- 「百匹目の猿現象」は、Kawai(1965)を引用する形で、 「生命潮流」において、Lyall Watsonが創作(1978年)。
- 7年後に、 Ron Amundsonが Kawai(1965)
には該当する記述がなく、「百匹目の猿現象」はLyall Watsonの創作であることを暴
く(1986年)。 - これを受けてLyall Watsonは
幸島における「百匹目の猿現象」はメタファーであって事実ではないことを認める
(1986年)。
私はこの「百匹目の猿現象」について5つのエントリを書いてきて、9月20日の『「百匹目の猿」そろ
そ ろ終わり』で、
私は高崎山サルがサツマイモを洗うという観察と書いた。
記録や報告をネット上で 見つけていない。日本語・英語ともにgoogleにひっかから
ない。前述のように、講談社文庫版「高崎山のサル」にもサツマイモ洗いについての
記述は見当たらない。
その後、幸島以外のニホンザルのサツマイモ洗いについて、追加情報を入手したので報告する。
- 高崎山自然動物園より、「芋洗いについてはずいぶん昔から確認されており、1962年当時にいた職員から伝え聞いた話では62年以前から高崎山では芋洗いの行動がされていたと思われる」という情報をいただいた
- 『樋口義治:「ニホンザルの文化的行動―獲得と伝播 動物はどのようにして文化を持つか」(川島書店) 1992年 』に京大霊長類研究施設内の群れに対する実験の記載があった。
いずれも、1996年のMarkus Pössel & Ron Amundson: Senior Researcher Comments on the Hundredth Monkey Phenomenon in JapanにあるKawai氏のQ&Aにある
Q: Kawaiは自然かつ急速にサツマイモ洗いがKoshimaから別の島や本土の群れのニホンザルに広まったことを知っているか?
A: 他の群れや動物園の個々のサルが偶然にサツマイモ洗いをおぼえたかもしれないが、Koshima以外で群れの他のメンバーにサツマイモ洗いが広まったという観察はない。
を再確認するものとなっている。
以下詳細...
高崎山の猿の芋洗い
高崎山自然動物園に問い合わせたところ、
下村様より丁寧な御回答をいただきました。あらためて、下村様には、調査&回答にはあらためて御礼申し上げます。
こちらで芋洗いについても調べましたが、
該当する書物や、文書が見つかりませんでした。
そこで、以前芋洗いについて調べた係員に聞きましたところ、芋洗いについてはずいぶん昔から確認されており、1962年当時にいた職員から伝え聞いた話では62年以前から高崎山では芋洗いの行動がされていたと思われるということでした。
高崎山では芋洗いについてそれほど特異な行動とは捉えられなかったのではないかと思われます。芋洗いという行動自体は猿が物を持つと手を使って擦るという行動を行うことから、その一連の行動のなかで水中で芋を手で擦るという行動につながったのではないかと考えられております。
現在でも高崎山では芋洗いの行動が行われておりますが、すべての猿がするわけではなく、ごく一部の猿が行うようです。必ず洗って食べるというほどでもありませんので、高崎山では今でもそれほど話題にはなっておりません。
若桜群でのイモ洗い(ただし実験)
樋口義治氏(現 愛知大学大学院文学研究科教授)の本のp204に
もしサルたちがドロのついた芋を与えられて、個々にイモ洗いを学習していったとしたら、イモ洗い行動は文化的行動ではない。実際、サルたちがドロのついた食物を水のなかで洗って汚れを落とすことを学習している場合はある。たとえば、著者は若桜群のサルたちにドロのついた芋を与えたことがある。すると約30頭のうち2頭のサルは、水の中へ芋を入れたジャブジャブ洗った。しかし、他のサルはこうした行動をしなかった。試行錯誤による行動の獲得はこうした現われ方をする。けっして群れ全部のサルが同一の行動をとるということはないだろう。
とあり、試行錯誤でサツマイモを洗い始めるサルもいた。
なお、
サルは決して物真似がうまいとはいえない。サルの行動の伝播は、仲間のサルの行動から、ある物ある部分に興味を触発され(局部的強調)、その後自ら試みること(試行錯誤)によってなされるといえる。....少数ではあるが観察による模倣(観察学習)によって獲得した個体もいたことから、ニホンザルにまったく即時的な模倣能力がないと結論することはできない。
とのこと。
【Hundredth Monkeyの最新記事】