2007/11/16

用語メモ

用語集

  • 説明(explanation)
    仮説・法則・理論などのこと。
  • 自然な説明(natural explanation)・自然主義的説明(naturalistic explanation)
    超越的な神のような超自然を含まない説明。
  • 自然な過程(natural process)・自然主義的過程(naturalistic process)
    超越的な神のような超自然が関与しない過程。
  • 方法論的自然主義(methodological naturalism)
    自然現象の説明に、超越的な神のような超自然を含めない。科学の原則。
  • 形而上学的自然主義(metaphysical naturalism)・機械論的唯物論(materialism)
    超越的な神のような超自然は存在しない。これは科学的に検証・反証できないため、形而上学に分類される。なお、これは方法論的自然主義と矛盾しない。
  • 形而上学的超自然主義(metaphysical supernaturalism)
    超越的な神のような超自然が存在する。これは科学的に検証・反証できないため、形而上学に分類される。なお、これは方法論的自然主義と矛盾しない。
  • 経験的に検証可能 empirically testable
    理論・仮説が実験・観察・観測結果を予測できて、実際の結果と比較して、検証できる
  • 経験的に反証可能 empirically fallsifable
    理論・仮説が実験・観察・観測結果を予測できて、実際の結果と比較して、反証できる



インテリジェントデザインの論法

  • God of the gaps
    これは進化論では説明できないので、デザインだ。
  • Argument from default
    進化論で説明されない限り、デザインだ。
  • Argument from ignorance
    これが進化した経路を思いつかないので、デザインだ。
  • Argument from incredulity
    これが進化したとは信じられないので、デザインだ。
  • Negative Argument
    これがデザインされた証拠は、これが進化論で説明できないこと。


インテリジェントデザイン理論の対象外項目

  • インテリジェントデザイナーの数
  • インテリジェントデザイナーの能力
  • インテリジェントデザイナーの目的
  • インテリジェントデザイナーの意図
  • インテリジェントデザイナーの性格
  • インテリジェントデザイナーのデザイン方法
  • インテリジェントデザイナーのデザインの自然界への配置方法
  • インテリジェントデザイナーのデザインの自然界への配置時期
  • 地球と生命の歴史(時系列)



インテリジェントデザイン理論用語

  • デザイン
    =意図的部品の配置
  • インテリジェンス
    =目的/方向性を持った選択能力
  • 複雑で指定された情報(CSI)
    =自然法則でも偶然でも説明がついていない意味ありげなもの
    =デザイン
  • 還元不可能な複雑さ
    =漸進進化では説明できていない生物/生物器官
    =デザイン
  • Dembskiの説明フィルタ
    =「自然法則でも偶然でも説明がついていない意味ありげなものはデザインだ」



神学用語

  • フロントローディング(Front Loading)
    世界創造時点での初期値や物理法則の形での実装。進化するように設定するとか。
  • 神の予見
    フロントローディングと同じ。
  • 神の介入(Intervention)
    世界創造後に、世界の物理法則の一時的あるいは恒久的改変、惑星軌道の修正、新種生物の持ち込みなどを行うこと。奇跡もこれに含まれる
タグ:id理論
posted by Kumicit at 2007/11/16 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID Introduction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007/10/04

放置されたインテリジェントデザイン文献倉庫にある用語の定義できなさ

最近では放置気味になっているインテリジェントデザイン文献倉庫ISCIDに、インテリジェントデザイン用語集がある。これを特に、「複雑さ」「指定」「デザイン」「デザイナー」「指定された複雑さ」を見ると、いかにインテリジェントデザインの用語定義がうまくいかないかが、よくわかる。

まずは複雑さから見ると:
Complexity 複雑さ

Complexity is one of those terms for which it is difficult to give a precise definition. Intuitively, it is thought of as a property or feature that implies the opposite of simplicity. Complexity is often used to describe single sytems made of multiple interacting parts. However, complexity descriptions can be used for a large variety of applications.

