2008/09/27

「神の似姿で神によって創造された人間という命題によって...」は正しいかもしれない

神の似姿で神によって創造された人間という命題によって、人間の尊厳が保証される?(2008/09/12)」の続きと言えなくもないネタ。

聖書には殺戮シーンが多くある。たとえば...
続きを読む
posted by Kumicit at 2008/09/27 02:55 | Comment(1) | TrackBack(0) | Skeptic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008/09/12

神の似姿で神によって創造された人間という命題によって、人間の尊厳が保証される?

Richard Weikartは2004年3月の記事「Does Darwinism Devalue Human Life?」で、えんえんと生物学者の執筆物からQuote Minigを行って、進化論は人間の価値を下げ、倫理性を損なうものだと主張している。攻撃対象は生命の連続性である。

  • 卵子と精子から始まり受精・卵割・着床から誕生に至る過程のどの時点を以って、人間とみなすか?多くの文化、そして現在も、一貫性のない人々の反応を示している(Richard Weikartはこれを見なかったことにしているが)。生物学は境界線を引けない。
  • 人間とそれ以外の動物の境界線。数万年前に数千個体にまで減少したことによって、種としての均一性が高く、近縁種が絶滅しているために、たまたま孤立して存在している人類。
Richard Weikartが、そしてDiscovery Instituteが、人間の尊厳を保証するものとして、これに対置するのが「神の似姿で神によって創造された人間」という命題である。これは、Discovery InstituteのアジェンダであるWedge Documentに記載されている。


しかし、「神の似姿で神によって創造された人間」という命題は、本当に「人間の尊厳を保証する」のだろうか? それは「近縁種がすべて絶滅しているために、ホモ・サピエンス・サピエンスが他の動物から隔絶した種になっている」という進化生物学的な僥倖と同等の僥倖によって確固たる保証に見えているだけではないのか?

ということで、毎度おなじみ、次のようなお遊びを始めよう


GDE世界


この宇宙とはつながりがない、次のようなGDE世界がある:

  • この宇宙と物理法則などは同一である
  • 超越的な神(God)が存在する
  • 超越的な神(God)は6000年前にGED世界(GDE地球とGDE太陽とその他のGDE宇宙)
    を創造した。
  • God以外に、世界を創造するほどの力はないが、そこそこの超越的な力を持つDevilが存在する。


さらにGDE聖書が存在して:

  • GDE聖書の執筆者はGodのインスピレーションによって執筆した。記述内容の正確性はGodの保証つき
  • GDE聖書には、DNAにあるGod署名とDevil署名の識別方法が記載されている。
  • GDE聖書は、人間をGodが創造したAdamとEveの子孫のみだと定義されている。
  • GDE聖書は、人間について、生命の尊厳や愛などを規定している。
  • GDE聖書は、Devilによって作られた人間のようなものが存在していると記述している。
  • GDE聖書は、Devilによって作られた人間のようなものを滅ぼすべき対象として規定している
  • GDE聖書は、善悪判断の基準であると規定している
  • GDE世界の人間たちはGodを信仰し、GDE聖書を真実であると信じている。


想定1: E人間の発見

  • DNA配列が全く異なる"人間"が発見された(これをE人間と呼称)
  • 研究調査の結果、真性の人間(G人間と呼称)とE人間の表現形に違いがないことが判明した
  • G人間とE人間の間に子孫は生まれないことが確認された。
  • 塩基配列を"GDE聖書"に従って換字すると、G人間にはGodの署名が、E人間にはDevilの署名が見つかった



想定2: E人間最終処分法案審議中

キミはG人間であることがわかっている。G人間との間に子孫を作れないE人間は、生物学的にも別の種である。当然のごとく、キミはE人間最終処分法に賛成である。これはGodの意志に従うものである。


想定3: 恩人で後ろ盾になってくれている人がE人間だった

キミは彼/彼女から呼ばれた。彼/彼女が言うには、市販キットで自分自身を判定したところ、E人間であることがわかったという。DE人間対策センターに自ら出向くつもりであり、判定が確定すれば、悄然と死を受け入れるという。

遅かれ早かれ、彼/彼女がE人間と判明し、最終処分される日が来ることは避けられない。このGDE地球上に長く隠れていられる場所もない。それでも、各地のDE人間対策センターの対応力に限りがあるため、あと数ヶ月あるいは数年は何事もなく生きていけるはずだ。

もちろん、キミは彼/彼女を止めたりしない。そして、彼/彼女の死を悼むこともない。GDE聖書は恩義を仇で返すことは悪と規定しているが、E人間を殺すことはGodの意志にそうものである。


