2015/08/12

自分の信念に合わない聖書の記述

自分の信念に合わない聖書の記述に、キリスト教徒はどう反応するのか?あるいは、そのような記述をそもそも知らないのか?

少し例を見ておくと...

いろいろ死刑


聖書はいろいろ死刑を定めており、その中には、不倫(レビ記20章10節)・口寄せや霊媒(レビ記20章27節)・父母を罵る(マタイによる福音書15章4節)・土曜出勤は死刑(民数記15章32-36節)などがある

[James Tissot: The Sabbath Breaker Stoned](土曜出勤者を死刑にする様子)

一方、米国では今でも30%近くが、聖書は神の言葉だと信じてる。
GpollBibleGodWords.png
[Gallup Poll (2014)]
では、これらの人々が、聖書の言葉に従っているかというと、もちろん、そんなことはない。たとえば...
神は、『父と母を敬え』と言い、『父または母をののしる者は死刑に処せられるべきである』とも言っておられる。 (マタイによる福音書15章4節)
を実行する者などいない。それをジョークにしたネタも...

聖書を全文読んで諳んじている人はまずいない。そもそも「父または母をののしる者は死刑に処せられるべきである」という記述の存在を知らず、そんな記述がある言われたところで、驚いたり...

ハゲのエリシャと42人の子どもたちと2頭のクマさん


「ハゲに向かってハゲハゲ言うな」というおとぎ話だと思えば、なんのことはない列王記下2章19-25節...
LA_HIRE-The_Children_of_Bethel_Mourned_by_their_Mothers.jpg
[Laurent de LA HIRE(1606-1656):"The Children of Bethel Mourned by their Mothers"(1653) at Palais Saint-Vaast, Arras]
(ハゲのエリシャに向かってハゲハゲ言ったために殺された子供たち)

しかし、聖書は字義どおりに正しく、書かれたことは史実だという立場をとる創造論者たちにとって、「ハゲに向かってハゲハゲ言ったくらいでクマさんに殺される子どもたち」というのは、望ましいものではないようだ。小さな子どもではなく青年で、暴徒でとか、いろいろ言う創造論者たちもいる。

何かと盛り上がるネタのようで、Yahoo Answersなどにも、わらわらある。「小さな子どもではなく青年で、暴徒で」とか反応する人々もいれば、旧約聖書を別扱いする人々やら。

反応のパターンは色々あるが、IronChariotsは以下の例を挙げている。
  • おとぎ話
  • エリシャは見知らぬ街だったので、生命の危機を感じていた。
  • エリシャも人間なので、間違いもある。
  • 神がやったことだから良きことのはず
  • 子供ではなく青年だ
まあ、そんなところだろう。

私のイエス


当然のことながら、イエス・キリストが保守と一致しない点、リベラルと一致しない点があり、そのことを保守・リベラルとも認識はしている。そして、保守は、イエスが自分たちの考えに近い倫理問題を優先し、富の不平等や非合法移民の扱いについて重視していないと考え、リベラルはその逆である。まあ、「私のイエス」というやつ。このあたりが、普通の反応かもしれない。




posted by Kumicit at 2015/08/12 18:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014/12/25

「低い認知能力・右翼イデオロギー・偏見」という連鎖についての研究

否定論・陰謀論を信じる理由について、北米および西欧では、社会認知・心理学研究が進められている。

これらと類似した現象に、被害者叩きの心理がある。それによらば、我々は「世界が安全で、良き人に良きことが訪れ、悪い人は悪いことに見舞われるという」公正世界を築くために行動するのではなく、被害者を叩くことで、世界が公正世界であるという信念を守ろうとする、どうしようもないやつらであるらしい。

...と、ここまでは、「彼らが否定論・陰謀論を信じているのは、彼らが愚かだからではない」という研究成果たちだった。

一方、人種・民族・貧困などに対する偏見に絡んで、保守支持が低い認知能力と関連しているという研究もある。
Longitudinal studies provide some of the most convincing evidence. One such study looked at general intelligence in 10- and 11-year-old kids, and then re-studied those kids as adults two decades later−and found a clear connection between low intelligence and subsequent racism and sexism. Similarly, higher intelligence in childhood has been shown to predict less racism in adulthood. These analyses strongly suggest that low intelligence actually leads to hateful attitudes later on.

