たとえば、インテリジェントデザイン宣伝映画Expelledは科学と戦う宗教というポジションに立っている:
==>忘却からの帰還:インテリジェントデザインとは「宗教の欠落がナチズムにつながる」という主張(2008/05/27)
==>忘却からの帰還:インテリジェントデザインとは科学と戦う宗教 (2008/06/04)
2005年12月20日のKitzmiller v. Dover Area School District裁判で、インテリジェントデザインが創造論と同様に宗教であると認定されて、科学を装うという存在意義を失ってしまったことの影響が出てきているのだろうか。
もともと、若い地球の創造論(YEC)と古い地球の創造論(OEC)の両互換を保ちつつ、宗教色を消そうとしたために「進化論で説明できないものは、意図不明な意図に基づく部品の配置たるデザインと、方向性不明な方向性を持つ選択によるものであり、それは能力・意図・正体不明なデザイナーによる」という何を言っているのかわからない理論と化していた。
==>忘却からの帰還:YECとOECの両互換維持のため、インテリジェントデザインは「デザインだ」としか言えない (2008/01/22)
しかし、実際にはそんな建前など、どうでもよく、インテリジェントデザインを教えるという名のもとに、若い地球の創造論(YEC)を教えようとするものだったわけで...
==>創造論を信じるSharon先生 v. 政教分離なバプテスト v. ID理論の本山 (1) (2006/01/16)
もっとも、まだ、この当時は、インテリジェントデザインの名のものとに創造論を教えようとしたFrazier Mountain高校のSharon Lemburg先生に対して、インテリジェントデザインの本山たるDiscovery InstituteのスタッフであるCasey Luskinが中止を要請するなど、「インテリジェントデザインは創造論ではない」という建前の維持をはかっていた。
しかし、今では、「インテリジェントデザインは創造論ではない」とか「進化論を否定するものではない」といった建前を主張するときに使う実例たるDr. Michael Beheをフェードアウトさせ始めている。
==>Common Descentを受け入れるBeheの値打ち (2008/05/08)
反進化論州法の記述は創造論を前面に押し出してはいないが、New York Timesの報道によれば、テキサス州教育委員会の攻防では、もろに創造論が前面に出ている。
In Texas, evolution foes do not have to win over the entire Legislature, only a majority of the education board; they are one vote away.インテリジェントデザインなどという意味不明のものなど教える気はない。すなおに創造論を教えたがっている。
テキサス州では、進化論の敵対者は州議会全体を説得する必要はない。州教育委員会の過半数あればいい。そしてその差は1票である。
Dr. McLeroy, the board chairman, sees the debate as being between “two systems of science.”
“You’ve got a creationist system and a naturalist system,” he said.
州教育委員長のDr. McLeroyは、この論争を2つの科学体系の戦いとみている。「それは創造論体系と自然主義体系である」とDr. McLeroyは言う。
Dr. McLeroy believes that Earth’s appearance is a recent geologic event -- thousands of years old, not 4.5 billion. “I believe a lot of incredible things,” he said, “The most incredible thing I believe is the Christmas story. That little baby born in the manger was the god that created the universe.”
Dr. McLeroyは地球の外見が、45億年ではなく数千年という最近の地質学現象だと信じている。「私はもっと多くの驚くべきことを信じている。もっとも驚くべきことはクリスマスの物語だ。まぐさ桶で生まれた小さい赤ちゃんは、宇宙を創造した神だった。」
But Dr. McLeroy says his rejection of evolution -- “I just don’t think it’s true or it’s ever happened” -- is not based on religious grounds. Courts have clearly ruled that teachings of faith are not allowed in a science classroom, but when he considers the case for evolution, Dr. McLeroy said, “it’s just not there.”
しかし、Dr. McLeroyは「進化が真実だとか、起きたとは考えない」という進化論拒否が宗教に基づくものではないと言う。法廷は明らかに信仰を理科の授業で教えてはならないと判決した。しかし、Dr. McLeroyは進化論について考えるなら、これにはあたらないと言う。
“My personal religious beliefs are going to make no difference in how well our students are going to learn science,” he said.
「私の個人的宗教信条は、我々の生徒たちが科学をどう学ぶかに影響しない」
[Laura Beil: "Opponents of Evolution Adopting a New Strategy" (2008/06/04) on New York Times (copy)
via Dispatch from The Culture War]
もはや、インテリジェントデザイン運動にインテリジェントデザイン理論は不要なのだろう。