2008/06/23

有進論的進化を論じて、フロントローディングを許容してしまうUncommon DescnetのThomas Cudworth

有神論的進化論とは以下のようなポジションを指し、自然科学と両立する。ただし、人によって主張には差異がある:

  • 神は存在する
  • 神は、知的生命が存在できるような物理定数を定めて、140億年前に宇宙を創造した。
  • 地球は45億年前に、神がつくったプロセスに従って、生まれた。
  • 小進化は事実
  • 大進化は、すべての生物は進化過程(ネオダーウィニズムを含む)により出現できるように神が定数や自然法則を定めたことによる。進化は神が人間を創るために使った。
このポジションを、インテリジェントデザイン運動は非常に嫌っている。

あらためて、その理由を、インテリジェントデザイン理論家Dr. William Dembskiと仲間たちのブログUncommon DescentThomas Cudworthが書いた
This has a theological consequence. If evolution is out of God’s control, it is incompatible with the notion of providence – the notion that God provides for the future needs of the earth and its inhabitants. God can hardly, for example, provide for the need of Hagar in the desert, if he can’t even guarantee that the human race, of which Hagar is a member, will ever emerge from the primordial seas. (The radical contingency of the Darwinian mechanism is captured well by Darwinist Stephen Jay Gould, when he wrote that if the tape of evolution were rewound and played again, the results would be entirely different. Once God sets a truly Darwinian process in motion, he has no control over whether it will produce Adam and Eve, a race of pointy-eared Vulcans, or just an ocean full of bacteria.)

これには神学的帰結がある。進化が神の制御のもとにないなら、神が地球とその上の居住者のために将来必要なものを与えるという、摂理の概念とは相いれない。たとえば、神はハガル[創世記16章: Abrahamとの間にIshmaelをもうけた女性]が構成員である人類が原始の海から出現することすら保証できないので、ハガルが砂漠で必要とするものを準備できない。(ダーウィンのメカニズムの根源的な偶発性はダーウィニストSteven J. Gouldによてうまく表現されている。彼は進化のテープが巻き戻されて、再生されるなら、結果はまったく違うものになるだろうと書いている。神がひとたびAdamとEveを生み出す過程を起動したら、AdamとEveが生み出されるか、尖った耳のバルカン人が生み出されるのか、あるいは細菌に満ちた海が生み出されるのか、神は制御できない。)

A non-providential God is clearly not an orthodox Christian God, and it therefore appears that theistic evolutionism generates heretical Christianity. As I see it, the only way for theistic evolutionists to escape this consequence is to argue that mutations seem like chance events from the human perspective, but from God’s perspective are foreordained. But in that case, “evolution” is really just the actualization of a foreseen design over a very long time frame; the “purely natural causes” spoken of by the TEs are really just the unrecognized fingertips of the very long arm of God. This view, which we might call “apparent Darwinism,” fails to get God out of the process of natural causation, which was (as Cornelius Hunter has argued) Darwinism’s historical raison d’être.

摂理なき神は明らかに正統的キリスト教の神ではない。したがって、有神論的進化論は異端的キリスト教を生み出すようだ。私の見たところ、有神論的進化論がこの帰結を逃れるには、人類から見ると突然変異は偶然に見えるが、神の視点からは定められた運命と論じるしかない。しかし、この場合は、「進化」はまさに、はるかな時間フレームの中で予め予定されたものを現実化するものになる。有神論的進化論者が「純自然原因」というとき、それは神の長き腕の見えない指先を意味する。我々が「見かけのダーウィニズム」とでも呼ぶべき、この見方は、(Cornelius Hunterが言うところの)歴史的レゾンデートルたる「自然の因果律から神を排除」を実現できていない。

Thomas Cudworth: "Theistic Evolutionists, Your Position Is Incoherent — But We Can Help You!" (2008/06/21) on Uncommon Descent]
Thomas Cudworthの主張は神学についてはそれらしいが、有神論的進化論の意義として「自然の因果律から神を排除」を述べたところで、おそらく意図的に間違えている。

有神論的進化論とインテリジェントデザインを分かつのは、フロントローディング(Front loading)と介入(Intervention)である。超越的が、自然法則と初期値という形で宇宙(あるいはインフレーション宇宙の群れでも、高エネルギーの真空でもいけど)を実装しているのか、それとも宇宙誕生後に超自然的に宇宙へ介入したかである。そして、有神論的進化論は、「因果律から神を排除」するのではなく「神の介入を排除」する。

