2011/08/25

米国東海外の地震をめぐるLien Fangテイストなネタ

東海岸の地震をめぐって、Lien Fangテイストなネタが盛り上がったもよう:
@MichaelSLinden
Michael Linden
US Geological Survey's budget was cut by some $20 million this year. #justsaying
Aug 24

@emptywheel
emptywheel
March 15, 2011, Eric Cantor attacked USGS funding. August 23, 2011, freak earthquake hits his district.
Aug 24

Eric Cantorは、2011年3月15日に米国地質調査所の予算を攻撃した。おして、2011年8月23日に、異常な地震が彼の選挙区を襲った。

@emptywheel
emptywheel
And remember, Cantor attacked USGS and earthquake warnings AFTER the Japanese quake.
Aug 24

Eric Cantorが米国地質調査所および地震警報の予算を攻撃したのは、日本の地震が起きた後だ。

@emptywheel
emptywheel
And again--nuclear power site that is 20 miles from the epicenter is also in Eric "we don't need USGS or warning systems" Cantor's district
Aug 24

そして、震央から20マイルの地点にある原子力発電所も「米国地質調査所や地震警報システムはいらない」というEric Cantorの選挙区にある。
ただし、予算そのものは削減されたわけではなかった。
In a summary of the Republican-led House Appropriations Committee’s recommendations to the FY2012 budget the Geological Society of America (GSA) stated,

共和党が多数を占める連邦下院歳出委員会の2012会計年度の米国地質調査所予算についてのレ米んでーションには:
The House Interior Appropriations Bill for FY 2012 would restore proposed cuts in USGS energy, minerals & environmental health programs and natural hazards programs; the budgets for these programs would be unchanged from the FY 2011 enacted levels.

2012会計年度連邦下院法案は米国地質調査所のエネルギー・鉱物・環境健康の研究および自然災害研究についての予算削減提案分を回復する。これらの研究についての予算は2011会計年度(成立)と同レベルとなる。
and
The Committee recommends $135,965,000 for natural hazards, equal to the fiscal year 2011 enacted level and $2,096,000 above the budget request. The recommended level restores proposed cuts to earthquake, volcano, and landslide hazards.

連邦下院歳出委員会は、自然災害研究について、2011会計年度と同額の1億3596万5000ドル(予算要求の209万6000ドル多い)をレコメンドする。レコメンドレベルは地震・火山・地滑り災害についての予算削減提案分を回復する。
と書かれている。

So, funding for USGS division of natural hazards would not be significantly cut. This took some of the sting out of the criticisms. If we are going to berate the Republicans for their ill-advised fiscal decisions, we should be sure where there is smoke, there actually is fire.

したがって、米国地質調査所の自然災害研究予算は大きくは削減されない。これにより批判の問題点を取り除いた。共和党の無分別な財政判断を批難するとき、我々はどこに煙があって、どこに本当の火があるか確認すべきである。

[Jamie L. Vernon (guest post): "Liberals Mislead On GOP Cuts To USGS In Wake Of Earthquake, Still Reason For Concern" (2011/08/24) on The Intersection]
そのあたりも、Lien Fangテイストな感じ。
posted by Kumicit at 2011/08/25 08:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | Earthquake | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

SPEEDI

Wall Street Journal(日本版)はSPEEDIについて、次のように記述している:
SPEEDIの運営に携わっていた人々は、正常に機能していたと認識しており、原子力安全技術センターの数土理事長は、「SPEEDIは、3月11日の事故以来、何の落ち度も、遅れもなく、正常に本来の役割を果たしていると思う」と話している。

[不吉な放射能拡散予測―住民避難に生かせなかった日本政府 (2011/08/17) on WSJ(日本版)]


SPEEDIは機能していた



文部科学省 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI) -- 単位量放出を仮定した予測計算結果(これまでに行った1時間毎の予測)  (2011/05/27)」にあるように、3月11日16:00以降、1時間ごとに定時計算が行われている。
[3月11日(金)]