複雑さは正確に定義するのが困難な用語のひとつである。直感的には、単純さの反対を意味する特性と考えられる。複雑さは、複数の相互作用する部分から構成させる単一システムを描写するのに、よく使われる。しかし、複雑さという記述は、多種多様な適用に使える。
事実上、定義不可能だと言っている。通常の科学においても、複雑さの定義は、コルモゴロフ複雑性(Kolmogorov complexity)くらいしかない。

続いて、通常用語「意味ありげ」に相当する「指定(仕様)」を見ると:
Specification "指定"

A conditionally independent pattern that in the presence of complexity can be employed to draw a design inference.

デザイン推論を採るために、複雑さに見られる条件付き独立パターン
何も定義されていない。「意味ありげ」を定めることは、普通にむつかしいので、インテリジェントデザインで定義できなくても、特に不思議ではない。

「デザイン」はもはや定義できず、「デザイナー」の行動として解説されるのみ:
Design デザイン

A four-part process by which a designer forms a designed object: (1) A designer conceives a purpose or goal. (2) To accomplish that purpose, the designer forms a plan. (3) To execute the plan, the designer specifies building materials and assembly instructions. (4) The designer or some surrogate applies the assembly instructions to the building materials. What emerges is a designed object, and the designer is successful to the degree that the object fulfills the designer’s purpose.

デザイナーがデザイン物を形成するときに4つの段階を踏む。
(1) デザイナーは、目的あるいは到達点を考える。
(2) 目的を達成するために、デザイナーは計画を立てる。
(3) 計画を実行するために、デザイナーは、構成材料と組み立て方法を指示する。
(4) デザイナーもしくは代行者が、組み立て方法を構成材料に適用する。
これにより出現するのがデザイン物であり、デザイナーは、物がデザイナーの目的に適う程度に成功する。
目的を持ったデザイナーの活動結果として定義するしか、方法がないようだ。

ところが、「デザイナー」の項を見ると、この「デザイン」の解説にある「目的を持ったデザイナー」と整合させようとして、変なことになっている。
Designer デザイナー

An intelligent agent that arranges material structures to accomplish a purpose. Whether this agent is personal or impersonal, conscious or unconscious, part of nature or beyond nature are live possibilities within the theory of intelligent design. In particular, the designer need not be a creator.

目的を達成するために物質構造を組み替えるインテリジェントエージェント。このエージェントが人格を持つか否か、意識があるか否か、自然界の一部なのか、自然を超越しているのか、インテリジェントデザインの範囲内では、どれも有効な可能性である。特にデザイナーが創造主である必要はない。
インテリジェントデザインの建前どおりに書くと、こうなるのだろう。しかし、意識も人格もないが目的だけを持っているという変なものが出てくる。自動設計マシンあたりならOKかもしれないが。

そして、これらを組み合わせて、インテリジェントデザイン理論の精髄?あるいは唯一の新概念たる"指定された複雑さ"の項目へ進む:
Specified Complexity 指定された複雑さ

Specified complexity is William Dembski's dual-pronged criterion for objectively detecting the effects of certain types of intelligent activity without first hand evidence of the cause of the event in question. Dembski's notion of specified complexity is a rigorous theoretical formulation of the everyday distinction we make between natural events (i.e. natural death, naturally occuring rock formations) and events with intelligent causes (i.e. murder, Mount Rushmore).

"指定された複雑さ"は、問題とする現象の原因についての直接の証拠なしに、特定の型のインテリジェントな活動の効果を客観的に検出するための、William Dembskiの判別基準である。Dembskiの"指定された複雑さ"の概念は、自然現象(自然死や自然に形成された岩)とインテリジェントな原因による現象(殺人やMount Rushmore)を日常的な区別の厳密な理論的公式化である。

Specified complexity consists of two important components, both of which are essential for making reliable design inferences. The first component is the criterion of complexity or improbability. In order for an event to meet the standards of Dembski's theoretical notion of specified complexity, the probability of its happening must be lower than the Universal Probability Bound which Dembski sets at one chance in 10^150 possibilities.