時間経過を追った研究は、最も納得できる証拠を与える方法の一つである。そのような研究の一つが、10歳と11歳の子供の知能を測定し、20年後に追跡調査し、知能と人種差別及び性差別の明瞭な関係を見いだした。同様に、子供の頃の高い知能は、成人後の人種差別意識の弱さの予測した。これらの分析は、低い知能が、後に、ヘイトな態度につながることを強く示唆している。

This is just a sampling of the accruing evidence on this point, all of which points to another puzzling question: Why? Why would verbal ability and math skills and other cognitive assets translate, over the years, into such hateful attitudes?

これは、この点について生じた証拠の一つだが、これは新たな問いにつながる。なぜ、言語能力や計算能力や他の認知能力が、年月を経過した後に、ヘイトな態度につながるのか?

Dhont and Hodson believe they have an answer to this, again one based on rigorous abundant evidence. Their theory is that right-wing ideologies attract people with lower mental abilities because they minimize the complexity of the world. Right-wing ideologies offer well-structured and ordered views of society, views that preserve traditions and norms, so they are especially attractive to those who are threatened by change and want to avoid uncertainty and ambiguity. Conversely, smart people are more capable of grasping a world of nuance, fluidity and relativity.

Dhont and Hodsonは、厳密で十分な証拠に基づいて、答えを得たと考えている。右翼イデオロギーは世界の複雑さを最小化するので、低いメンタル能力の人々を惹き付けるというのが、彼らの理論である。右翼イデオロギーは、社会についての、よく構造化された、秩序だった見方、すなわち、伝統と規律を守る見方を提供する。なので、変化に脅かされ、不確実性と曖昧さを避けたい人々に魅力的である。逆に、スマートな人々は、ニュアンスや流動性や相対性の世界を把握する能力が高い。

The empirical evidence supports this link, too. Low intelligence and “low effort thinking” are strongly linked to right-wing attitudes, including authoritarianism and conservative politics. And again, there appears to be a demonstrable causal link: Studies have found, for example, that children with poor mental skills grow up to be strongly right-wing adults.

経験的証拠は、この関連性を支持する。低い知能や低い思考努力は、権威主義や保守的政策などの右翼態度と、強く関連している。そして、明白な因果関係と思われるものがある。たとえば、メンタルスキルの弱い子供は、強い右翼な大人になることを見いだした研究がある。

There is a final link in the chain of causality, according to Dhont and Hodson. Considerable evidence shows that conservative ideology predicts all sorts of prejudice−against ethnic and racial minorities, the disadvantaged, any outgroup. Indeed, right wingers are much more likely to see outgroups as a threat to traditional values and social order, resulting in heightened prejudice. Dhont and Hodson tested and confirmed this mediation model: Lower childhood intelligence clearly predicts right-wing ideology and attitude, which in turn predicts prejudice in adulthood.

Dhont and Hodsonによれば、因果関係の最後のリンクがある。保守イデオロギーが、エスニックや人種マイノリティや、貧困者や外集団に対する偏見の予測因子となることを示す相当な証拠がある。実際、右翼は外集団を伝統的価値と社会秩序への脅威と見なす傾向が、非常に強い。これが、偏見を強めている。Dhont and Hodsonは、この媒介モデルを検証・確認している。すなわち、子供の頃の低い知能は、右翼イデオロギー及び右翼態度の明瞭な予測因子となっていて、それは、大人になったときの、偏見の予測因子となっている。

[Wray Herbert: "Is Racism Just a Form of Stupidity?" (2014/08/20) on Association for psychological science]
このWray Herbertの記事は、Dhont and Hodson(2014)の一般向け紹介記事で、原論文のAbstractは以下の通り:
[Kristof Dhont and Gordon Hodson: "Does Lower Cognitive Ability Predict Greater Prejudice?", Current Directions in Psychological Science December 2014 vol. 23 no. 6 454-459, doi: 10.1177/0963721414549750]

Historically, leading scholars proposed a theoretical negative association between cognitive abilities and prejudice. Until recently, however, the field has been relatively silent on this topic, citing concerns with potential confounds (e.g., education levels). Instead, researchers focused on other individual-difference predictors of prejudice, including cognitive style, personality, negativity bias, and threat. Yet there exists a solid empirical paper trail demonstrating that lower cognitive abilities (e.g., abstract-reasoning skills and verbal, nonverbal, and general intelligence) predict greater prejudice. We discuss how the effects of lower cognitive ability on prejudice are explained (i.e., mediated) by greater endorsement of right-wing socially conservative attitudes. We conclude that the field will benefit from a recognition of, and open discussion about, differences in cognitive abilities between those lower versus higher in prejudice. To advance the scientific discussion, we propose the Cognitive Ability and Style to Evaluation model, which outlines the cognitive psychological underpinnings of ideological belief systems and prejudice.