  • 23:00 風速場、大気中濃度、空気吸収線量率
  • 22:00 風速場、大気中濃度、空気吸収線量率
  • 21:00 風速場、大気中濃度、空気吸収線量率
  • 20:00 風速場、大気中濃度、空気吸収線量率
  • 19:00 風速場、大気中濃度、空気吸収線量率
  • 18:00 風速場、大気中濃度、空気吸収線量率
  • 17:00 風速場、大気中濃度、空気吸収線量率
  • 16:00 風速場、大気中濃度、空気吸収線量率
  • しかし、2011年6月10日付の菅首相名義の参議院の答弁書に計算開始時刻は欠落している。
    Q. 単位放出量に基づく放射線拡散予測情報の作成を開始したのはいつからか、正確な日時を明らかにされたい。

    A. 福島第一原子力発電所から一ベクレルの放射性物質が放出されたと仮定した場合の周辺環境における放射性物質の大気中濃度及び空気吸収線量率の試算等を同月11日から

    Q. 原子力災害対策本部に対し、文部科学省又は原子力安全技術センターから「SPEEDI」の存在が報告されたのはいつか。また、「SPEEDI」からのデータが報告されたのはいつか。それぞれ正確な日時を示されたい。

    A. 平成23年3月11日午後4時40分に、文部科学省から財団法人原子力安全技術センターに対し、福島第一原子力発電所から一ベクレルの放射性物質が放出されたと仮定した場合の周辺環境における放射性物質の大気中濃度及び空気吸収線量率の試算等を行うように指示し、その結果について、同日午後7時32分に、同センターから原子力災害対策本部事務局に対し初回の情報提供が行われた。

    [質問第一八一号 平成23年6月2日 森まさこ, 答弁書第一八一号 平成23年6月10日 内閣総理大臣 菅直人]
    しかも、2011/03/11 16:40時点での文科省の指示により計算が行われたことになっている。

    SPEEDIは使われた



    で、地震によりモニタリングポストのデータが途絶したとしても、できないことは線量絶対値の算出のみ。気象データは正常に入手されており、計算結果は通常通りの信頼性のあるもの。あとは、福島第一原子力発電所敷地近辺で、原子炉から放射性物質が放出されたかどうかがわかればいい。

    実際、現地では東電が車両などを使って線量を測定していた。そして、部分的に欠落はあるものの、10分値はおおよそ当初より公開されており、福島第一原発敷地境界での線量の推移は見えていた。

    ==>モニタリング追加・修正データ(3月11日〜21日) (東電)

    そして、この線量値が跳ね上がったのは、ベントでも水素爆発でもなくサイレントに進行した2011年3月15日。
    InitialObs1Fdot.png

    その時刻に対応するSPEEDIの予測図は...
    Speedi031512.png
    [2011/03/15 12:00定時予測 地上ヨウ素]
    Speedi031513.png
    [2011/03/15 13:00定時予測 地上ヨウ素]
    Speedi031514.png
    [2011/03/15 14:00定時予測 地上ヨウ素]
    絶対値が分からなくても、この範囲に警告を出すべきなのは明らか。

    もちろん、実測値で事態の深刻さ、あるいは軽さを把握すべき。その上で警報を継続するか、撤回するか決めればいい。で、福島県は、まさしくこの方面の絶対値を取得している。しかも、この観測値は経産省に届いている。

    View Larger Map
    福島県には3月11日23:49にSPEEDI情報の初回提供が行われており、これと東電の福島第一の線量値に基づいて、このような経路での観測を行ったと思われる。
    Q. 福島県に「SPEEDI」からの情報が送られ始めたのはいつからか、正確な日時及び情報の発信者と受信者について明らかにされたい。

    A. 平成23年3月11日午後11時49分に、財団法人原子力安全技術センターから福島県原子力センターに対し初回の情報提供を行っている。

    [質問第一八一号 平成23年6月2日 森まさこ, 答弁書第一八一号 平成23年6月10日 内閣総理大臣 菅直人]


    2011/03/15 13:17〜15:22に福島市から南東の川俣町高屋敷を往復した観測。福島市から南東へ進むと次第に線量が大きくなっている。それとともに、復路は往路よりも値が大きくなっている、
    ep41r1.png
    迫りくる放射性物質を見事の捕捉している。そして、この観測車両が福島にもどってきた15:22頃から1時間後あたりから、福島市の観測点で線量が20μSv/hへと上昇。
    ep4fukushima.png
    観測車両の背後に迫る放射性物質。そしてそのまま福島市内へと流れ込んでくるのが観測されている。

    発生源での12mSv/hという線量値、拡散数値予測、予測に基づく自動車観測、定点観測をあわせれば、浪江町・飯館村・福島市へと放射性物質が相当量流れ込んで来ることはほぼ確実に判断できた。東電もSPEEDIも福島県も、ここまで良い仕事をしている。


    しかし...



    しかし、官邸・保安院・福島県とも、30km圏外の飯館村・福島市に対して、避難準備区域と同等の外出制限を行うことはなかった。

    政府が動いたのは4月11日のことである。
    [官房長官記者発表 平成23年4月11日(月)午後]

    この間、周辺地域の放射線量等に関する情報が順次積み重なってまいりました。そうしたデータの分析に基づいて、周辺地域の避難について新たな決定をいたしたところでございます。.... まず、「計画的避難区域」を新たに設定することといたしました。



    そして、官邸は「SPEEDIは欠陥ソフトであり、使えなかった」と主張する



    東電は福島第一原発敷地境界での線量観測を行い、SPEEDIは拡散予測を行い、おそらく、それらに基づいて福島県や理化学研究所は実測し、警報を出せるだけの材料が揃えられた。

    しかし、細野統合本部事務局長(2011/05/02時点)は次のように述べた:
    「SPEEDIというのは、(放射性物質の)放出源のデータが正確に得られたときに初めて機能するシミュレーションの仕組みだ。大きな事故が起こったときには、モニタリングが安定的にできる状況ではなくなるかもしれないということは容易に想像がつくはずだが、実際問題として、今回の事故のあと動いていたモニタリングポストは、東京電力の4ヶ所と、福島県が持っていたものはほとんどダメになってわずか1ヶ所、その計5ヶ所のみだった。国がまともにモニタリングをできるようになったのは(事故発生から)1週間から10日後で、事態が最も深刻化していたときには、モニタリングができなかった。だから、原子力発電所の深刻な事故というのは、どういうもので、どういうことが起こりうるのかということについての想定がほとんどなされないまま、ソフトが作られていたんだと思う。したがって、(データの)公開がこれだけ遅くなったことは国民のみなさまに率直にお詫びをしなければならないと思うが、そもそもこのデータが使えるものなのかどうかも含め、SPEEDIというシステム自体に関係者は疑問を持っていたようなので、その欠陥が影響を及ぼしたのだと思う」

    [SPEEDIは欠陥ソフト「何が起こりうるか想定がないまま作られた」と細野氏 (2011/05/03) on ニコニコニュース]
    SPEEDIの持つリージョナルモデルと拡散モデルで算出された結果(相対値)に、モニタリングの結果から推定される放出量を乗じると予測値(絶対値)になる。その絶対値が不明だから役に立たないのだというのが立場をとっている。

    実際のところ、福島第一原発敷地境界での線量観測で、放射性物質が大量放出されたことがわければ、その時刻のSPEEDIの予測図(相対値)をテレビに出して、外出するなと言えば、それなりに役に立つだろう。モニタリングポストが完全動作したら、その予測図にμSv/h単位の数字が入り、深刻さがわかることになるが、その数字がないから役に立たないといことにはならないだろう。