"指定された複雑さ"は、信頼しうるデザイン推論のために不可欠な2つの重要な要素から構成される。第1の要素は、"複雑さ"あるいは"ありえなさ"の基準である。"指定された複雑さ"の理論的な概念のDembskiの基準に合致するには、その現象が起きる確率が、Dembskiが設定した1/10150の確率境界を下回らなければならない。

The second component in the notion of specified complexity is the criterion of specificity. The idea behind specificity is that not only must an event be unlikely (complex), it must also conform to an independently given, detachable pattern. Specification is like drawing a target on a wall and then shooting the arrow. Without the specification criterion, we'd be shooting the arrow and then drawing the target around it after the fact.

"指定された複雑さ"の第2の要素は、"指定"の基準である。"指定"の背後にある考えは、その現象があり得そうにない(複雑)であるだけでなく、独立に与えられた、分離可能なパターンと整合しなければならない。"指定"は壁に的を描いて、矢を射るようなものである。"指定"基準がなければ、我々は矢を射てから、的を描くことになる。

Criticisms of Dembski's notion of specified complexity often target the notion of specification. Critics argue that it is a subjective concept, highly dependent on the observer's background knowledge and therefore not reliable as a scientific criterion.

"指定された複雑さ"のDembskiの概念への批判は、しばしば"指定"の概念を標的にする。批判者は、それが主観的概念であり、観測者の背景知識に大きく依存し、従って科学的基準として信頼できないと論じる。

Additional criticisms include the following:
その他の批判論は次の通り:

  1. Too anthropocentric: it requires human-like intelligences
    人間中心的:人間のようなインテリジェンスを必要とする。
  2. Limited application: more easily applied to events for which we already know the causes
    適用限定:原因が分かっている現象についても、適用できてしまう
  3. Requires the elimination of all (known) random and lawlike causes
    (既知の)ランダムおよび法則性原因をすべて除外しなければならない。
  4. Determining probabilities of events involves incomplete knowledge of circumstances in which the event occurred
    現象の確率の決定が、現象が起きた環境について、不完全な知識を含んでいる。

Kumicitが批判を書くまでもなく、ちゃんと批判が書いてある。

ただし、根本的な論理のすり替えには言及していない。それは
  • Mount Rushmoreの大統領の顔と、自然の造形として顔みたいな岩は、見た目で、区別がつくだろう
  • しかし、あらゆる生物および生物器官は、すべてデザインに見えるはず。進化の産物なのか、デザイナーの産物かは、見た目からは区別不可能。
  • 区別の方法は、進化論で説明がつくか否か。
アナロジーである岩については「見た目」で、本来の研究対象たる生物(器官)については、「進化論で説明がつくか否か」で区別することになっている。すなわち、アナロジーが成立していないこと。

posted by Kumicit at 2007/10/04 00:01 | Comment(2) | TrackBack(0) | ID Introduction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007/08/23

インテリジェントデザイン運動がよく使う悪口用語

インテリジェントデザインの英語文献では必ず使われると言っていい単語たちがある。普通の英単語なんだけど、この手の業界用語なので、知らないと何だかわからなくなる。

ということで、ちょっと復習...

natural, naturalistic (自然の, 自然主義の)

"natural process"(自然の過程)とか、"natural explanation"(自然な説明)といった形で使われるのだが、慣れていないと、最もわけわからないかもしれない。

この場合の"natural"は"supernatural"(超自然の)と反対語。超自然には「超越的な神」とか「魂」とか「生気」(生物だけに働く力)とかが含まれる。普通は、「超越的な神」あるいは「超越的な神の、自然界への自然法則を無視した介入」といったことを意味する。

"natural"は従って、「超自然を除外する」と言った意味合いで使われる。"natural process"(自然の過程)とは、神様が直接関与していない過程であり、"natural explanation"(自然な説明)は、自然法則のみよる自然現象の記述といった意味を持つ。

これが何故、悪口になるかというと、「神様を除外している無神論」だから。


で、"naturalistic"(自然主義の)もほぼ同様。ただし、こっちは由緒正しい哲学用語"naturalism"(自然主義)の形容詞。本来は、metaphysical naturalism (形而上学的自然主義)とmethodological naturalism (方法論的自然主義)があるのだが、インテリジェントデザイン運動では、この2つを区別しない。

