 1980]の結果

1964年の被験者はローマ・フローレンス・パレルモのイタリア人およびボストンのイタリア系の11〜18歳の581名で、Personalityは"High School Personality Questionnaire"により調査したもので、14種類のPersonality Factorについてスコアを出すもの。Blood TypeはABOのみ。

"High School Personality Questionnaire"は、Cattell率いるチームがPersonarity Factorを調査するために作った質問票の高校バージョンである。イタリア語バージョンはHarvard Florence Research Projectにより作成されている。

Cattell R. B. and Beloff J. 1957. The High School Personality Questionnaire. Champaign, Ill.: Institute for Personality and Ability Testing.
Cattell R. B., Beloff J., and Coan R. W. 1961. The High School Personality Questionnaire.

一方、1980年の被験者は、オーストラリアの白人323名(男156, 女167)(年齢: 平均35.2 標準偏差16.3)であり、16Personality Factor Questionnaireによる性格調査。1964年と比べるとPersonality Factorが少し変更になっている。また、Blood TypeについてRh/C, Rh/E, MN, P antigen system, Kell, 6-PGD, ACP1, BGPも追加。

注意すべきは、いずれも、特に仮説を立てて検証するものではなく、なんか出ないか試してみたというもの。

で結果だが、ABOについて有意差(P<0.05)が出たのはわずかに1964年は1個、1980年は2個:

Factor A : Outgoing vs. reserved
Factor B : More vs. less intelligent
Factor C : Stable vs. emotional
Factor D* : Impatient vs. placid
Factor E* : Assertive vs. humble
Factor F* : Happy-golucky vs. sober
Factor G : Conscientious vs. expedient
Factor H : Venturesome vs. shy
Factor I* : Tender-minded vs. tough-minded <--(1964) ABO
Factor J* : Self-sufficien vs. gregarious
Factor 0* : Apprehensive vs. placid
Factor Q1+: Conservative vs. radical
Factor Q2 : Self-sufficient vs. group-tied <--(1980) ABO
Factor Q3 : Controlled vs. casual <--(1980) ABO
Factor Q4 : Tense vs. relaxed
(*は1964年のみ、+は1980年のみ)
個々の有意差については:

  • Factor Iでは、AがO,B,ABに対して p<0.01で有意
  • Factor Q2では、ABはAとBに対してはp<0.05で有意だったが、Oに対しては有意ではない。さらにA,B,Oの平均はhomogeneousだった。
  • Factor Q3では、AはOとBに対してはp<0.01で有意だったが、ABに対して有意ではない。さらに、AB,B,Oの平均はhomogeneousだった。

1964年イタリアと1980年オーストラリアの結果は合致しなかった(Q2とQ3)。さらに、1980年の有意差は「端と端にあっても、真ん中にはない」というもの。

これでは有意といっても、タイプ1エラーである可能性が高く、とても「心理学的遺伝学の研究のために、使えるネタ」にはならない。


その後は何もない

その後、google scholarで調べてみても、Cattellによる"Blood type and Personality"に関する論文は見つからない。もちろん、文献リストにもない。使えないネタとして捨ててしまったというところだろうか。

なお、Cattell et al.[1980]では"P antigen system"でやたら有意差が出たが、その後、Cattellはそれについて論文を書いていない。
タグ:Blood type
posted by Kumicit at 2008/01/03 03:08 | Comment(0) | TrackBack(1) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック

面白いブログ「忘却からの帰還」の間違いを発見!
Excerpt: Kumicitさんが書いている、 「忘却からの帰還」 http://transact.seesaa.net/ というブログがありますが、結構間違っています。 あまりアクセスもないようですから、誰も指摘..
Weblog: 血液型と性格 - ABO FAN Blog
Tracked: 2008-10-18 11:54