    しかし、絶対値が求まらないので役に立たなかったというストーリーは、その後も官邸サイドは堅持しており、2011年7月末時点でも次のような答弁書を出している:
    緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)については、「防災基本計画」(昭和三十八年六月十四日中央防災会議決定)等において、関係省庁の迅速な応急対策の実施に資するため、得られた予測結果を関係省庁に伝達すること等を定めているが、平成二十三年三月十一日に発生した平成二十三年(二千十一年)東北地方太平洋沖地震の発生後、東京電力株式会社の福島第一原子力発電所について、地震による通信系統の途絶等により、原子炉の状態等に関する情報が入手できなかったため、実際の放射性物質の予測放出量等の情報を得ることができず、これに基づく放射能影響予測を行うことができなかったものであり、現在においても同様の状況にある。

    [答弁第三四〇号 内閣総理大臣 菅直人 (2011/07/29)]



    同じような理由で公表しなかったと主張する福島県



    菅首相名義の答弁書によれば、政府は福島県に対してSPEEDIを公表するなとは言っていない:
    Q. 政府又は原子力安全委員会は、「SPEEDI」からの情報を自治体に伝達した際に、これを外部に開示しないように指示をした事実はあるか。

    A.調査した限りでは、政府において、福島県に対しSPEEDIに係る情報を提供するに際し、これを公表しないよう指示した事実はない。

    [質問第一八一号 平成23年6月2日 森まさこ, 答弁書第一八一号 平成23年6月10日 内閣総理大臣 菅直人]
    福島県の判断は、官邸と同様で、絶対値が不明なので役に立たないというもの:
    予測データは県が国に提供を求め、ファクスで受けた。3月12日の時間ごとの風向きをベースに、放出されたヨウ素が拡散する予測が地図に掲載されていた。ただ、ヨウ素の放出量を「不明」とした上での予測であり、県は公表できる内容ではないと判断したという。地図は県に30枚示された。

    [県、爆発翌日公表せず 国の拡散予測図 (2011/05/07) on 福島民報]
    この報道は3月12日についてのもの。絶対値不明を理由に公表できるようなものではないと判断しているわけだが、なぜか3月15日にはSPEEDIの予測のウラを取りに行ったかのような経路で線量観測を実施している。


    考えられる理由の一つ



    WSJはSPEEDIの予測が公開されなかった理由を示唆するものとして、次のような記述をいている。
    放射線安全を専門とする東京大学の小佐古敏荘教授はインタビューでも、SPEEDIは避難計画に有用な情報を提供していたが、そのような恐ろしい決定に誰も関わりたがらなかったと述べている。

    [不吉な放射能拡散予測―住民避難に生かせなかった日本政府 (2011/08/17) on WSJ(日本版)]
    「恐ろしさ」はおそらく数の問題。

    3月15日時点で、避難あるいは外出制限の対象となっていたのは、避難指示区域(警戒区域)に7.8万人、緊急時避難準備区域に5.9万人の合わせて13.7万人。これに対して、3月15日に外出制限な警報を発令する対象は、福島市(29万人)、伊達市(6.5万人)、本宮市(3万人)、二本松市(6万人)、郡山市(33.6万人)など80万人規模と想定される。規模の大きさに沈黙したかもしれない。(SPEEDIが絶対値を出していないことを言い訳に)
    posted by Kumicit at 2011/08/25 07:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | Earthquake | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2011/08/21

    文科省による年間被曝量推定値(2011/08/19公表)

    2011年8月19日に文科省が実測値に基づく各地点の積算線量の推計値(2011/3/11〜2012/3/11)を公表した。この推定値を、座標値情報のない地点をgoogle mapで補って、地図上にプロットしてみた。

    大きな地図で見る
    (スケールは地図上の?マークをクリック:茶色が200mSv以上、黄色が20mSv以上)

    帰還する場合は、これから退避が必要か判断するための緊急時基準である上限20〜100mSv/年ではなく、1mSv/年を基準とするのが妥当なところ。除染しないで、半減期にまかせるとして、1桁落ちに100年程度。10mSv程度の場所だと、除染しなくても100年程度放置しておけば使用可能。急ぎたければ、最終処分場を確保の上、表土を剥ぎ取るなどの除染を行う必要がある。

    100mSv以上(2012/03/11時点累積推定)を最終処分場にして、他をなんとかするしかないが、政治的には数週間は無理だろう。
    posted by Kumicit at 2011/08/21 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | Earthquake | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2011/08/20

    東京電力管内の需要と気温 Update(08/19)

    東京電力管内の電力需要(時別最大)と東京の日平均気温のグラフを更新した(使用データはこちら)。
    TepcoVTokyo_0819.png
    気温は8/1以降上昇し続け、8/16に2011年最高となった。
    TokyoTemp0819.png
    これにあわせて時別最大需要も最高となった。
    TepcoVtokyo_20110819.png
    8/13〜8/16は土日および盆休みで需要は低め推移、8/19には雨とともに気温が急降下して需要は低め。来週(8/21〜26)はこのまま気温低めで推移すると予報されており、危機的な状況は8/18だけで済んだもよう。

    東北電力は仙台火力・仙台新火力・原町火力が地震で停止し、水害で水力発電の半数がダウン。女川原発も復旧・再起動までの道のりは長い。東京電力は火力を全復旧・老朽を再起動・緊急増設するも、福島第一・第二原発の脱落。関西電力・中部電力・九州電力も原発再稼働できず、供給力を維持するために火力に負担がかかっている。

    このため出力を弱めてメンテするとか、止めてメンテするこができなくなり、結果として事故が起きやすくなっている。
    会社発電所号機出力停止復旧
    東北電力秋田火力2号機35万kW8/17-
    東京電力鹿島火力4号機60万kW7/278/6
    関西電力姫路第2火力5号機60万kW7/27/14
    堺港火力2号機40万kW8/13-
    中国電力三隈火力1号機100万kW7/187/27
    8/10-
    四国電力坂出火力1号機29.6万kW8/18-
    九州電力苅田火力新1号機36万kW8/4-

    [火力発電8基故障…原発補う連続運転で (2011/08/18) on YahooNews by 読売新聞]

    来週は気温低め推移で、少し火力も止めたり、メンテしたりできるかも。
    posted by Kumicit at 2011/08/20 14:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | Earthquake | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2011/08/18

    あらためて3/12〜16の放射線量を振り返ってみる

    2011年3月12日〜16日の放射線量について、政府のIAEAへの報告と観測値から、振り返ってみた。

    3月12日 ベントまでの漏洩


    [(2)放射性物質の空気中への放出の推定について @ 解析に基づく推定]

    地震後、放射性物質の放出が顕在化したのは、3 月 12 日明け方に福島第一原子力発電所敷地内のモニタリングポスト MP-6 付近でのモニタリングカーによる測定で空間線量率が上昇した時のものである。この時、1 号機では格納容器圧力が異常上昇したうえで若干の圧力低下が見られたことから、格納容器からの漏えいが発生し、大気中に放出があったものと推定できる。解析では、既に燃料の溶融が始まっているとの結果となっている。その後の同地点でのモニタリング測定で 12 日昼までの間に線量率が上昇しているが、その間、1 号機ではベント操作を続けていたものの、D/W圧力は 14 時頃まで有意には低下していない。原子炉内では溶融した燃料から S/C に希ガス等の非凝縮性ガスが放出され、環境中に漏えいが続いていたとも考えられる。

    [Y 放射性物質の環境への放出 in 原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書−東京電力福島原子力発電所の事故について− (2011/06) by 原子力災害対策本部]
    この記述は周辺地域モニタリング結果に見えている。地点はばらばらなので、浪江町内とその他に分けた。また、あわせて福島県発表の南相馬市の値をプロットした。
    ep1obsNS.png
    これを見ると、福島第一原発1号機の弁操作を行い始めた9:15よりも前の3/12 8:50〜9:00に浪江町内で15μSv/hをピークとする線量が観測されている。明け方のMP-6付近の線量上昇が浪江に到達したとみられる。