方法論的自然主義は「科学の説明は自然なものに限られる=超自然を召喚しない」というもの。形而上学的自然主義は「超自然は存在しない」という主張。

当然「神=超自然が存在しない無神論」という悪口。


material, materialistic (物質的, 唯物論的)

"material"(物質的)は、"natural"とほぼ同様に使われる。たとえば、"material process"だと、超越的な神や霊魂など"非物質的"なものは除外した過程。

"materialistic"(唯物論的)もほぼ同様。"materialism"とは形而上学的自然主義と同義で「超自然は存在しない」という考え方。

いずれも、超自然=神を除外したり、存在しないと主唱したりするので無神論と解釈される。


unguided (導かれない)
unintelligent (知性によらない)

米国の進化と創造についての世論調査で必ず出てくる選択肢が"Guided by God"である。具体的な意味は明確に定義されていないが、何らかの形で神様が関与していることを意味している。

この"Guided by God"の反対語が"unguided"である。これは、神がいないとまでは言わないが、「神が関与しない」ことを意味する。インテリジェントデザイン運動では、「自然界に介入しない神」なら、いないのと同じだから無神論に等しいと考える[ARN ID FAQ]。なので、"unguided"も悪口として使われる。

"unintelligent"も同様。"intelligent process"(知性が介在した過程)は、そのまま「神が介在した過程」なので、その逆は「神が介在しない過程」。


undirected (方向性のない)
blind (盲目の)
random (ランダムな)

軍拡競争で、ある方向に進化が進んでしまうこともあるので、必ずしも進化過程が行き当たりばったりというわけではない。にせよ、進化は偶然の積み重ねでもあり、人類が今の姿をしているのも偶然の産物でもあると思われる[ie ScienceDaily]。

「人類こそ到達点」とか「人類の登場は必然の結果」といった"事実"に基づいて、人類の存在意義・価値・尊厳を考える立場からすれば、"undirected"(方向性のない)などあってはならない。

逆にいえば、"undirected process"(方向性のない過程)は、「人類の存在意義・価値・尊厳」を否定するもの。それは、無条件に悪である。よって、"undirected"(方向性のない)は悪口になる。


"bind process"も"undirected process"と同義。"random"(ランダム)はちょっと違うはずだが、悪口として使われるときは同義。


purposeless (無目的)

「目的」は、機械仕掛けの宇宙を自然法則で記述する科学の取り扱い対象外。
よって、科学は「目的」に言及しない。これに対して...

「目的に言及しないのは、目的がないということだな。」
「人間の存在の目的がないとは何だ」...

まあ、インテリジェントデザイン運動はつまるところ、こんなもん。




以下、用例の出典
unguided, unplanned process of random variation and natural selection
[Luskin]

undirected, unguided natural causes
[ Pearcey, 2000]

unguided, unintelligent, purposeless, material processes such as natural selection acting on random variations or mutations
[Meyer & Keas]

coupling undirected, purposeless variation to the blind, uncaring process of natural selection
[DeWolf, West, & Luskin]

explain life in purely naturalistic and materialistic terms
[Taylor 2004}

the scientific establishment is requiring something else: "the best materialistic explanation for phenomenon
[Veith 2005]

Standing in the way is the materialistic definition of science inherited from the Victorian Age
[Richards 2005]
posted by Kumicit at 2007/08/23 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID Introduction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007/08/03

ひきつづき方法論的自然主義

wikipedia:Naturalism (philosophy)の記述は編集合戦にならないように中立なものになっている。従って、創造論およびインテリジェントデザイン側のポジションも併記されている。
創造論とインテリジェントデザイン

創造論支持者は、超自然の活動の可能性を不必要に、現在の科学の実行と理論から排除していると主張する。現在では、「自然界の幾つかの特徴はインテリジェンスの結果として最もよく説明される」と主張するインテリジェントデザイン支持者は、科学の実行のために自然主義者の現実の概念化は不要だと論じる。彼らの一般的な批判は、「自然界が神や超自然の介入とは独立した不可侵の法則による閉鎖系だとするのは、科学を誤った結論に導き、神や超自然の介入についての考えを含めようと主張する研究を不適切に排除している」というものである。