で、注目すべき点は「右翼イデオロギーは世界の複雑さを最小化するので、低いメンタル能力の人々を惹き付ける」という点。すなわち、北米・西欧の右翼の提供する「社会についての、よく構造化された、秩序だった見方」は、低い認知能力の人々にも理解できるという点。

そのような、わかりやすい主張を理解することで、「未熟な人が、誤って自らの能力を平均よりも、はるかに高いと評価して、幻想上の優位性を患う」認知バイアスたる、ダニング・クルーガー効果も引き起こして、信念を強化することも考えられる。

そのような、低い認知能力・右翼イデオロギー・偏見(あるいは差別意識)が連鎖したと思われる人々への対象方法は、見出されていない。


なお、以上は北米・西欧での研究であって、日本にそのまま、あてはまるかどうかは別問題。
posted by Kumicit at 2014/12/25 00:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014/08/02

ウガンダのアンチゲイ法に対して、ウガンダの法廷が無効判決

ウガンダのアンチゲイ法をめぐる問題は2009年秋に始まっている。その背後には米国の福音主義キリスト教団体があり、当時は最高刑を死刑とするものだった。その後、最高刑を終身刑として可決。国際的圧力のために、法案は放置状態になったり、出直したりで、最終的に2014年2月にYoweri Museveni大統領が署名して成立した。

しかし...
A Ugandan court struck down a punitive anti-gay law on Friday that has strained Uganda’s relations with the West, but the court ruled on narrow technical grounds, preserving the possibility that the measure could be revived.

In front of an overflowing courtroom in Uganda’s capital, Kampala, a panel of five judges announced that the Anti-Homosexuality Act, which punishes some homosexual behavior with life in prison, was invalid because it had been passed by Parliament without a proper quorum.

“We’re very happy,” said Sylvia Tamale, a Ugandan law professor who has supported gay rights despite persistent threats and harassment. “But it’s unfortunate that the court did not deal with the substantive issues that violate our rights.”

Uganda’s government, which is tightly controlled by President Yoweri Museveni, a former guerrilla fighter who has ruled for 28 years, did not immediately indicate if it was going to appeal the court’s ruling.

ウガンダの裁判所は、西側諸国とウガンダの関係に緊張を強いているしている懲罰的な反同性愛法を無効だとする判決を下したが、綱渡り的な根拠での判決であり、法が復活する可能性が残っている。

ウガンダの首都カンパラの、傍聴者のあふれる法廷で、5人の裁判官たちは、一部の同性愛行為を終身刑とする反同性愛法は、定足数に満たない議会で可決されたので無効であると判決した。

「我々は非常に満足している。しかし、裁判所が人権侵害の問題に実質的に対処しなかったことは残念だ」と同性愛者の権利を支持してきたウガンダの法学教授Sylvia Tamaleは述べた。

28年間政権の座にある、元ゲリラ戦士であるYoweri Museveni大統領にコントロールされているウガンダ政府は、判決に対して控訴するか直ちには反応しなかった。

[JEFFREY GETTLEMANAUG: "Uganda Anti-Gay Law Struck Down by Court" 82014/08/01) on NY Times]
援助停止や減額など西側諸国からの圧力がかかっており、これを機にアンチゲイ法をなくしてしまうかもしれず、初志貫徹するやもしれず、今のところ様子見。



posted by Kumicit at 2014/08/02 08:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014/03/25

