2016/05/30

ハーブレメディは見過ごされている世界的健康被害

そういえば、今月初めに、ハーブレメディ「アリストロキア」によるアリストロキア酸腎症について警告する論文がEMBO reportsに掲載されたというリリースがBaylor College of Medicineから出た。

アリストロキアの使用から数か月あるいは数年経過してから発症するため、これまで危険性が知られていなかったという、伝統医薬品に見られる問題を再認識させるものであり、CNBCなどの報道機関の記事にもなった。
Herbal remedies are an overlooked global health hazard
ハーブレメディは見過ごされている世界的健康被害である


世界中の数百万〜数億の人々が、数千年前に始まった伝統に従って、ハーブ健康レメディを使っている。多くの人々は、長年にわたり使われてきたのでハーブは安全だと信じている。しかし、Baylor College of MedicineとStony Brook Universityの研究者たちは「ハーブレメディが長きに割って使われてきたことが、安全性の保証にならない」との関心を高めている。これはEMBO reportsの招待コメンタリーとして掲載される。

Baylorの医学免疫学の名誉教授であるr. Donald M. Marcusと、Stony Brook Universityの著名な薬学教授であるDr. Arthur P. Grollmanは、植物アリストロキアが、アリストロキア酸腎症を起こすことを示す科学的証拠について論じた。アリストロキア酸腎症になると、間質性腎炎や腎不全や尿道癌などの症状が起きる。

著者たちは「台湾では全国処方データベースによれば、1997〜2003年に800万人がありストロキアを含むハーブを使っていた」ことを指摘する。台湾と中国における、腎不全と腎臓癌の患者の研究は、両国の数千万人がアリストロキア酸腎症のリスクをかかえていることを示した。

遺伝的にアリストロキアの影響を受けやすい人々は、アリストロキアを使うと、アリストロキアに含まれる化合物アリストラクタムと、腎臓組織のDNA付加体を形成する可能性がある。これらの付加体は、腫瘍抑制遺伝子TP53に突然変異を起こし、腎臓障害へのプロセスを起動する。追加研究で、このプロセスは肝臓や膀胱に癌の発達にもつながる可能性があることが示されている。

MarcusとGrollmanは「他のハーブ薬品や伝統薬品により、アフリカやアジアでの重篤な有害事象が起きているが、これらの症例では疫学データがない」と言っている。

アリストロキアはハーブレメディは2000年以上にわたって使われてきたが、「主としてハーブ使用と発症の間の潜伏期間が長いことと、ハーブ使用者の約5%のみが遺伝的に影響を受けやすいことが、内在する毒性が認識されなかった理由だ」という。

大半の発癌物質と多くの毒物は、発症するまでに長い時間を要する。数か月から数年前に使っていた場合、特定の化合物が病気の原因であることを特定することは、素人にとっても専門家にとっても非常に困難である。

「アリストロキアの歴史は、長きにわたって使われてきた他のハーブも有毒だったり、発癌物質だったりする可能性があることを示唆している。多くのハーブが人間の健康に問題を起こす毒物あるいは発癌物質を含んでいる可能性があると仮定するのが、堅実だ」と著者たちは言う。

「アリストロキアがそうであるように、ハーブレメディの効果を支持する科学的証拠がないことや、有害事象があることに言及することなく、伝統薬品は性質が実証されているという命題のもとで」伝統的ハーブレメディを推奨する世界保健機関(WHO)には、MarcusとGrollmanは同意しない。

著者たちは、「主たる関心はハーブ薬品の使用に伴う有害事象の防止にあり、伝統医薬品全般の否定ではない。世界の医薬関係者には、世界的に使われている植物製品の長期及び短期の安全性と有効性の評価を行ってほしい」ことを強調した。

なお、著者たちは利益相反はないと宣誓している。

  • A. P. Grollman, D. M. Marcus. Global hazards of herbal remedies: lessons from Aristolochia: The lesson from the health hazards of Aristolochia should lead to more research into the safety and efficacy of medicinal plants. EMBO reports, 2016; 17 (5): 619 DOI: 10.15252/embr.201642375


[Herbal remedies are an overlooked global health hazard (2016/05/02) on Baylor College of Medicine, also on ScienceDaily]
なお、英語圏だと"Herbal remedy"という記述されるものには、漢方薬も含まる。以前、Jin Bu Huan(鎮痛錠剤)による死亡事例Huo Luo Jing Dan(活絡金丹)による死亡事例を取り上げたように、ハーブ製品として流通している(医薬品として法規制のもとで管理されることがない)漢方薬で死亡する場合がある。
posted by Kumicit at 2016/05/30 07:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016/05/08

メモ「メスメリズムで死人が蘇生すると書いてたHahnemann」

ホメオパシーの始祖Samuel Hahnemannは、晩年、メスメリズムを信じるようになったらしい。彼の著書Organonの第5版になかったメスメリズムへの言及が第6版に登場している。
[Samuel Hahnemann: "Organon", § 288 Sixth Edition (via Quackometer)]

I find it yet necessary to allude here to animal magnetism, as it is termed, or rather Mesmerism (as it should be called in deference to Mesmer, its first founder) which differs so much in its nature from all other therapeutic agents. This curative force, often so stupidly denied and disdained for a century, acts in different ways. It is a marvellous, priceless gift of God to mankind by means of which the strong will of a well intentioned person upon a sick one by contact and even without this and even at some distance, can bring the vital energy of the healthy mesmerizer endowed with this power into another person dynamically (just as one of the poles of a powerful magnetic rod upon a bar of steel).

(創始者メスマーに敬意を表して)メスメリズムという用語で呼ばれる動物磁気について、ここで触れておく必要があるだろう。これは他の全ての治療手段と、その性質が大きく異なっている。過去一世紀にわたり、しばしば愚かにも否定され、軽蔑されてきた、この治療力は異なる方法で働く。それは、神から人類への素晴らしく貴重な贈り物である。患者に対して善意を持つ人物の強い意志が、接触によって、これがなくても、ある程度離れていても、健康なメスメライザーのバイタルエネルギーを、この力とともに、(鉄の棒のパワフルな磁気ロッドの一方の極のように)他の人物にダイナミックに与えることができる。
さらに、もわっとメスメリズムを取り入れるだけでなく、「そこそこの時間、見た目に死んでいる状態だった人物を蘇生させる」力があるとまで、Hahnemannは描いている。。
The effect of communicated human power upon the whole human organism was most brilliantly shown, in the resuscitation of persons who had lain some time apparently dead, by the most powerful sympathetic will of a man in full vigor of vital energy, and of this kind of resurrection history records many undeniable examples.

ある程度の時間、見た目に死んでいる状態の人物が、バイタルエネルギーに満ち溢れた人の最もパワフルで共感する意思によって、蘇生した事実によって、コミュニケートされた人間のパワーの、人間の全身に対する効果は、鮮やかに示される。そして、この種の蘇生の歴史は、否定できない多くの例を記録している。

[Samuel Hahnemann: "Organon", § 288 Sixth Edition (via Quackometer)]
かなりトンデモ耐性弱かったのかも?
posted by Kumicit at 2016/05/08 11:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016/05/05

メモ「ホメオパシーとデュナミスの関連調査中...」

ホメオパシーの始祖Samuel Hahnemannを肯定的にとらえていたMartin Gumpert (1945)によれば、ホメオパシーが呪術とみなされないように、HahnemannはSchellingのDynamis(デュナミス)の概念を使った。そして、その過程で、物質を無限に希釈できて、それにより物質はより純粋になるという考えを、Schellingから取り込んだという。

Hahnemann saw things with an independent, timeless eye, but he was forced to speak and express himself in the language spoken by all those around him. A vast number of most necessary physical and physiological conceptions were still lacking. The law of the "conservation of energy" had not yet come into existence. Thus Hahnemann was compelled to take over the conception of the "dynamic" from the highly suspect natural philosophers, in order to avoid the danger that the increased effects he had observed in his homeopathic medicine would be classed as mere magic. The first revealed facts of colloidal chemistry were thus veiled in the cloud-high abstractions of Schelling, the "philosopher of medicine." The "dynamic" idea, premising a strange, immaterial, "spirit-like" function, satisfied a medical science which was beginning to turn away in ... from the humoral pathologists' "atomic" material world of ideas.

ハーネマンは物事を、独立した時間を超えた目でみていたが、彼の周りにいる人々の話す言語で、自らを表現せざるを得なかった。物理学及び生理学の多くの概念は、まだなかった。エネルギー保存則もなかった。したがって、ハーネマンは、ホメオパシー薬剤について観察できた増大する効果をただの呪術だと見なされないために、疑いを持っている自然哲学者の概念用語「ダイナミック」を流用するしかなかった。したがって、コロイド化学の事実は、まず、医学哲学者シェリングの高度な抽象化で隠さなければならなかった。奇妙で非物質的でスピリットライクな機能である「ダイナミック」という考えは、[血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁の4種類を人間の基本体液とする]体液病理学者たちのアトミックな物質世界という考えから、転換を始めていた医学を満足させた。

Hahnemann already knew that "although theories may imagine that they can observe a weakening of the action of a dose of medicine by its dilution with a large quantity of liquid, experience asserts exactly the opposite, at all events in the homeopathic employment of medicines."

Schelling taught the infinite divisibility of matter. The more unsubstantial the matter became by dilution, the purer and more effective could be its "spirit-like" and "dynamic" functions. Hahnemann discovered the increased power of shaken or grated medicines, which constitute the basis of homeopathic preparations;

ハーネマンは既に「大量の液体で希釈した薬剤摂取の効果が弱くなることが観察できると理論は想定していたが、ホメオパシーを採用した医療での事象すべてで、真逆であることを実験は示していた。」

シェリングは物質の無限分割可能性を教えていた。物質はその実態を希釈によって失うほど、より純粋で影響力が強くなるのは、そのスピリットライクでダイナミックな機能によるものだ。ハーネマンは、シェイクした薬剤のパワーが増大することを発見し、これがホメオパシーレメディの基礎的構成要素となった。

[Martin Gumpert: "Hahnemann: The Adventurous Career of a Medical Rebel", p.147, 1945]
Hahnemannは、その時代の医学とは折り合いを付けて、ホメオパシーを語ろうとしていたといのうが、Matrin Gumpertの主張。Hahnemannが医学教育を受けた時代は、まだ生気論も健在だった。細菌が病気を起こすことや、ウィルスの存在や、進化論の登場は、Hahnemannの死後。ドイツ観念論の3人の有力な思索家の一人であるFriedrich Wilhelm Joseph von Schelingのアイデアを使うことも、おかしなことではない。

ただし、Hahnemannの後継者たちは、Hahnemannの生きていた19世紀前半の生物学・医学の世界から前へは進まなかった。かつては時代の生物学・医学から大きくは離れていなかった場所が、オカルト世界に分類される領域になり、結果として、後継者たちは、オカルト世界の住人になってしまったようである。
posted by Kumicit at 2016/05/05 11:44 | Comment(1) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016/01/02

確率・自然・2つの敵

「確率を取り扱えない心」は面倒なものだ。日常的には...

  • 起きる確率はゼロではないが、1%に満たない(<1%)
  • ということは、起きないわけではないのだな
  • ということは、起きるか、起きないか、どちらかだ(~50%)
  • それなら、起きる方に賭ける(>50%)
  • 絶対、起きる(100%)

といったところ。こういう推論をするにであれば、どんな小さなリスクであっても、許容できないだろう。

ところが、その小さなリスクを回避するために、別のリスクと遭遇すると

  • 被害にあう可能性が20%あり、その場合は、深刻なダメージ。(20%)
  • ということは、被害にあう可能性は、あわない可能性より、はるかに小さい。
  • ということは、被害にあうことを考える必要はない。(~0%)
  • 当たらなければ、どうということはない。

といって、気にしなかったりする。判断の時に、確率を脳内で0%か100%と見なしてしまうのは、ありがち。

別のリスクが「自然」である場合は、別の推論で0%にしてしまうこともある。それは、世の中にある自然主義の誤謬の派生バージョンである道徳主義の誤謬と"Appeal to Nature詭弁"という対置される詭弁:

  • 自然への訴え(Appeal to nature fallacy):
    「自然は良い」に基づき、「Xは自然なので、Xは良い」あるいは「Xは不自然なので、Xは悪い」と主張する詭弁。自然主義の誤謬の単純化された形。
  • 道徳主義の誤謬(moralistc fallacy):
    「自然は良い」に基づき、「Xは良いので、Xは自然である」あるいは「Xは悪いので、Xは不自然である」と主張する詭弁。

これらの変形バージョンで...

  • 自然にしていれば悪いことは起きない。
  • 自然にしていて起きたことは、悪いことではない。



2つの敵を同時に相手にするのは難しいため、どちらかを「実は敵ではない」あるいは「大した敵ではない」と思ってしまうこともがある。そのため、「健康のためなら、死んでもいい」ということにも。


posted by Kumicit at 2016/01/02 09:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015/11/19

連邦司法省やFDAは117のサプリ業者への法的措置を開始

米国司法省はFDAなどと連携し、サプリメントの取り締まりを開始した。
The Justice Department said on Tuesday that it filed criminal and civil enforcement actions against 117 companies and individuals.

米国司法省は2015年11月17日に、117の企業や個人に対して、刑事及び民事執行措置を提訴したことを発表した。

At the center of the sweep is USPlabs, a company based in Dallas that sold the best-selling workout supplements Jack3d and OxyElite Pro, which contains the amphetamine-like stimulant dimethylamylamine, or DMAA. On Tuesday, federal prosecutors brought criminal charges against USPlabs and six of its executives related to the sale of those products.
...
The indictment against USPlabs, filed in Federal District Court in Dallas, accused the supplement manufacturer of telling its retailers and wholesalers that it used natural plant extracts in its products, when in fact it was using a synthetic stimulant made in a Chinese chemical factory.

取り締まり対象の中心は、Dallasを本拠地とするUSPlabsで、ベストセラーで、DMAAを含んでいるワークアウトサプリJack3dやOxyElitreProを販売している。11月17日に、連邦検察は、USPlabsと役員6名を、これらの製品販売に関連して起訴した。Dallas連邦地裁への起訴によれば、このサプリ製造業者は「天然植物抽出物を使った」と小売り及び卸売業者に告げていたが、実際には中国の化学工場で合成されて化合物だった。

According to the indictment, the use of OxyElite Pro led to a number of liver injuries, including at least one death.
...
In December 2011, after the deaths of two soldiers who had used Jack3d, the Defense Department removed all products containing DMAA from stores on military bases, including more than 100 shops operated by GNC Holdings, the nation’s largest retailer of nutritional supplements.

In 2013, under pressure from the Food and Drug Administration, USPlabs voluntarily destroyed its inventory of Jack3d and OxyElite Pro.

起訴によれば、OxyEliteProは死亡1名を含む多数の人々に肝臓障害を引き起こした。2011年12月には、Jack3dをつあった兵士2名が死亡し、国防省はDMAAを含む全商品を、英国最大のサプリ小売り業者GNC Holdingsが運営する、100以上の軍基地内店舗から撤去した。また、2013年には、FDAの圧力で、USPlabsはJack3dとOxyEliteProを自主回収・廃棄した。

[PETER LATTMAN and ANAHAD O'CONNOR: "Makers of Nutritional Supplements Charged in Federal Sweep" (2015/11/17 on NewYorkTimes]
このUSPlabsの件は...
"Defendants sometimes tested the products on themselves and sold the ones that made them feel good," Benjamin Mizer, a principal deputy assistant attorney general told a news conference. "With one product, defendants allegedly recognized that the substance could potentially cause liver toxicity, but without causing conducting a single test, they went ahead and sold."

「被告は時々製品を自ら検査して、気分がよくなる製品を販売していた。ひとつの製品に関して、被告は肝臓に有害である可能性のある物質が含めれていることを認識していながら、検査を一度も行わずに、製造販売していたとの嫌疑がある」とenjamin Mizer司法副長官は述べた。

[KATE GIBSON:"U.S. says supplements billed as natural can be toxic" (2015/11/17) on CBSnews]
悪質かつ被害の大きなものから手を付けたようだが、これは始まり。
The Justice Department, which worked alongside the F.D.A. and other federal agencies in its investigation, said on Tuesday it had also filed complaints against numerous companies that have sold supplements as cures for diseases or that were otherwise in violation of the law.

The case against USPlabs comes as part of a broader crackdown on the supplement industry, which faces calls for tougher regulation of its products after a number of deaths and illnesses linked to them.

[PETER LATTMAN and ANAHAD O'CONNOR: "Makers of Nutritional Supplements Charged in Federal Sweep" (2015/11/17 on NewYorkTimes]
今後、引き続いて、多くのサプリ製造業者が摘発されるもよう。

なお、小売店チェーンは、今回の取り締まりの対象となっていない。

posted by Kumicit at 2015/11/19 07:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。