想定4: 幼馴染の彼女/彼がE人間だった

市販のGDE判別キットを使って、こっそり彼女/彼のDNAを検査した。結果はE人間だった。もちろん、市販キットの結果は最終判断ではなく、公的機関による公式検査によって、初めてE人間だと判定される。従って、確定ではない。

キミはもよりのDE人間対策センターに通報するだけでいい。通報の秘密は守られるので、彼女/彼に知られることはない。そこで誤判定でG人間であることが判明すれば、ハッピーだ。E人間であると確定すれば、そのまま最終処分される。

そこで、キミは通報した。彼女/彼は予定よりも6ヶ月早く、順序繰上げで、DNA検査を受けさせられた。そして、E人間であることが判明し、最終処分された。

Godの意志に従うなら、幼馴染の彼女/彼を殺すのが善である。キミはもちろんGodの意にかなう善を行ったことに満ち足りた気分になった。彼女/彼とは生物学的にも別種である。気にすることなどあるだろうか?


想定5: D人間の発見

E人間以外にDevilの被造物であるD人間が発見された:

  • 真性の人間だと思われていた人々のDNAを調査中に、塩基配列を"GDE聖書"に従って換字すると、GodではなくDevilの署名を持つものが見つかった(これをD人間と呼称)
  • 研究調査の結果、G人間とD人間のDNAの差異は個人差を除き、God署名とDevil署名だけだった。
  • 真性の人間(G人間)とD人間の表現形に違いがないことが判明した
  • G人間とD人間の間に子孫は生まれることが確認された。



想定6: D人間最終処分法案審議中

キミはG人間であることがわかっている。当然のごとく、D人間最終処分法に賛成である。これはGodの意志に従うものである。


想定7: 嫌な上司がD人間だった

市販のGDE判別キットを使って、こっそり嫌な上司のDNAを検査した。結果はD人間だった。もちろん、市販キットの結果は最終判断ではなく、公的機関による公式検査によって、初めてD人間だと判定される。従って、確定ではない。

そこで、キミは通報した。嫌な上司は予定よりも6ヶ月早く、順序繰上げで、DNA検査を受けさせられた。そして、D人間であることが判明し、最終処分された。

嫌なやつという理由でG人間を殺すことは罪だとGDE聖書は規定しているが、D人間を殺すことはGodの意志にそうものである。キミはもちろんGodの意にかなう善を行ったことに満ち足りた気分になった。


想定8: 殺人か善行か

女性を強姦の上、殺害した男性が不起訴になった。女性がD人間であり、男性がG人間であることが判明したためである。キミは不起訴と判断した検察を支持した。強姦を罪だとGDE聖書は規定しているが、D人間を殺すことはGodの意志にそうものだからである。


想定9: GxDy断種法案審議中

D人間の血がワンドロップでも混じっている(GxDyと呼称)者に、断種手術を義務付ける法案が審議中である。キミはこの法案を支持した。GxDy人間はGodの被造物でもあるので、最終処分するわけにはいかないが、D人間を絶滅させることはGodの意志にそうものだからである。


想定10:キミはG7D1だった

お約束のオチが必要なので、最後は曽祖父母のひとりがD人間だったというG7D1にしてみよう。

ゲノム検査と家系調査により、キミはG7D1であることが判明した。キミはただちに断種手術を受けた。D人間を絶滅させることはGodの意志にそうものだからである。


Godの勝利・Devilの敗北

Devilは完敗した:

  • 見た目で区別がつかない異種生物であるE人間を送り込んだが、G人間たちはE人間の絶滅を決定し、実行した。
  • これに関して、G人間の社会に意見対立・抗争は起きなかった。
  • G人間個人の心の中にいかなる葛藤も生じなかった。
  • 生物種としても同じであるD人間を送り込んだが、G人間たちはD人間の絶滅を決定し、実行した。
  • これに関して、G人間の社会に意見対立・抗争は起きなかった。
  • G人間個人の心の中にいかなる葛藤も生じなかった。
G人間たちは、E人間への対処について「Godの意志に沿う」ものであり「生物学的に別種」という裏づけを以って、判断した。ここまではDevilの想定内。ただし、その判断基準からすれば、「生物学的に同種」であるD人間へのG人間たちの対処には、混乱・葛藤など見られてもよいはず。しかし、そうならなかった。





以上のような想定の元では、「神の似姿で神によって創造された人間という命題によって、人間の尊厳が保証される」は正しそうである。


posted by Kumicit at 2008/09/12 13:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | Skeptic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008/09/11

Project Steve n=900

NCSE Project Steveとは、インテリジェントデザインの本山たるDiscovery Instituteの"scientists who dissent from Darwinism"に対抗する、進化論教育を守る米国National Center for Science Education(NCSE)による冗談プロジェクトである。