ある現象が科学的検証可能で、自然に説明できるなら、それは超自然ではなくなるというポジションは、このポジションは本質的に矛盾していると論じる、形而上学的超自然主義によって論破される。彼らは何かが発見される前に、科学によって何が発見可能かどうやって定めるのかと問う。計測装置が開発されて、新しい発見が可能になるまで、計測不可能なものは検証不可能である。しかし、現象を検証する新しい方法を発見し開発することを科学的正統が許容するためには、非科学的と考えられるものを科学的に探究することが許されなければならない(しかし、その通りなら、非科学は科学になる)。そうでないなら、知識は宗教教義によっては限定されないが、唯物論的パラダイムによって限定される。このポジションは、「自然主義は超自然を召喚しないことで科学を限定するもので、方法論的自然主義からの逸脱なしに真理を探究する学界としての科学という、あらゆるタイプの科学についての規範的原則として正当化できない」と主張するCenter for Science and Cultureのようなインテリジェントデザイン支持者がとる。

[wikipedia:Naturalism (philosophy) translated by kumicit]
これについて注釈をつけておく。

このポジション(方法論的自然主義に反対)をとる人々

Center for Science and Cultureとはもちろん、インテリジェントデザインの本山たるDiscoery Instituteのインテリジェントデザイン部門である。Dr. Stephen Meyer率いるこのCenter for Science and Cultureが、主として方法論的自然主義に反対している[ie. Johnson, 2007]と考えてよい。

ただいま内戦状態な若い地球の創造論ミニストリAnswers in GenesisCreation Ministries Internationalや、かつての創造科学の本拠地たるInstitute for Creation Researchなどは、あまり声高に叫んではいない。

これは"若い地球の創造論"では、創造7日目からは神様は自然界に介入しないことになっている[ie. AiG, 1990]ので、神様を召還しなくても論争になってしまうため。つまり、方法論的自然主義の枠内でも、既に進化生物学&地球物理&宇宙物理その他大勢と戦闘中...

ということで、反"方法論的自然主義"の主唱勢力はインテリジェントデザイン運動になる。


このポジションでも、ダメダメなインテリジェントデザイン

たとえば、Lenny Flankは超自然であっても、科学的研究法を適用するなら、科学になると主張している。
科学的研究法は非常に単純で、基本的な5ステップから成り立つ。それらは次のとおり:
  1. 宇宙のある様相を観察する
  2. 観察したものを説明できる可能性のある仮説をつくる
  3. その仮説で検証可能な予測をつくる
  4. それらの予測を検証できる観察あるいは実験を行う
  5. すべての観察や実験と予測が一致するまで、仮説を修正する

これらの5ステップのどれでも原理的に、先験的に、"超自然の原因"を排除しない。この方法により、非物質的なピクシーやゴーストや女神や悪魔やグレートパンプキンやお望み次第のものを仮説に注ぎ込んでかまわない。実際に、治癒に対する祈りの効果としての"超自然の原因"について、科学的実験が提案され、実施され、論文発表されている。その他に、ESPやテレキネシスや予知や遠望視のような非物質的あるいは非自然的現象についての研究が行われている。
[Lenny Flank: Does science unfairly rule out supernatural hypotheses? translated by kumicit]
しかし、インテリジェントデザインは「3.その仮説で検証可能な予測をつくる」でこけているというのが、Lenny Flankの指摘である。

ここで、観察あるいは実験は、必ずしも直接的に現象を捉えるものでなくてもよい。たとえば、重力波やグラヴィトンを捕捉しなくても、ニュートンの万有引力の法則は検証可能であり、反証も可能である。実際はもうちょっと複雑で、水星の近日点移動から内側に惑星の存在を予測し、見つからなくて一般相対性理論へつながった場合とがあるけどね。

で、インテリジェントデザインによる検証可能な予測だが、これが一見それらしく偽装しているものの、実はとっても変である。

(1) High information content machine-like irreducibly complex structures will be found.
(2) Forms will be found in the fossil record that appear suddenly and without any precursors.
(3) Genes and functional parts will be re-used in different unrelated organisms.
(4) The genetic code will NOT contain much discarded genetic baggage code or functionless "junk DNA".