SeesaaWikiに引っ越し


インテリジェントデザインとハガルの関係は、インテリジェントデザイン運動が自然選択と突然変異による進化を嫌う理由を象徴的に表現している。

Giovanni Lanfranco: "Hagar in the wilderness" at Musee du Louvre Paris.
これには神学的帰結がある。進化が神の制御のもとにないなら、神が地球とその上の居住者のために将来必要なものを与えるという、摂理の概念とは相いれない。たとえば、神はハガル[創世記16章: Abrahamとの間にIshmaelをもうけた女性]が構成員である人類が原始の海から出現することすら保証できないので、ハガルが砂漠で必要とするものを準備できない。(ダーウィンのメカニズムの根源的な偶発性はダーウィニストSteven J. Gouldによってうまく表現されている。彼は進化のテープが巻き戻されて、再生されるなら、結果はまったく違うものになるだろうと書いている。神がひとたびAdamとEveを生み出す過程を起動したら、AdamとEveが生み出されるか、尖った耳のバルカン人が生み出されるのか、あるいは細菌に満ちた海が生み出されるのか、神は制御できない。)

[ Thomas Cudworth: "Theistic Evolutionists, Your Position Is Incoherent But We Can Help You!" (2008/06/21) on Uncommon Descent ]


気に入ったので、Giovanni Lanfranco:の描く天使をアイコンに使い、ATWIKI「忘却からの帰還 創造論/ID論」の表紙にも掲げてきた。

で、このATWIKIはblockquote内外の記述ルールが同一で、ネストできるとか、バックアップが容易とか、ページタイトル長無制限とか、使い勝手が良い。気に入っていたが、ここのところ、ATPAGEとATWIKIのセキュリティインシデントが続いたので、3連休で以下に引っ越しした。

==>忘却からの帰還 創造論とインテリジェントデザイン論 ( http://seesaawiki.jp/transact/ )

ページタイトル長制限のために、無理矢理切り縮めて変になったページタイトルもないわけではないが、まあそこそこの引っ越し。
posted by Kumicit at 2014/03/25 09:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ワイオミング州議会の民主的な科学の改訂の試み

ワイオミング州議会は民主的に、気候変動をめぐる科学の改訂を試みている。
In allocating funds to the state department of education, House Bill 1 provides, "neither the state board of education nor the department shall expend any amount appropriated under this section for any review or adoption of the next generation science standards as developed by the national science teachers association, the American association for the advancement of science, the national research council, and 'Achieve'" (capitalization as in original). The bill was signed into law on March 5, 2014.

州教育省への予算配分において、HB1は「全米理科教師協会とAAASとnational research councilとAchieveによって作成された次世代理科教育基準のレビューあるいは採択について、州教育委員会と州教育省が支出することを禁じる。」この州法案は2014年3月
5日に州法となった。

The exact requirements of the provision are unclear, the Casper Star-Tribune (March 14, 2014) observes: "Some say the provision, which came through a last-minute footnote, blocks the state from considering any part" of the NGSS. "Others, including the provision's author, say it prevents the wholesale adoption of the standards as they are written." As a result, legal staff at the state board of education, the state department of education, and the legislature are attempting to clarify its meaning.

厳密な法規定は明確ではないが、Casper Star-Tribuneは「土壇場の注記により州政府は次世代理科教育基準のどの部分も検討してはならないと言う者もいる。規定の提案者などは、現状での次世代理科教育基準の採択を禁じると言う」と報じている。結果として、州教育委員会と州教育省と州議会は意味の明確化を試みている。

What is clear, however, is that the NGSS were targeted in part because of their treatment of global climate change (which is one of four sub-ideas in the core idea of Earth and Human Activity at both the middle school and high school level). Matt Teeters (R-District 5), who coauthored the provision, told the Star-Tribune that the NGSS "handle global warming as settled science," adding, "There's all kind of social implications involved in that that I don't think would be good for Wyoming."

しかし、明らかなことは、地球気候変動(中学及び高校のコアアイデア地球と人間活動の4つのサブアイデアの一つ)の扱いを理由として次世代理科教育基準を標的としていることである。この規定の共同提案者である共和党District5のMatt Teeters州議会議員はCasper Star-Tribuneに「次世代理科教育基準は地球温暖化を確定した科学として扱っている。これは私がワイオミング州にとって良くないと考える、あらゆる社会的影響を含んでいる。」と語った。

[Wyoming blocks NGSS over climate(2014/03/14) on NCSE]
州法として成立した以上は、策定された次世代理科教育基準を民主的に改訂する他ない。「気候変動は理論に過ぎない」とか「気候変動モデルの強いところと弱いところ」とか、反進化論ノリになるかどうかはわかたないが、似たようなことをするかも。
posted by Kumicit at 2014/03/25 00:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする