「アダムとイブも赤ちゃんとして創造して育てたのではなく、大人として創造した。宇宙だって同じさ」ということで、科学と聖書の整合性をとるもの。
インテリジェント・デザインは"Appearance of Age"には手を出していないようだ。
オムファロス
エントリ「インテリジェント・デザインと古い地球の創造論(OEC)」で少し触れたオムファロス仮説について触れた。
これらとは逆方向の考えで、帳尻を合わせようとした者もいた。Philip Henry Gosse(wiki)が創世記の記述と進化論を整合させようとして1857年に執筆した本(Amazon)で発表したのがオムファロス仮説(wiki) である。その仮説によれば、神は地球を山や谷とともに、木を年輪とともに、アダムとイブを髪と爪とへそ(Omphalosはギリシャ語でへそ)とともに創造したはずだ。従って、地球や宇宙の推定年齢を信頼できる証拠は見出せない。この仮説は反証不可能であり、科学を完全に破壊するものであるとともに、フェイクを創造する神というすわりのわるいものであるため、流行しなかった。
で、どれくらいオムファロスの受けが悪かったかといえば、作者ゴスのお友達であり作家であるチャールズ・キングスレイが書評を拒否したくらい。
Gosse expected Omphalos to be attacked by scientists. It was. He was not prepared for the bitter denunciation by the religious community. Asked to write a review of Omphalos, his friend Charles Kingsley, a minister and the author of Westward Ho!, refused. He wrote a letter to Gosse explaining why. `You have given,' Kingsley said, `the `vestiges of creation theory' the best shove forward which it has ever had. I have a special dislike for that book; but, honestly, I felt my heart melting towards it as I read Omphalos. `Shall I tell you the truth? It is best. Your book is the first that ever made me doubt {the doctrine of absolute creation], and I fear it will make hundreds do so. Your book tends to prove this-that if we accept the fact of absolute creation, God becomes God-the-Sometime-Deceiver. I do not mean merely in the case of fossils which pretend to be the bones of dead animals; but in ... your newly created Adam's navel, you make God tell a lie. It is not my reason, but my conscience which revolts here ... I cannot ... believe that God has written on the rocks one enormous and superfluous lie for all mankind. `To this painful dilemma you have brought me, and will, I fear, bring hundreds. It will not make me throw away my Bible. I trust and hope. I know in whom I have believed, and can trust Him to bring my faith safe through this puzzle, as He has through others; but for the young I do fear. I would not for a thousand pounds put your book into my children's hands.'
ゴスはオムファロスが科学者から攻撃されると思っていた。そうれはそうだ。彼は宗教界からの痛烈な非難に対する準備をしていなかった。"Westward Ho!!"の作者であり、友人でもあるチャールズ・キングスレイはオムファロスの書評を頼まれたが拒否した。彼はその理由をゴスへの手紙に書いている。「あなたは、これまでにない創造論の痕跡を押しのける最高のものを提示しました。私はこの本がとても嫌いです。正直に言うと、私はオムファロスを読んで心が溶けてしまうのを感じました。本当のことを言いましょうか。これは最高です。あなたの本を読んで初めて、[絶対的創造論の考えを]疑いをいだきました。そして数百の読者がそうなるであろうことを怖れます。あなたの本は、神が絶対的名創造者であることを私たちが受け入れれば、神は"ときに詐欺師となる神"となってしまうような方法で証明しようと言う傾向があります。それは、化石が死んだ動物の骨のふりをしていることだけを指しているのではありません。あなたの言う創造されたアダムのへそがあるなら、神が嘘つきということになってしまいます。神が岩に莫大で余計な、人類に対する偽りを刻んだということを信じることを、理性ではなく良心が拒否します。あなたが私を陥れた苦痛のジレンマに、数百の読者を陥れることを怖れます。私はこの本を読んでも、聖書を投げ捨てることはありません。私の神を信じ、希望を持っています。私は、私の信じるもののなかにあるものを知り、この謎に対して私の信仰心を護ってくれると神を信じられます。神は他の者たちも護ると信じています。しかし、私が怖れるのは、若者たちです。あなたの本が子供たちの手に届かせるために1000ポンドを受け取りたくありません。」
(Hardin G., "`Scientific Creationism' - Marketing Deception As Truth," in Montagu A., ed., "Science and Creationism," Oxford University Press: Oxford UK, 1984, pp.164-165. Emphasis in original)
しかし、Lane Coffee & Darrick Deanによれば、"若い地球"の創造論(YEC=Young Earth Creationism)(エントリ)の支持者であり、"Institute for Creation Research"を設立した Henry Morrisはオムファロスの魅力に逆らえなかったらしい。"appearance of age"(時代の外観・見かけの年齢)という概念を持ち出しているのだ。
“True creation necessarily involves creation of an ‘appearance of age’…. We insist as emphatically as we know how that the doctrine of creation of apparent age does not in the remotest degree involve a divine deception, but is rather inherent in the very nature of creation.” (Morris, The Twilight of Evolution, 1963, p. 56, 57).