あまり正確ではないが、あえて言うと、この世界がモンテカルロシミュレーションとするなら、

  • この世界は、ある乱数系列のもとでは人類は出現するようになっているというのが有神論的進化論。
  • この世界は、乱数系列をどう選択しても人類は登場しないので、「デバッガをアタッチして、変数の値を書き換える」のがインテリジェントデザイン。

これをあいまいにしたまま論を進めるThomas Cudworthは、インテリジェントデザインを意味のない主張に変えてしまう。Thomas Cudworthは有神論的進化論者に対して:
You can keep evolution (understood as common descent) and all its evidences, including the fossil record, Darwin’s arguments about biogeographical distribution, and a 4.5-billion-year-old earth. We don’t even ask you to pledge allegiance to intelligent design; we just ask you to abandon your a priori prejudice that design in nature can’t possibly be detectable, and to join us in investigating the question.

共通祖先として理解される進化論と、化石やダーウィンによる生物学的地理分布や45億年の地球などを含む証拠全てをそのまま維持できる。インテリジェントデザインを認める必要すらない。自然界にあるデザインが検出不可能だという偏見を捨てて、この問の探求に加わってほしい。

[Thomas Cudworth: "Theistic Evolutionists, Your Position Is Incoherent — But We Can Help You!" (2008/06/21) on Uncommon Descent]
Thomas Cudworthは、フロントローディング(Front loading)と介入(Intervention)を判別すること、すなわち生物および生物器官はデザインのように見えるが、それが誰かが直接実装したのか、進化過程によって出現したかの議論を棚上げしようとしている。

それを棚上げしたら、インテリジェントデザインの主張は何も残らない。インテリジェントデザイン運動が好んで使う「進化論はunguided, undirected, purposelss」という論点を棚上げしたことになるからだ。
タグ:UCD
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2008/02/22

同じ反進化論記事の転載を続ける数学者Granville Sewell

2007年09月23日に取り上げた、反進化論なポエムを書く数学者Granville Sewell教授。

==>ふたたび数学者Sewellがポエムな反進化を語る (2007/09/23) on 忘却からの帰還

これの元ネタは:
==>Granville Sewell: "My Failed Simulation" on Granville Sewell' Page on University of Texas El Paso
で、これはUncommon Descentに転載されている。
==>Granville Sewell: "My Failed Simulation" (2007/09/22) on Uncommon Descent

あれから半年近くが経過した2008年2月15日に、Granville Sewell先生は、こんどは保守系な雑誌Human Eventsに転載した[via Uncommon Descent]。

==>Granville Sewell: "Failed Simulation on Creation (2008/02/15) on Human Events

Granville Sewell先生自らUncommon Descentに書いた転載お知らせによれば、ちょと変更あり:

  • タイトルに"on Creation"追加。ただし、これは編集部によるもので、先生のお好みではない
  • "friend"の前に"imaginary"をつけて、架空の話であることを明記


Human Eventsには幾つかコメントが付いていた。Uncommon Descentと違って、敵対コメントは削除されないので、こんなのも:
This is an incredibly weak, verging on pedantic, assault on natural selection. To start with, there is *no way* a computer, unless it was powerful enough to draw the scrutiny of the Pentagon, the CIA, and the Secret Army of Microsoft, could handle all the variables involved in a simulation as hugely ambitious as this one.

これは、自然選択に対する、信じれれないくらい弱い、衒学な攻撃だ。そもそも、ペンタゴンとCIAとMicorosfot秘密部隊の詳細な調査を招くようなコンピュータでないと、こんな壮大に野心的なシミュレーションの全変数を扱えない。

The premise of this article is laughable. Try some real science and get back to us.
この記事の前提はアフォすぎる。顔を洗って出直して来い。

Donovan, Washington, DCFeb 15, 2008 @ 03:16 AM


My deepest apologies. In my previous post I referred to the methodology of this article as "pedantic". I retract that statement. The word I meant to use was "pedomorphic".

深く謝罪。さっきのコメントで、この記事の方法論について「pedantic(衒学的・学者ぶる)」と書いた。その表現を撤回する。使おうとした単語は「pedomorphic(少年の特徴が大人になっても残っている)」だった。

Donovan, Washington, DCFeb 15, 2008 @ 03:36 AM

タグ:UCD id理論
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2008/02/12

ブーメランなDembski

インテリジェントデザイン理論家Dr. William Dembskiが、仲間たちとのブログUncommon Descentで、何故か、万能理論"形態場"を唱えるDr. Rupert Sheldrakeの記述を引用した。

これについて、Panda's ThumbのPvMがツッコミを入れている:
Dembski, somewhat ironically, quotes from January 13th 2008 - Sheldrake exposes Dawkins as a fundamentalist pseudoskeptic which references a blog article by Rupert Sheldrake

Dembskiが、Rupert Sheldrakeのブログ記事を参照した記事を皮肉にも引用している。
Dawkins has of course every right to promote his religious views- in this case, the religious views of atheistic materialism, which considers evidence for presumably transcendental phenomena a mortal threat to its belief system. However, when Dawkins and people like him promote their views in the name of science, they commit labeling fraud. Dawkins may be a scientist by trade, but when he acts and argues as a fundamentalist believer in materialism, ignoring evidence that challenges his belief system, then he commands no more credibility and scientific authority than any other kind of religious believer.

Dawkinsには、もちろん、超自然現象の証拠と思われるものは、Dawkinの宗教信念に破滅的脅威を与えるものと考えるという、無神論の唯物論という宗教的観点を推進する権利がある。
しかし、Dawkinsたちが自らの見方を科学の名のもとに宣伝するなら、詐欺になるだろう、Dawkinsの職業は科学者だろうが、彼は唯物論の原理主義的信者として、振る舞い論じ、彼の信仰に反する証拠を無視するとき、彼はもはやいかなる宗教信者以上に、信憑性も科学的権威もない。


....

I doubt if Dembski appreciated the double edge sword.
おっとブーメラン。

[PvM:"The double edge sword" (2008/02/06) on Panda's Thumb]
みごとなブーメランな記述を引用するDembskiである。

そして、もうひとつの皮肉は、引用元の執筆者であるSheldrakeの万能理論"形態場"が、まさに万能理論であるが故に、インテリジェントデザイン理論の代替理論にもなっていること。「空間距離に依存せずの情報を伝達する」という「万能な場」である形態場が、多宇宙に働けば、どんな現象だった説明してしまう。無数の宇宙の間で、「進化の成果」を交換できれば、突如として、「進化の隙間」を超えた生物が出現するのも当然。そして、その証拠は、インテリジェントデザインとまったく同一、すなわち「進化論で説明できないものは、多宇宙形態場のせいだ」。

タグ:id理論 UCD Dembski
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2008/02/07

デザインチャレンジに対するUncommon Descentのアフォな反応

2月4日のエントリで取り上げた「Ian Musgrave出題のデザインの検出」

==>Ian Musgrave: "Take the Intelligent Design Challenge!" (2008/01/31) on Panda's Thumb

について、インテリジェントデザイン理論家Dr. William Dembskiと仲間たちのブログUncommon DescentのDaveScotが反応をした。

==>DaveScot:"“Intelligent Design Challenge” Challenge" (2008/02/01 03:18) on Uncommon Descent

The sequences provided code for 80 amino acids. That’s almost certainly not a whole protein and not enough information to determine design/non-design. Indeed, none of the six sequences begin with a start codon

シーケンスは80アミノ酸である。ほぼ確実に、タンパク質全体ではないし、デザインか否かを判断するには十分な情報ではない。実際、6つのシーケンスはスタートコドンから始まっていない。
十分な情報じゃないというDaveScotの記事は2/1 03:18付けである。DaveScot

タイムゾーンにもよるが、Panda's ThumbのコメンタたちがBLASTを起動して、結果を出して、コメントしたのが、それから3時間後くらい:

http://pandasthumb.org/archives/2008/01/take-the-intell.html#comment-141753
Comment #141753 on February 1, 2008 6:36 AM

http://pandasthumb.org/archives/2008/01/take-the-intell.html#comment-141757
Comment #141757 on February 1, 2008 7:05 AM

人間によるデザインか否かの答えはあっさり出ていた。DaveScotはバイオ系ではないようで、BLASTとか知らなかったみたいだ。

そして、「デザイン」とは何かを語ってくれる。いかに役に立たない概念であるかを明瞭に示す形で:
We’d compare the suspect gene to a full genome sequence of the closest relatives we could find in the genome database. We’d then take the closest matching gene, apply the principles Mike Behe described in “The Edge of Evolution”, and from the sequence deviations find if the suspect gene goes beyond the edge of evolution or not.

我々は、判定対象のゲノムを、ゲノムデータベースにある最近縁の生物のゲノムシーケンス全体と比較する。もっとも近縁だとマッチしたゲノムに対して、Michael Beheの"The Edge of Evolution"に書かれた基準を適用し、The Edge of Evolution(進化の限界)を超えているか判定する。

Determining the functionality of a gene from its sequence isn’t within the scope of ID so that’s a red herring.