FAQ: Can we positively say something was designed? on IDEA Center]



(1) High information content machine-like irreducibly complex structures will be found.
高度情報を含む機械のような還元不可能に複雑な(生物器官)構造が見つかる


生物の器官なんて、たいがい「高度情報を含む機械のような」もの。さらに「還元不可能に複雑」の表向きの定義が「複数のパーツが同時にそろわないと機能しないもの」なのだが、実はちょっと違う。一見「還元不可能に複雑」であっても、進化経路が見つかれば「還元不可能に複雑」ではなくなる。血液凝固カスケードや免疫系や鞭毛などがこの例。

ここで問題なのは、「還元不可能に複雑だと主張されたものが、そうでないと示されたこと」ではなくて、「還元不可能に複雑=進化論では説明できないもの」であること。つまり...

(1) 進化論では説明できない、複雑な生物器官が見つかる


(2) Forms will be found in the fossil record that appear suddenly and without any precursors.
化石記録に突如、先行形態のなしに出現したものがみつかる。


古典的な中間化石が見つからないというもの。すなわち...

(2) (中間化石が見つからなくて) 進化論では説明できない化石が見つかる


(3) Genes and functional parts will be re-used in different unrelated organisms.
遺伝子や機能が関係のない別の生物で再利用される


これも類似器官が別の生物にあっただけでは成り立たない。それが進化で説明できたら、この(3)には該当しない。つまり...

(3) 進化論では説明できない、異なる種にある類似した器官・機能・遺伝子が見つかる


ここまでの3つは、結局のところ「進化論で説明できないものが見つかる」以上のことは言っていない。それだと、「進化論」の検証になるかもしれないが、「インテリジェントデザイン」の検証にはならない。つまり「その仮説で検証可能な予測をつくる」になっていない。


(4) The genetic code will NOT contain much discarded genetic baggage code or functionless "junk DNA"
ゲノムにはそんな多くの使われないコードや機能のないjunk DNAはない。


この主張は論理や根拠なく主張されていているものであり[エントリ]、インテリジェントデザイン運動が始まる前に、既にjunk DNAに機能がある[Battey et al. 1983<.a>] via Denialism Blog]と言われており、種の分岐がいつかを推定できるくらいにjunkな場所がある。

ということで、(4)はただの間違い。でも、そもそもが、「論理や根拠なく主張されて」いては「検証可能な予測」ではない。



ということで、超自然を論じる前に、「その仮説で検証可能な予測をつくる」に至っていない。このため、せっかくwikipedia:Naturalism (philosophy)の中立的な記述があるのに、それがインテリジェントデザインを正当化するのに効いてこない。


ということで、インテリジェントデザインは

科学の原則たる方法論的自然主義を否定していて、しかも超自然をOKにしてあげても、科学にならない。

posted by Kumicit at 2007/08/03 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID Introduction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007/08/02

ふたたび方法論的自然主義

をもとにして、方法論的自然主義についてのエントリを書いてから、1年以上たった。

その後、wikipedia:Naturalism (philosophy)の記述がかなり整理されて、方法論的自然主義のみになり、形而上学的自然主義についてはwikipedia:Metaphysical naturalismで扱われるようになっていた。また、2007年2月にはStanford Encyclopedia of PhylosophyNaturalismが登場している。

ということで、とりあえずwikipedia:Naturalism (philosophy)のトピックを紹介する。

まずは定義から
Methodological naturalism contrasted with metaphysical naturalism(方法論的自然主義と形而上学的自然主義)

Metaphysical naturalism, which is often called "philosophical naturalism" or "ontological naturalism", takes an ontological approach to naturalism. Ontology is a branch of metaphysics that studies being, and so this is the view that the supernatural does not exist, thus entailing strong atheism.