真の創造は"時代の外観"の創造を必然的に伴う。"時代の外観"の創造主義は、神による詐欺などというものではなく、むしろ創造のまさに本質だと、我々は強調して主張している。
“There is no sure way (except by divine revelation) of knowing the true age of any geologic formation.” ( Morris, Scientific Creationism, 1974, pp. 137-138).
いかなる地層の年代も(神託以外に)確実にする方法はない。
“The only way we can determine the true age of the earth is for God to tell us what it is. And since He has told us, very plainly, in the Holy Scriptures that it is several thousand years in age, and no more, that ought to settle all basic questions of terrestrial chronology.” (H. Morris, Scientific Creationism, 1974, p. 94).
我々が地球の真の年齢を測定できる唯一の方法は、神が我々にそれを告げることです。数千年かそれ以上ではないと聖書において、神が我々にまさしく告げているのだから、地球の歴史についてのすべての基本的疑問はその中で決着させなければならない。
“There seems to be no possible way to avoid the conclusion that if the Bible and Christianity are rue at all, the geologic ages must be rejected altogether.” (Morris, Scientific Creationism, 1974 [1985 2nd ed.], p. 255).
聖書とキリスト教が悔悟するのであれば、地質学的年代をすべて拒否するという結論をさける方法はないと思われる。
“The data of geology, in our view, should be interpreted in light of Scripture, rather than distorting Scripture to accommodate current geological philosophy.” (Morris, Science, Scripture, and the Young Earth, p. 6).
我々の見方では、地質学のデータは聖書の記述に従って解釈されるべきであり、現在の地質学の考えにあわせて、聖書をねじまげるべきではない。
“No geological difficulties, real or imagined, can be allowed to take precedence over the clear statements and necessary inferences of Scripture.” (Morris, Biblical Cosmology, page 33).
いかなる地質学上の問題も、それが実際のものでも想像上のものでも、聖書の明確な声明と必要な推論よりも優先されてはならない。
神は詐欺師ではなく、"時代の外観"は創造の必然だと言い放ってはいる。しかし、いったんオムファロスの論理に手を出してしまえば、あとは"何でもあり"である。世界は神の偽造物に満ち溢れていく。
"先週木曜教"(Last Thursdayism)
それをジョークにしているのが、"先週木曜教"(Last Thursdayism)、あるいは先週水曜教や先週火曜教などと呼ばれるものたちである。最も有名なのは1996年のMicheal Keaneの"先週木曜教"(Last Thursdayism)だろう。
"先週木曜教"とは、我が猫 クィーンメーブが先週木曜に、宇宙を見かけの年齢とともに創造したという信仰である。
先週木曜より以前の出来事を明瞭に記憶していると思うかもしれないが、それはクィーンメーブが我々の信仰心を試すために注ぎ込んだ記憶である。
"先週木曜教"に入信し、クィーメーブに従う者は、審判の日たる来週木曜に天国に入ることを許される。猫科に優しい者は天国の居場所を保障されるが、冷淡な者や創造論者は永劫の猫トイレに落される。永劫の猫トイレは決して掃除されることがない。
天国に入った者は猫となる。永劫の猫トイレに行くほど悪ではなく、天国に入れるほど善でもない者は、天国で猫の奴隷となる。
"先週木曜教"信者は進化論を信じない。教会の公式な立場では、我々が進化して今の姿になったという証拠を認める。実のところは、進化はクィーンメーブが知性を試すために置いた多くのもののひとつである。
"先週木曜教"が真実である証拠は...
クィーンメーブが存在することは疑いの余地なく証明できる。写真がある。
さらに、人間がデザインされたという明白な証拠がある。人間は、肉体的にも精神的にも、上位種族たる猫科の奴隷種族として明白にデザインされている。そうでなければ、猫科の動物が人々を無視したり裏切ったりしても、餌を与え、なでて、猫トイレを掃除するということに対して説明がつかない。
さらに、"先週木曜教"が真実であることを証明する「デザイン議論」を提示する。
- 宇宙は有限である
- 宇宙は微調整されている
- 微調整はデザインを意味する
- デザインはデザイナーの存在を意味する
- デザイナーは知性を意味する
- これはクィーンメーブの説明に完全に一致する
- 従って、クィーンメーブは先週木曜に宇宙を創造した
"先週木曜教"は公教育への導入を計画している。"先週木曜教"教会は他の宇宙の起源についての理論と同じだけの授業を行うべきだと感じている。この授業には、クィーンメーブ自らが訪問することも含める。これは創造論や他の理論にできないことである。
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出典
教会FAQのweb.archive.orgアーカイブ
教会ページのweb.archive.orgアーカイブ
アーカイブに欠落しているクィーンメーブの画像保存場所
wiki: Last Thursdayism
"Appearance of Age"論と"God of the gaps"論
「科学で解明できないことがある。それは神のせいなのさ」という"God of the gaps"理論は、「神は"かのように"宇宙を創造した」という"Appearance of Age"論とは対極にある。
"Appearance of Age"論は、科学では反証も証明も出来ない、宗教だ。"かのように"に神に創られた世界を科学は"かのように"解釈するしか方法がない。「宇宙は6000年前に、150億年前にビッグバンで誕生したかのように創造された」ことを確認する方法はない。
"Appearance of Age"論をきわめれば、科学の新たな発見は、神が"かのように"創造した世界の"かのように"を知る過程となる。地球は45億年前から存在しているかのように存在し、ふるまう。だから地震対策も油田や鉱脈さがしもすべて、長き地球の歴史の上に成り立つものとして扱えばよい。そして、科学と"Appearance of Age"論はまったく対立しなくなる。
一方の、"God of the gaps"論は、あくまでも「科学で解明できない」ところに神の生息域がある。神の生息域をめぐって科学と戦うことになる。しかも、"Appearance of Age"論と同じく、科学では反証も証明も出来ない。「科学で解明できない」領域のある限り、決して"God of the gaps"論は否定されることがない。そして、「科学で解明できない」のだから、神の存在は科学で証明できない。
ちなみに、インテリジェントデザインは"God of the gaps"論として存在しており、いまのところ "Appearance of Age"との接点はないようだ。インテリジェントデザインにあるのは"Abrupt Appearance"(突如の出現)である。これは、生物種が、比喩ではなく文字通り突如出現したと考えるもの。神がそこにその生物種を成体として置いたら、"Appearance of Age"論になるわけだが、そう明言していないようだ。インテリジェントデザイン本山たるDiscovery InstituteのシニアフェローであるJonathan Wittによれば
The design theorist says, "It's logically possible that the abrupt appearance is merely apparent, but it's also logically possible that the abrupt appearance is real. Let's see if we can use information theory, statistical analysis, a survey of soft-bodied fossils in the Precambrian, and an engineering analysis of body plans to decide whether the abrupt appearance of novel animal forms in the fossil record is merely apparent or real."
http://www.idthefuture.com/2005/11/post.html
デザイン理論家は「突如の出現が単なる見かけだということは論理的にありうるだろう。しかし、突如の出現が真実だということも論理的にありうるだろう。情報理論や統計解析、先カンブリア紀の軟体動物の化石の調査、ボディプランの技術的解析などを使えば、化石の記録に残された奇抜な形の動物の突如の見かけか真か判断できるだろう」と言う。