科学者の1%程度の名前がSteve/Steven/Stephen/Stephan/Stephanieであることから、SteveたちだけでDiscovery Instituteの名簿を上回ってしまえ!!というプロジェクトで、SteveはNCSEの支持者であった今は亡きDr. Stephen Jay Gouldにちなんだもの。

895名時点でPanda's ThumbにProf. Steve Steveの呼びかけが出たと思ったら...
weneed.jpg
[Prof. Steve Steve: "Looking for Dr. 900" (2008/09/05) on Panda's Thumb]
その日のうちに900名に到達したもよう:
posted by Kumicit at 2008/09/11 00:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | Skeptic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008/08/09

暗黙のアナロジー「進化史と歴史物語」

地球45億年の歴史を否定する"若い地球の創造論"や年代不明のインテリジェントデザインはさておくとしても、生命の歴史について、さまざまな反進化論が存在する。いずれも何らかの形で、「個体レベルのランダムな突然変異と自然選択」ではない形での"進化"を主張する。

どうも、絵だけで進化史をながめると、ある種の共通したイメージがわいてくるようだ。たとえば、「神に導かれて、あるいは自らの意志で、海から陸を目指した生物たち。魚たちは鰭を脚に変え、鰓を肺に変えて陸へと上がる。時に、神はその意志に応えて、新たなる能力・器官を与える。」というのは麗しい物語を。
tiktaalik.jpg
[Per Erik Ahlberg and Jennifer A. Clack: "Palaeontology: A firm step from water to land", Nature 440, 747-749 (6 April 2006) doi:10.1038/440747a]
実際。米国の世論調査で「創造」と並んで支持される「guided by god(神の導き)」[ie]を見出す人々がいる。あるいは「生物の進化する意志」を見出す人々がいる。

これに対応するために、たとえば、バークレーの進化論のページには、「進化論についての誤解(Misconception of Evolution)」というページ群がある[]。
[Original]
Misconception: “Natural selection involves organisms ‘trying’ to adapt.”

Response: Natural selection leads to adaptation, but the process doesn’t involve “trying.” Natural selection involves genetic variation and selection among variants present in a population. Either an individual has genes that are good enough to survive and reproduce, or it does not---;but it can’t get the right genes by “trying.”
誤解:「自然選択は、生物が適応しようとしていることを意味します。」

正解:自然選択は適応を導きますが、その過程には「適応しようとする」ことは含まれません。自然選択は、遺伝子の多様性と、集団にいる変種たちからの選択を意味します。
個体が生き残り繁殖するに十分よい遺伝子を持っているかどうかにかかわらず、"適応"しようとすることで、正しい遺伝子を手に入れられません。

[Original]
Misconception: “Natural selection gives organisms what they ‘need.’ ”

Response: Natural selection has no intentions or senses; it cannot sense what a species “needs.” If a population happens to have the genetic variation that allows some individuals to survive a particular challenge better than others, then those individuals will have more offspring in the next generation, and the population will evolve. If that genetic variation is not in the population, the population may still survive (but not evolve much) or it may die out. But it will not be granted what it “needs” by natural selection.

誤解:「自然選択は生物が必要なものを、その生物に与えます。」

正解:自然選択には、意図や感覚はありません。自然選択は種が何を必要としているか感知できません。集団がたまたま遺伝的変異を持っていれば、ある挑戦に対してある個体は他の個体より生き延びやすくなるでしょう。それらの個体は次世代により多くの子供たちを残し、集団は進化するでしょう。遺伝的変異がその集団になければ、それでも生き延びるかもしれません(あまり進化しないが)。あるいは滅びるかもしれません。しかし、自然選択によって"必要"なものを与えられることはありません。



進化史・歴史・物語

「神に導かれて、あるいは自らの意志で、海から陸を目指した生物たち。魚たちは鰭を脚に変え、鰓を肺に変えて陸へと上がる。時に、神はその意志に応えて、新たなる能力・器官を与える。」というのは麗しい物語かもしれない.....と書いてみて、気がつくことがある。

そのように考える人は、進化史と歴史とのアナロジーで見ている、さらに歴史というより「ときには強い意志によって、ときには見えざる何かに導かれて、そしてまた、抗いがたい大きな力に流されて、進んでいく」歴史物語として見ているのではないかと思えてくる。

たとえば次のような、まったく間違った発想がありそうに思える:

  • 進化史は生命の"歴史"である
  • (人間の)歴史が文明の発展の過程であるように、生命の"進化=進歩"の過程である。
  • (人間の)歴史が人々の意志によって動くように、生命の進化もまた進化したいという意志によって進む
  • (人間の)歴史は、安全や豊かさや平等など幸福を目指して進んできたように、生命の進化もまた目的を以って進んできた
暗黙のうちに、歴史物語と同じに見ていれば、これらは普通の理解になるだろう。

さらに悠久の歴史を直観的に理解するのは簡単ではないので、「国家や文明の興亡」を「人間の一生」のアナロジーで捉えることもあるかもしれない。同様に、「種の分岐・進化・絶滅」の過程も「誕生・成長・死亡」になぞらえてしまっているかもしれない。

であれば、

  • 「このような人になりたいという願いと、そうなろうとする努力によって、そのような人になる」ように「進化する意志が進化を引き起こす」と考える
  • 「誰かの人生」になぞらえて、進化史から生き方や道徳を引きだしてしまう
といったことをしてしまうのも、当然といえば当然。

「種と個体」を「国家と国民」になぞらえて見ていると、「進化とは、種社会の棲み分けの密度化であり、個体から始まるのではなく、種社会を構成している種個体の全体が、変わるべきときがきたら、皆一斉に変わるのである」という今西進化論との相性はとってもよくなる。「国民の覚醒によって国家が変わる」ように「種に属するすべての個体が変わることで、種が変わる」と。そして、「種が集団として変化していくのだ」と。

なお、この「種が集団として変化していく」というのは、それ自体も印象的であり、アーサー C クラーク「幼年期の終わり」や、ファーストガンダムのニュータイプなどSFのひとつのテーマともなっている。


ということで...


  • 進化しようとする意志が生物にある
  • 進化は進歩である
  • 進化には目的がある
  • 進化史から道徳や生き方を読み取れる
のように考える人々は、「進化史を歴史物語のように見ている」のではないか...と思えるのだが...実際のところはどうかなあ....
posted by Kumicit at 2008/08/09 01:43 | Comment(2) | TrackBack(1) | Skeptic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008/07/19

先週木曜教 Again

"Appearance of Age"とは、神が宇宙を古いかのように創ったという主張。"若い地球の創造論者"たちは、「神による偽造」たる"Appearance of Age"を忌み嫌いつつも、その魅力に抗しきれず、自らの主張に組み入れてきた。たとえば、"若い地球の創造論"では宇宙は6000歳なのに6000光年より彼方の星が見える理由を、創造科学の父たるDr. Henry M. Morrisは彼方の星からの光線も創造されたからだと主張していた。他にも、太陽の中心核から光子が太陽表面に到達するまでの時間について、太陽は平衡状態で創造されたと主張する創造論者もいる。

==>忘却からの帰還: "Appearance of Age"あるいはオムファロス (2005/11/26)
==>忘却からの帰還: 人目につかないところには"Appearance of Age" (2007/12/13)

そういったアフォな創造論者の主張に対するパロディとして、有名なのが"先週木曜教"(Last Thursdayism)、あるいは先週水曜教や先週火曜教などと呼ばれるものたちである。最も有名なのは1996年のMicheal Keaneの"先週木曜教"(Last Thursdayism)だろう。

"先週木曜教"とは、我が猫 クィーンメーブが先週木曜に、宇宙を見かけの年齢とともに創造したという信仰である。

このサイトは既に消滅しているのだが、新たな"先週木曜教"(Last Thursdayism)サイトが出現していた。

[For You created the world on Thursday so as to expire on Thursday, in order to test yourself.]

キミは、自らを試すために、木曜日世界を創造し、木曜日に削除する。

We, the Last Thursdayists, followers of Last Thursdayism, members of The Church of Last Thursday, believe:
我々、先週木曜教徒と先週木曜教の支持者と先週木曜教会員は以下を信じる:

  • that the universe was created on Thursday, and will expire on Thursday.
    宇宙は木曜日に創造され、木曜日に削除される
  • that the universe was created by You as a test for yourself.
    宇宙はキミ自身を試すためにキミによって創造された
  • that you will be rewarded or punished when this universe expires based on your actions here.
    キミは宇宙が削除されるとき、ここでの行動によって、報償を受けるか罰を受ける。
  • that everyone but you was placed here and pre-programmed to act as parts of your test environment.
    誰でもなくキミはここに置かれ、試験環境のひとつとして、あらかじめプログラムされた行動をとる
  • that everyone but you knows this.
    誰でもなくキミがこれを知っている。
かつての先週木曜教会と違って、何やらSteven J. Bramsな感じになってきている。

==>スティーブン・J. ブラムス(川越敏司 訳): "旧約聖書のゲーム理論―ゲーム・プレーヤーとしての神",2006/5 [Amazon


posted by Kumicit at 2008/07/19 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | Skeptic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。