2005/11/24

インテリジェント・デザインに対して旗幟不鮮明な保守系シンクタンクたち

保守系シンクタンク「カトー研究所」が中立な立場のようなふりで、教育の民営化の名のもとに、インテリジェント・デザインを学校教育に迎え入れても良いような論調をしている。

ほかの保守系シンクタンクはかなり旗幟不鮮明。中立のようなアメリカンエンタープライズ研究所、沈黙するジョージ・マーシャル研究所やニュート・ギングリッチ氏、トップは気があるようだが、それ以外はそうではないヘリテージ財団。

積極的にインテリジェント・デザインにエールを送るところはないが、積極的に攻撃するところもみあたらない。



American Enterprise Institute
公共政策をメインとする保守系シンクタンク"Joel Schwartzがカリフォルニア工科大の惑星科学の修士を出ている程度。

インテリジェント・デザイン関連では、イベント1回と、その内容を報告したニューズレター1本だけ。イベントは2005年10月21日に丸一日かけたコンファレンス「科学戦争: インテリジェント・デザインを学校で教えるべきか?」("Science Wars: Should Schools Teach Intelligent Design?")。このイベントの報告が2005年11月18付けのニューズレターに掲載されている。

  1. 科学と宗教とインテリジェント・デザイン
    • Paul Nelson [Discovery Institute(インテリジェント・デザインの本山)]
      there are many gaps in evolutionary theory and that since Charles Darwin’s Origin of the Species is “one long argument” against true design in nature,
      進化論には多くのギャップがあり、チャールズ・ダーウィンの種の起源は、自然の真のデザインに反した長い議論となっている。

    • Kenneth Miller [Brown University] 細胞生化学教授
      ID is pseudo-science and that unlike natural selection, it could not be tested because it invokes supernatural explanations for natural phenomena.
      インテリジェント・デザインは自然淘汰と違って疑似科学であり、自然現象に超自然説明をつけるので反証不可能だ。
  2. Keynote: Father George Coyne [バチカン観測所長] [エントリ,出典]

    A belief in God does not conflict with natural selection theory. Intelligent design cannot help in this pursuit because science and religion are separate human disputes that must be distinguished.
    神への信仰と自然淘汰理論は矛盾しない。科学と宗教は、峻別されなければならない分かたれた人間の論なので、この件についてインテリジェント・デザインは役には立たない。
  3. 異論を教えるべきか?

    • Barbara Forrest [Southeastern Louisiana University]
      no one should teach wrong science or religion in the guise of science and noted that calls by ID supporters to “teach the controversy” are disingenuous because there is no controversy among mainstream scientists about evolution.
      誤った科学や科学を装った宗教を教えるべきではない。主流の科学者には進化論についての異論などないから、ID支持者が唱える"異論も教えよ"は不正直だ。
    • John Calvert [Intelligent Design Network][エントリ,出典]
      ID inserts religion into the classroom any more than does evolution and asserted that omitting alternatives to evolution harms students.
      インテリジェント・デザインは、進化論がやっているように授業に宗教を挿入するだけであり、進化論の代案を排除するのは生徒たちに危害を加えるものだ。

  4. Keynote: Lawrence Krauss [Case Western Reserve University]
    ID proposes questions about “the completeness of science without God,” which is a religious, not a scientific, question.
    IDは「神なき科学の完全性」を問うが、それは宗教の問いであって科学の問いではない。
  5. ID異論の法および公共政策
    • Steven Gey [Florida State University]

      "Any kind of statement that politically mandates the inclusion of religious ideas into a science class” would be considered unconstitutional.
      宗教的考えを理科の授業に加えるような政治的に強制するようないかなる声明も違憲。
    • Richard Thompson, [Thomas More Law Center(wikiによれば保守的キリスト教非営利法律センター)]
      ID is not creationism, and just because a scientific theory has religious implications does not make its teaching unconstitutional.
      IDは創造論ではなく、宗教的含みを持つ科学理論なので意見ではない。
    • Mark Ryland[Discovery Institute(インテリジェント・デザインの本山)]
      if you want to do anything, you should teach the evidence for and against Darwin’s theory.
      何をしたいにせよ、ダーウィン理論に合致する証拠と反する証拠を教えるべだ。



コンファレンスとニューズレターともに最後にDiscovery InstituteのMark Rylandの発言を持ってくることで、インテリジェント・デザインを授業で教えてもよいような印象を与えようとしているようでもある。
一方、インテリジェント・デザインのような「信者が聖書の記述の確認を科学に求めようとするな」というバチカンの立場を背負うGeorge Coyneを呼ぶことで、「科学 vs 宗教」という構図をくずそうとしているようでもある。

ただ面白いのはインテリジェント・デザイン側は

  • 進化論は完全ではない
  • 進化論も宗教だ
  • インテリジェント・デザインは宗教的含みを持つ科学だ
  • 進化論に反する証拠も教えよ
と自らが宗教ではなく科学であるとは主張していないこと。アメリカンエンタープライズ研究所はインテリジェント・デザイン側を誘導したのだろうか。それとも天然?

The George Marshall Institute
保守系シンクタンクであるジョージ・マーシャル研究所はインテリジェント・デザインに対して沈黙している。

ただし、シニアサイエンティストのDr. Sallie Baliunas(温暖化懐疑論・オゾン層破壊懐疑論などサウンドサイエンスの旗手)はインテリジェント・デザインを批判している[エントリ, 出典]。

Newt Gingrich
連邦議会技術評価局を葬り去った共和党の大物Newt Gingrich氏(公式サイト)[エントリ,出典]も、インテリジェント・デザインについて公式サイトで触れようとしない。

USA Today[特に右でも左でもない大新聞]の2005年8月25日の記事によれば

Ex-House speaker Newt Gingrich, who often discusses his faith in God and in science, is refusing to do interviews on intelligent design.
神と科学への信仰をたびたび論じる元議員のニュート・ギングリッチ氏は、インテリジェント・デザインについてのインタンビューを拒否した。


The Heritage Foundation
保守系シンクタンクでけっこう有名なヘリテージ財団は、Discovery InstituteのStephen C. Meyer, Ph.D.を呼んでインテリジェント・デザインについてのレクチャーを2005年4月19日に行っている。

USA Today 2005年8月25日の記事によれば
When the conservative Heritage Foundation invited CSC director Meyer to lecture last April, it received protest e-mails. Some fellows said the opposing view should also be presented. "We don't do any research in this area at all," says Stuart Butler, the group's domestic policy director. "There are a large number of people at Heritage who disagree with it."
4月に保守的なヘリテージ財団が、CSC[訳注:インテリジェント・デザインの本山 Discovery Instituteのインテリジェント・デザイン担当部署]センター長のMeyerをレクチャーに呼んだとき、抗議のEメールが届いている。フェローの幾人かは反対の見方も提示すべきだと言った。国内政策グループ長のStuart Butlerは「我々はこの分野に関してまったくリサーチを行っていない。ヘリテージ財団にはこれに反対である非常に多くの人々がいる。」と言っている。


財団トップあたりはインテリジェント・デザインを支持しようとしたのかもしれないが、あまりついてくる人はいなかったというところなのだろうか。

このレクチャー以外でヘリテージ財団のページにあるインテリジェント・デザイン関連は、Discovery InstituteのNancy Pearceyの
TOTAL TRUTH: GETTING PAST THE GATEKEEPER
という2004年10月19日のレクチャーの記事。

posted by Kumicit at 2005/11/24 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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