哲学的自然主義あるいは存在論的自然主義とも呼ばれる形而上学自然主義は、自然主義に対して存在論的アプローチをとる。存在論は存在を研究する形而上学のひとつであるので、これは超自然は存在しないという見方であり、強い無神論になる。

In contrast, methodological naturalism is, in the words of Steven D. Schaphersman, "the adoption or assumption of philosophical naturalism within scientific method with or without fully accepting or believing it … science is not metaphysical and does not depend on the ultimate truth of any metaphysics for its success (although science does have metaphysical implications), but methodological naturalism must be adopted as a strategy or working hypothesis for science to succeed. We may therefore be agnostic about the ultimate truth of naturalism, but must nevertheless adopt it and investigate nature as if nature is all that there is." [4]

これに対して方法論的自然主義は、Steven D. Schaphersmanの言葉によれば「自然主義を完全に受け入れたり信じたりしているか否かにかかわらず、科学的方法の枠内の哲学的自然主義の採用あるいは仮定である。...(科学は形而上学的含意を持つが)科学は形而上学ではなく、形而上学的な究極の真理に依存しない。方法論的自然主義は科学がうまくいくための戦略あるいは作業仮説として採用しなければならないものである。したがって、我々は自然主義の究極の真理について不可知かもしれないが、これを採用し、自然があるがままであるかのように自然を研究しなければならない。」

[4] Naturalism is an Essential Part of Science - Steven D. Schafersman
続いて、超自然について
Relationship to the supernatural(超自然との関係)

This definition rules out recourse to the supernatural. Pennock contends[5] that as supernatural agents and powers "are above and beyond the natural world and its agents and powers" and "are not constrained by natural laws", only logical impossibilities constrain what a supernatural agent could not do, and "If we could apply natural knowledge to understand supernatural powers, then, by definition, they would not be supernatural". As the supernatural is necessarily a mystery to us, it can provide no grounds on which to judge scientific models. "Experimentation requires observation and control of the variables … But by definition we have no control over supernatural entities or forces." Allowing science to appeal to untestable supernatural powers would make the scientist's task meaningless, undermining the discipline that allows science to make progress, and "would be as profoundly unsatisfying as the ancient Greek playwright's reliance upon the deus ex machina to extract his hero from a difficult predicament."

この定義は超自然に訴えることを禁止する。Pennockは次のように強く主張する。「超自然のエージェントやパワーは自然界を超越したものであって、そのエージェントやパワーは自然法則には拘束されず、論理的不可能性だけが超自然のエージェントのできないことを制約する。そして、もし我々が自然な知識を超自然のパワーの理解に適用できるなら、定義上、それは超自然ではない。超自然は必然的に不可思議なものであるので、これに基づいて科学的モデルについての判断はできない。実験は観測と変数のコントロールが必要である。... しかし、定義上、我々は超自然の存在や力を制御できない。科学が検証不可能な超自然のパワーに訴えてもよいことにするなら、科学者の仕事は無意味になり、科学を発展させる規範は損なわれ、困難な状況か英雄を救いデウス・エクス・マキナに依存した古代ギリシャ劇のように、まったく不満足なもになる。」

Naturalism of this sort says nothing about the existence or nonexistence of the supernatural which by this definition is beyond natural testing. Other philosophers of science hold that some supernatural explanations might be testable in principle, but are so unlikely, given past results, that resources should not be wasted exploring them. Either way, their rejection is only a practical matter, so it is possible to be a methodological naturalist and an ontological supernaturalist at the same time. For example, while natural scientists follow methodological naturalism in their scientific work, they may also believe in God (ontological supernaturalism), or they may be metaphysical naturalists and therefore atheists. This position does not preclude knowledge that derives from the study of what is hitherto considered supernatural, but considers that if such a phenomenon can be scientifically examined and explained naturally, it then ceases to be supernatural.

