黒影さまにまとめていただいてしまったが
これを機会に、私もいったんインテリジェントデザインについて、これまで書いてきたことを、まとめておこうと思う。
ID論関連クリップ[幻影随想]
インテリジェントデザインの立ち位置
キリスト教の創造論には変種群が多数ある。
- 理神論/自然神論(Deism)[wiki]
- 有神論的進化論(Theistic Evolution) あるいは進化論的創造論(Evoluationary Creation)[wiki][エントリ]
- 進歩的創造論 (Progressive Creation)[wiki][エントリ]
- 古い地球の創造論 (Old Earth Creation)[wiki][エントリ]
- 若い地球の創造論 (Young Earth Creation)[wiki][エントリ]
インテリジェントデザインの立ち位置の前に、これらの主張を整理しておこう。なお、「進歩的創造論」は「古い地球の創造論」の変種だが、ここでは別扱いさせていただく。また、これらの分類の境界線は厳密ではなく、やわらかめ。
地球は40〜50億年前に出来たか?
YES: 理神論, 有神論的進化論, 進歩的創造論, 古い地球の創造論
NO : 若い地球の創造論(6000年前)
生物は進化した?
YES: 理神論, 有神論的進化論, 進歩的創造論
NO : 古い地球の創造論, 若い地球の創造論
生物は自然法則したがって進化した?
YES: 理神論(神様が決めた自然法則にしたがって)
YES': 有神論的進化論(神様が自然法則を使って進化させた)
NO: 進歩的創造論(大進化は神様・小進化は自然法則)
神様は宇宙を創造した?
YES: 有神論的進化論, 進歩的創造論, 古い地球の創造論, 若い地球の創造論
YES': 理神論(ビッグバン直後に神は去った or いなくなった)
NO:
神様は物理法則と物理定数を決めた?
YES: すべて
NO:
神様は検知可能?=神様の奇跡があった?
YES: 進歩的創造論, 古い地球の創造論, 若い地球の創造論
NO': 有神論的進化論(魂は神様が創造した)
NO: 理神論
進化論 vs 創造論の戦いでは
進化論サイド: 理神論, 有神論的進化論
創造論サイド: 進歩的創造論, 古い地球の創造論, 若い地球の創造論
インテリジェン・トデザイン理論は上記質問の神様を知的存在に読み替えて
- 地球は40〜50億年前に出来たか?..........
YES言及しない - 生物は進化した?........................
YES言及しない - 生物は自然法則したがって進化した........ NO
- 知的存在は宇宙を創造した? ............. YES
- 知的存在は物理法則と物理定数を決めた?.. YES
- 知的存在は検知可能?.................... YES
- 進化論 vs 創造論の戦いでは ............. 創造論サイド
インテリジェントデザインは"God of the gaps"理論
"God of the Gaps"論[エントリ]とは
- 科学には解明できないことがある
- それは「神様」のせいなのさ
インテリジェントデザイン理論の基本を見れば、まさに"God of the Gaps"論であることは明らか。
理論によれば、なんらかの現象あるいは生物などがデザインされたことの証拠は、「設計された複雑さ(Specified complexity)[wiki]」であり、それは
- 問題となるパターンが、そのパターンを形作る個々の要素の意味あるいは意義とは独立な機能や構造あるいは目的を表している
- この明らかに意味のあるパターンがなんらかの法則や規則によって説明できない
- そのパターンが偶然によるものではない
が条件であり、このうち、偶然か否かの判断基準は確率1/10^150としている。この数値の根拠は
「宇宙に存在する粒子の推定個数(10^80)」 × 「 1秒間に素粒子が変化する回数(10^45)」× 「宇宙の推定年齢 10^25秒(約150億年もしくは10^16秒 × 10億)」による(このSpecified complexityはDr.William Dembskiの担当)。