    3月12日 ベント成功(14:30)と線量では見えない1号機水素爆発(14:36)


    東京電力は、12 日 14 時 30 分に D/W 圧力が低下し、ベントが成功したと判断している。この時点において、原子炉容器等での沈着や S/C での吸収がなされなかったヨウ素等も含めた放射性物質が大気中へ放出され、プルームの影響で MP-4 付近での測定で約 1mSv/h が観測されたものと考えられる。また、福島県が夕方から開始した南相馬市合同庁舎での測定で20μSv/h が観測されており、このプルームが弱い北風で一旦南に流れたのち、強い南風に風向が変わったため、拡散しながら北に流れた影響と考えられる。
    このベントによる放出は東電のMP-4がとらえていてる。

    そして、南相馬でも観測されている。
    init4.png
    ここで注目すべきは、福島第一原発のMP-4, MP-8, 正門付近のどれもが水素爆発直後に明瞭な線量変化を観測していないこと。MP-8と正門付近は10μSv/h以下を推移し、MP-4はベントによる放出と風で運び去られることによる減衰をとらえている。

    これは特に奇異ではない。建屋上部だけ吹き飛ばしても、そこに溜まっている放射性物質を拡散させるだけ。格納容器や圧力容器を破壊したわけでもないので、線量増加が観測されないのが自然。


    3月13日 3号機ベント


    13 日 8 時から 9 時にかけて、MP-1,4,6 付近で有意に線量率が上昇している。3 号機で原子炉水位が低下し燃料が露出した後でのベント操作をしており、その影響と考えられる。なお、この時期は弱い西風から南風に変わっていく気象条件であったため、このプルームが拡散して北上したものと推定される。南相馬市での測定では、およそ 1μSv/h 程度の線量率上昇になっている。なお、3 号機からの放出は D/W 圧力が複数回にわたって低下しており、それに対応して MP-1,4,6 付近で有意に線量率が上昇していることが確認できる。
    これも東電のMP-1とMP-4と正門付近が捕捉している。
    ep1obs1fe.png
    この放出および3月12日の放出の影響は、福島第一原発から北西方向に及んでいることが、経産相保安院6/2公開値にも見えている。

    大きなマップで見る



    3月14日 原因不明の線量増大と、線量では見えない3号機デトネーション


    14 日午前中にも複数の線量率の上昇が確認されているが、各プラントでの放出に関係すると思われる事象の情報は得られていない。そのため、線量率上昇の原因は定かではないが、13 日までに放出された放射性物質により、それぞれの測定箇所でのバックグラウンドが上昇しており、沈着した放射性物質が再浮遊して空間線量率が上昇した可能性も考えられる。

    福島第一原子力発電所モニタリング追加・修正データ(3月11日〜21日) (2011/05/28) で、3/14 11:01の3号機デトネーション前後を見てみた。この日は、正門付近とMP3のデータがあり、さらに5/28にはMP4のデータが追加公開されている。
    ep2obs1f.png
    3号機の場合も、前日から断続的にベントが行われていたこともあり、MP-4では、2:20頃、7:30〜7:45頃、9:00前後にピークが見られるが、デトネーション前後には線量増加は見られない。むしろ、50分程度の間は急減し、その後はデトネーション以前のレベルにもどっている。(北から風が吹いていて、北西に位置するMP-4では線量の低い空気が流れ込んだかも)

    正門付近ではデトネーション直後に線量の増加が捕捉されている。ただし、2:20頃および22:00頃のピークよりは、はるかに小さい。爆発の威力は1号機よりも大きかったが、それでも吹き飛ばした部分が建屋上部だけで、大して放射性物質を拡散させていない。



    3月15日 2号機の異音と最大の漏洩


    14 日 21 時、MP-6 付近で約 3mSv/h の空間線量率が測定されている。その後、一旦空間線量率が下がったものの、15 日 6 時以降再度上昇し、9時には約 12mSv/h の数値が測定されている。14 日 21 時は 2 号機では、ウェットベントにより D/W 圧力の低下がみられている。また、15 日 6 時頃には 2 号機で爆発音とともに S/C 圧力が低下していることから、2 号機からの放射性物質の放出と考えられる。ただし、4 号機の原子炉建屋の爆発も同時期に発生しており、明確な区別ができない状況である。この時期はおおよそ北風であったため、プルームは南下し、茨城県東海村の独立行政法人原子力日本原子力研究開発機構等で線量率の上昇とともに、大気中から放射性ヨウ素等が検出されている。

    さらに MP-6 付近において、15 日 23 時と 16 日 12 時にも空間線量率の上昇が見られており、前者は 3 号機、後者は 2 号機において D/W 圧力の低下が見られることから、それぞれ 3 号機及び 2 号機からの放出と考えられる
    正門付近の線量にも明瞭に3回の放出が捕捉されている。
    ep00.png
    これらが一連の福島第一原発からの放射性物質放出の最大イベントである。3/11〜3/14の放出と比べて桁違いの物量である。飯館村や福島市など北西方向に位置する場所に放射性物質が降り積もったのも、このイベントによる...
    init5.png

    福島県による3月15日午後の福島市〜川俣町および福島市〜二本松市東部〜川俣・田村・船引の往復路の観測値を見てみると...

    View Larger Map

    まず、2011/03/15 13:17〜15:22に福島市から南東の川俣町高屋敷を往復した観測。福島市から南東へ進むと次第に線量が大きくなっている。それとともに、復路は往路よりも値が大きくなっている、
    ep41r1.png
    迫りくる放射性物質を見事の捕捉している。そして、この観測車両が福島にもどってきた15:22頃から1時間後あたりから、福島市の観測点で線量が20μSv/hへと上昇。
    ep4fukushima.png
    観測車両の背後に迫る放射性物質。そしてそのまま福島市内へと流れ込んでくるのが観測されている。

    一方、2011/03/15 14:33〜18:34にかけて福島市から、川俣・二本松東部・田村・船引を往復した観測では、二本松市東部に線量の高い領域を観測している。その値は往路よりも復路で減少している。おそらくプリュームが通過した後なのだろう。
    ep4r2.png

    これらを合わせてみると、北西方向に流れた放射性物質が福島市中心部へ流れ込みそうなに見える線量分布を、うまく捕捉できている。即座に、川俣町・福島市に警報を出すことを決断できる程度の良いデータだ。

    絶対値はわからないが、放射性物質の拡散方向はわかるSPEEDIの単位量放出計算の定時予測も、次第に北西方向への拡散を予測し始めていた。
    Speedi031512.png
    [2011/03/15 12:00定時予測 地上ヨウ素]
    Speedi031513.png
    [2011/03/15 13:00定時予測 地上ヨウ素]
    Speedi031514.png
    [2011/03/15 14:00定時予測 地上ヨウ素]

    この予測からすると、南〜西方向も気がかりだったはず。そして、まさにその方向についても自動車によるモニタリングが行われていた。

    経産省の周辺地域モニタリング結果 (2011/06/02) の東北自動車道・常磐道(3/15 14:25〜21:00)の福島西IC〜いわき四倉ICを往復した観測をみてみると、福島市の線量増加の前に、二本松・本宮・郡山で線量増加が観測されている。南方の"いわき"も注意が必要だが、南〜南西〜西方向では主として西方向に対して警報を出すべきであることが確認できる。

    ただし、福島県・日本原子力研究機構の観測値やSPEEDIの定時予測に基づいて、外出制限などの警報は出されなかった。




    posted by Kumicit at 2011/08/18 00:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | Earthquake | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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