シーケンスからゲノムの機能を判定することは、インテリジェントデザインの対象外である。それができないことはインテリジェントデザインの欠点ではない。
普通に解釈すると「BLASTで類似品が見つからなかったらデザインだ」ってとこかな。

有意味なことのいえないDaveScotだが、コメント欄はもう少し面白い。
14 dgosse 02/01/2008 5:26 pm

It occurs to me that DNA is one of the “irreducably complex” artifacts that are evidence of design. It sounds to me as if Mr. Musgrave is challenging you to detect a 2nd level of design hidden in the (obvious) design of DNA.

DNAは還元不可能に複雑な被造物であってデザインの証拠だと思う。Musgraveの挑戦は、明確なデザインであるDNAに隠れたレベル2のデザインを検出しようというものである。

Certainly it is his opinion that the 2nd level information that was inserted by an intelligent agent is indistiguishable from the 1st level information allegedly inserted by random chemical events.

インテリジェントエージェントによって挿入されたレベル2情報は、ランダムな化学現象で挿入されたと主張されるレベル1情報と区別がつかないというのが、彼の意見。
Ian Musgraveの仕掛けに見事にはまったコメント。インテリジェントデザイン理論では、インテリジェントデザイナーによる生物デザインと人間によるデザインは識別できないと言っている。すなわち、インテリジェントデザイン理論的にはIan Musgrageの出題に対する答えは「全部デザイン」になる。

タグ:id理論 UCD
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2008/02/06

エントリ削除で「論争を教えたくない」ことを示したUncommon Descent

Panda's ThumbのPvMによれば、インテリジェントデザイン理論家Dr. William Dembskiと仲間たちのブログUncommon Descentがまたエントリ削除した。

Google Cacheに残されたエントリ本体は:

http://www.uncommondescent.com/intelligent-design/dr-geoff-simmons-vs-pz-myers-debate-link-to-listen-to-it/

31 January 2008
Dr. Geoff Simmons vs PZ Myers Debate (link to listen to it)

DaveScot

Click here to listen live at 3PM Central Standard Time today: Dr. Geoff Simmons vs PZ Myers Debate
進化生物学のPZ Myers準教授とインテリジェントデザイン運動側(Discovery Instituteのフェロー)Dr.Geoff Simmonsのディベート番組紹介エントリで、番組についてのコメントがこれにつけられていた。

Panda's ThumbのPvMによれば、エントリ削除の理由は、「がっかり」なものだったから:
In a recent posting on Uncommon Descent, ID proponents showed their disappointment with Discovery Institute’s Senior Fellow Simmons performance in his much touted debate (
click to download MP3 file
) with PZ Myers. Soon thereafter, the link was deleted, showing how Intelligent Design is not truly interested in teaching the controversies, when said controversies make ID look foolish.

Uncommon Descentの最新ポストで、インテリジェントデザイン支持者は、Discovery InstituteのシニアフェローSimmonsの、PZ Myersとの対決でのパフォーマンスにがっかりだった。既にポストは削除されている。このことは、インテリジェントデザインがアホにみえるような論争を教えることに、インテリジェントデザイン運動が本当に興味がないことを示している。

Luckily the comments were saved by antievolution.org
ラッキーなことにコメントがここに残っている。

Some of the comments:


I’m with you bFast, I was disappointed by Dr. Simmons’ arguments and performance and think PZ easily won the debate.

Dr.Simmonsの論とパフォーマンスにはがっかりだ。PZ は簡単に勝ったと思う。

BTW, I’ve not listened to the debate yet…probably will. But, after reading this thread, it appears that I can look forward to becoming phyically ill afterward.

まだディベートを聞いていないんだが... たぶん聞くかな。でも、このスレを読んだので、聞いた後で、肉体的に気分悪くなりそう。

“PZ mentions specific “intermediate” whale fossils, SIM is unaware of the names of the 5 to 10 transitionals that is claimed — shame! Frustrating ”

PZはクジラの中間化石に言及したが、SIMは5〜10の中間段階とされるものの名前を知らなかった。カッコワル。


[PvM: "Teach the controversy? Or when ID expells… A case of missing links" (2008/02/01) on Panda's Thumb]
以上のコメントは確かにGoogle Cacheにも残されている。

コメント欄はその後、自発的雪辱戦な状況になっていたのだが、それでは不十分だったのか、そもそも惨敗がいやだったのか、エントリ削除となっている。

でも、削除したところで、「"Teach the controversy"(進化論についての論争も教えろ)と主張するインテリジェントデザイン運動だが、その論争にはインテリジェントデザインの惨敗は含まれない」ことを示す証拠になってしまうことになる。負けよりも問題なのだが、そんなことはインテリジェントデザイン運動は気にしないようだ。



タグ:id理論 UCD
posted by Kumicit at 2008/02/06 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | Dembski | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする