2005/11/10

インテリジェント・デザインと古い地球の創造論(OEC)

有神論的進化論という形で、キリスト教と進化論の折り合いをつける考えがあり、これがローマカトリックも認めるところ。にもかかわらず、インテリジェント・デザイン理論が別途存在する。このインテリジェントデザインは、「地球や宇宙の歴史は6000年である」と主張する"若い地球"の創造論とは仲が悪い。
有神論的進化論と"若い地球"の創造論の間にあるのがインテリジェントデザインということのようだが、それは新しい考えというわけではない。その立ち位置には、19世紀から、"古い地球"の創造論というものがいる。


"古い地球"の創造論
"若い地球"の創造論(Young Earth Creation=YEC)が創造が6000年前に起こったと言っている。それでは、宇宙物理・地球物理・地質学・古生物学など幅広い科学と敵対することになる。そこで、進化論だけと敵対し、あとはおりあいをつけようというのが、"古い地球"の創造論(Old Earth Creationism)だ。

"古い地球"の創造論(Old Earth Creationism = OEC)には

  • "日=時代"の創造説(Day-Age Creationism):
    聖書の創世記の記述と、宇宙や地球、生命、そして人類の歴史の長さを整合させるべく、聖書に記された創造の6日間を24時間×6ではなく、1日が数千年あるいは数百万年に相当すると考える(wiki)。有神論的進化論者(Theistic Evolutionist)や進歩的創造論者(Progressive Creationist)には、この"日=時代"の創造説(Day-Age Creationism)の支持者がいる。
  • "隔たりのある"創造説(Gap Creationism):
    1800年代にThomas Chalmersが作り出した説で、創造の6日間と、人間の堕落(楽園追放)の間には数百万年以上の大きな時間の隔たりがあるのだと考える(wiki)。

などの変種群がある。いずれも、140億年の宇宙の歴史があり、地球の歴史は45億年と考えるが、生命は創造されたと考える。

これらとは逆方向の考えで、帳尻を合わせようとした者もいた。Philip HenryGosse(wiki)が創世記の記述と進化論を整合させようとして1857年に執筆した本(Amazon)で発表したのがオムファロス仮説(wiki)である。その仮説によれば、神は地球を山や谷とともに、木を年輪とともに、アダムとイブを髪と爪とへそ(Omphalosはギリシャ語でへそ)とともに創造したはずだ。従って、地球や宇宙の推定年齢を信頼できる証拠は見出せない。この仮説は反証不可能であり、科学を完全に破壊するものであるとともに、フェイクを創造する神というすわりのわるいものであるため、流行しなかった。


進歩的創造論(Progressive Creationism)
"古い地球の創造論"の変種群のなかで最も有力なのが、この進歩的創造論(Progressive Creationism)であり、おおよそ次のような考え方である(wiki)。

  • 種は変化もしくは進化してきており、その過程は連続的に神によって指導されたもの
  • 現代物理の考えを組入れ、ビッグバンを神の創造の力の証拠と考える
  • 自然淘汰による進化を誤りだと考えて、拒否する

というもので、化石に残された古生物の記録どおりの生物が、その時代にいたことは認めるが、その変化もしくは進化過程は神によるというのが特徴。これは有神論的進化論(Evolutionay Creationism, Theistic Evolution)(wiki,エントリ)と異なるのは、

  • 有神論的進化論が、神の定めた物理法則によって、進化を指導したと考えるのに対して進歩的創造論が、進化に神が関与したと考える点


これは、「インテリジェント・デザイン」の立場とそっくりだ。というより、神を氏名不詳のインテリジェント・デザイナーと置きかえたものが、「インテリジェント・デザイン」と言うべきだろう。


posted by Kumicit at 2005/11/10 10:24 | Comment(1) | TrackBack(1) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
スゴイ分析で、コメントがありません。
Posted by のぞきみさん at 2005/11/14 17:47
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Excerpt: 100サルの一件で非常にいい記事を書いておられた「忘却からの帰還」さんが、ID論関連でも秀逸な記事を書いている。 そこで備忘録を兼ねて記事をクリップしておこうと思う。
Weblog: 幻影随想
Tracked: 2005-11-11 12:17