ただし、「問題となるパターン」が複数のパターンの組み合わせに分解されてしまうと、実現確率が高まってしまう。そこで出てくるのが、「還元不可能な複雑さ(irreducible complexity)[wiki]」だ。これ以上は、分解すると機能しなくなるまで分解したときの複雑さ。それが、自然法則や偶然で説明できなければ、設計された複雑さと判定され、「それは知的存在のせいなのさ」という結論にいたるというもの(このIrreducible complexityは生化学者Dr. Michael Beheの担当)。
つなげると、「現在の生物学」でわかっている範囲において「還元不可能な複雑さ」が「設計された複雑さ」であれば、それは自然法則と偶然によってだけでは存在しえないので、「知的存在」によるものだというのが、インテリジェントデザインの主張の基本。
「現在わかっている自然法則と偶然によってだけでは存在しえない」ということは「わからない=Gaps」というだけなのだが、これを「知的存在=God」によるものと主張する。まさに、「God of the gaps」理論だ。
インテリジェントデザイン支持者たちは「普通にわからない」ではなく「根本的(fundamental theoretical)にわからない」ことだから、「God of the gaps」理論ではないと反論する[ IDEA Center FAQ]。しかし、それは反論ですらない。そうだとしても、「God of the fundamental theoretical gaps」でしかないからだ。
そして、この「God of the gaps」理論は、科学がどこまで進歩しても決して死なない。科学が進歩すれば、いまわからないことは解明され尽くしてしまうかもしれない。しかし、そのときにはまた新たにわからないことが見つかる。そして、「それは神様のせいなのさ」と主張できるからだ。
インテリジェントデザインは科学の停止装置(Science Stopper)
インテリジェントデザインの主張は
- 現在わかっている自然法則と偶然では説明できないことがある
- それは「知的存在(インテリジェントデザイナー)」のせいなのさ
- その「知的存在」が何者なのかを問うな
というものだ。「それ以上は研究するな」という主張なので、「科学の停止装置(Science Stopeer)」と呼ばれる。
インテリジェントデザイン支持者は、「答えの出ない研究をやめて、その労力と資金を別の研究につぎ込めば成果が出る」から「科学の停止装置(Science Stopeer)」ではないと反論する。しかし、それは「科学の停止装置」という呼ばれ方が嫌いだというだけであって、呼ばれる理由はまったく否定していない。
インテリジェントデザインは宗教
インテリジェントデザイン支持者たちは言う。
進化論が正しいなら、生命は偶然の産物でしかない。もしそうなら、何故、クローンも堕胎も安楽死も脱税も殺人もしてはいけないか。[ハリス&カルバート]
前者は"科学"の命題たりうるが、後者は"科学的"な命題ではない。「何をしてよいか悪いか」という判断は、「メカニズムの解明」という「科学の方法論」からは出てこない。「良い」か「悪い」かは宗教か倫理か慣習か道徳か法律の領分だ。
「クローンも堕胎も安楽死も脱税も殺人もしてはいけない」という主張は、科学によって裏付けられることも、否定されることもない。
しかし、インテリジェントデザイン支持者たちは、「科学的」裏づけを以って「クローンも堕胎も安楽死も脱税も殺人もしてはいけない」と言いたがっている。
もし生命がまったくの偶然のできごとでないなら、何かデザインされ、作られたものであるなら、生命には本来の目的があるはず。[ハリス&カルバート]
しかし、それではインテリジェントデザインは科学ではなく、宗教であると言ったのと同じ。
インテリジェントデザインは..
まとめると、インテリジェントデザインとは
- 大進化は神様によるものだという進歩的創造論と同じ立ち位置のようにも見えるが、実際は、若い地球の創造論と古い地球の創造論に互換な最小主張 (2009/01/10修正)
- 進化論 vs 創造論の戦いにおいては創造論サイド
- "God of the Gaps"理論(科学に解明できないことは神様のせいなのさ)
- 科学の停止装置(その神様を問うな)
- 科学ではなく宗教
引用元を明記していないインテリジェントデザインの主張はすべて、
William S. Harris and John H. Calvert: Intelligent Design: The Scientific Alternative to Evolution, http://www.intelligentdesignnetwork.org/NCBQ3_3HarrisCalvert.pdf
による