このような自然主義は、定義の上で自然に検証できない超自然の存在あるは不在について何も言わない。ある科学哲学者は、原理的には超自然の説明の一部は検証可能かもしれないが、過去の結果から考えて、ほとんどありえず、超自然の探究にリソースを無駄にすべきではないと考えている。いずれにせよ、超自然の拒絶は実行上の問題であって、方法論的自然主義者が同時に存在論的超自然主義者であってもよい。たとえば、自然科学者は科学の研究においては方法論的自然主義に従うが、神(存在論的超自然主義)を信じているかも知れず、形而上学的自然主義者すなわち無神論者かもしれない。このポジションは、これまで超自然によるもの考えられてきたものについての研究による知識を、もしおその現象が科学的に検証可能で、自然に説明できるなら、排除しない

[5]Robert T. Pennock, Supernaturalist Explanations and the Prospects for a Theistic Science or "How do you know it was the lettuce?"
この後の部分は、Critiqueとして書かれていたものが、創造論とインテリジェントデザインのポジションという形の記述に改められている。
Creationism and intelligent design (創造論とインテリジェントデザイン)

Supporters of creationism claim that the possibility of supernatural action is unnecessarily excluded by the current practices and theories of science. Currently, proponents of intelligent design, who hold that certain features of the natural world are best explained as the results of intelligence, argue that the naturalist conception of reality is not needed in order to do science. Their general criticism is that insisting that the natural world is a closed system of inviolable laws independent of theism or supernatural intervention will cause science to come to incorrect conclusions and inappropriately exclude research that claims to include such ideas.

創造論支持者は、超自然の活動の可能性を不必要に、現在の科学の実行と理論から排除していると主張する。現在では、「自然界の幾つかの特徴はインテリジェンスの結果として最もよく説明される」と主張するインテリジェントデザイン支持者は、科学の実行のために自然主義者の現実の概念化は不要だと論じる。彼らの一般的な批判は、「自然界が神や超自然の介入とは独立した不可侵の法則による閉鎖系だとするのは、科学を誤った結論に導き、神や超自然の介入についての考えを含めようと主張する研究を不適切に排除している」というものである。

The position that if a phenomenon can be scientifically examined and explained naturally it then ceases to be supernatural is disputed by methodological supernaturalists, who argue that the position is inherently inconsistent. They ask, how can science presuppose what is discoverable before it has been discovered? What is immeasurable is untestable, until a measuring device is invented and a new discovery process enabled. But in order to be allowed by scientific orthodoxy to discover and invent new ways of testing reality, one must be allowed to engage in scientific pursuits of what is considered unscientific (but then, as stated, the "unscientific" becomes scientific, if it's true). Otherwise, knowledge is limited not as much as by religious dogmas, but by materialistic paradigms. This position is taken by intelligent design proponents such as the Center for Science and Culture, whose website claims that methodological naturalism limits science by not invoking the supernatural, and that "'methodological naturalism' cannot be justified as a normative principle for all types of science–without doing violence to science as a truth-seeking enterprise." [12]

ある現象が科学的検証可能で、自然に説明できるなら、それは超自然ではなくなるというポジションは、このポジションは本質的に矛盾していると論じる、形而上学的超自然主義によって論破される。彼らは何かが発見される前に、科学によって何が発見可能かどうやって定めるのかと問う。計測装置が開発されて、新しい発見が可能になるまで、計測不可能なものは検証不可能である。しかし、現象を検証する新しい方法を発見し開発することを科学的正統が許容するためには、非科学的と考えられるものを科学的に探究することが許されなければならない(しかし、その通りなら、非科学は科学になる)。そうでないなら、知識は宗教教義によっては限定されないが、唯物論的パラダイムによって限定される。このポジションは、「自然主義は超自然を召喚しないことで科学を限定するもので、方法論的自然主義からの逸脱なしに真理を探究する学界としての科学という、あらゆるタイプの科学についての規範的原則として正当化できない」と主張するCenter for Science and Cultureのようなインテリジェントデザイン支持者がとる。

[12] CSC - Open Debate on Life’s Origins By: Stephen C. Meyer


明日へつづく
posted by Kumicit at 2007/08/02 09:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID Introduction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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