まずは、原作の正しい記述から見ておくと:
Andreas Heuer and Oliver Rubner: "Fitness, chance, and myths: an objective view on soccer results", arXiv:0803.0614, 2008/03/07ホーム側が有利ではあるのだが、特にホーム側で強いチームがいるわけではないというのが過去41シーズンの統計から見られること。
3.) The overall fitness, defined via the goal difference 僭 is to a large extent the only characteristics of a team. In particular there is no signature of the presence of a specific home fitness. Here we distinguish between home fitness and home advantage. The latter is the well known property to score more goals at home than away which is 0.7 goals per match. Home fitness, in contrast, relates to a possible extra ability of some teams to score more than these 0.7 excess goals per match when playing at home which, of course, also implies that some teams have to play below the average home advantage. Our findings clearly do not support a home fitness meaning that all teams, whether good or bad, have just the same home advantage.
ゴール差僭によって定義した全体適応度は、チームの唯一の特徴である。特に、ホーム側適応度が存在するという徴候は見られない。ここで、ホーム側適応度とホーム側有利の用語の違いを示しておく。ホーム側有利とは、良く知られていることで、アウェイで試合をするときより、ホームでするときの方が試合平均0.7ゴール多いことである。ホーム側適応度とは、これと違って、この0.7ゴールを超過してゴールする能力に関するものである。これはもちろん、それ以下の"ホーム側有利"で試合をするチームがいることを意味する。"ホーム側適応度"を我々の発見は支持しない。これは、いいチームも悪いチームも同じ"ホーム側有利"を持つことを意味する。
これを誤解を誘うように報道したのがNewScientistである:
タイトルや出だしで誤解を誘っているが、記述は間違いとはいえない。
Football fans and stadiums do not affect home wins (2008/03/15) on NewScientist
Are some home grounds better than others for ensuring sporting victories? It seems not - at least in soccer leagues.
...
Heuer and Rubner confirmed teams have a home advantage over away sides: on average, home sides scored 0.7 more goals per game than visitors. However, they found that no team was inherently better at home than any other (www.arxiv.org/0803.0614).
Heuer and Rubnerはホーム側有利を確認した。平均でホーム側はビジターよりも試合あたり0.7ゴール多かった。しかし、他のチームよりも、よりホーム側で強いというチームはなかった。
Though some teams may appear particularly strong at their own ground, this assumption is often based on wins from a limited number of games, says Rubner.
ホーム側で特に強いチームがあるようにみえるかもしれないが、この仮定は試合数が少ないことによるものであるとRubnerは述べた。
そして、完全に間違ったことを書いているのが、勘違いを得意とするらしい?Technobahnである:
サッカーファンの応援は試合結果には影響を与えない、ドイツ人研究者 (2008/03/18) on Technobahnまったく別の話になっている。伝言ゲームの典型というべきか。
2名の研究者は1965年から2007年の43年間にドイツのブンデスリーグで行われたサッカーの試合、約1万2000の結果を分析し、ファンの応援が多いホームでの試合と、ファンの応援が少ないアウェーで試合のどちらが有利なのか分析。その結果、ホームでの試合はアウェーでの試合よりも0.7ゴール多く、得点を上げていることが判ったとしている。
しかし、2名の研究者は、この結果はホームでの試合数が元々、少ないことによる統計上の誤差の範囲だとしており、ホームの試合数がアウェーでの試合数と同等に近づけばこの試合はホーム側に有利だという結果も消えてしまうだろうと分析。その上でサッカーの試合はホームでの試合が有利だというのは幻想に過ぎないと述べている。
まさに、"テクノバカーン"[TM:mobanama]
追記 2008/03/19 20:21
まとめると、
- 「ファンの応援が多いホームでの試合と、ファンの応援が少ないアウェーで試合のどちらが有利なのか分析」したのではない。
- 「ホームでの試合はアウェーでの試合よりも0.7ゴール多く、得点を上げていることが判った」のではなく、これは従来言われていることで、確認しただけ。
- わかったのは、統計上有意に「0.7+α」なチームがいるわけではないこと。たまたま、この期間のデータでは、0.5(=0.7-0.2)だったり、0.8(=0.7+0.1)だったりするかもしれないが、それはランダムウォークの範囲内。
- 「ホームの試合数がアウェーでの試合数と同等に近づけばこの試合はホーム側に有利だという結果も消えてしまうだろう」ではない。これは大数の法則を言っているだけのNew Scientist誌の記述を勘違いしている。しかも、解説上、消えてしまうのは「α」であって、「0.7」ではない。
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