2015/08/14

「波動」への言及(つづき)

前回の続き...

EM関連サイトは、ぞれぞれ用語・記述レベルを違えている。たとえば、"emro"サイトは、わりと抑制されている。まあ、「EMやEM・Xを材料に混入させ、800℃以上で焼成したセラミックスから、EMにも含まれる光合成細菌が蘇生する[FAQ 51]」(via wikipeida)という記述は見られるものの、怪しいキーワード「転写」への言及はなく、「放射能除去は主張している。)

一方、rensaiを含むecopure.infoサイトは、「波動」連呼状態。あやしい主張群も、ここ:
  • ヒヨドリやカラスを退ける[2012/01]
  • 口蹄疫や鳥インフルエンザを退ける[2012/01]
  • 放射性物質を消滅させる[2012/01]
  • 交通安全[2013/08}
  • 地震被害をなくす・雷除け・天災がおこらなくなる[2013/08}
  • 電磁波障害の低減[2013/08}
  • 電気代削減[2013/08}
  • 電気製品の機能向上や寿命延長[2013/08}
  • 人間関係が改善する・イジメがなくなる[2013/08}
  • 動物が仲良くなる[2013/08}
  • 生命力が高まる・生命の息吹が感じられる[2013/08}
  • 健康になる・病人がいなくなる・体調が良くなる[2013/08}
  • 頭も良くなる[2013/08}
  • 人類の抱えるほとんどの難問をすべて解決する[2013/08}

そして、dndサイトはecopureほどで波動連呼していないが、emroほど抑制されてはいない。

このサイト間の差異からすると、「波動」などの用語が訴求する人々と、胡散臭さを感じさせる人々がいることがわかっていて、使い分けているようだ。

この使い分けが意図的であるなら、2015年7月2日の名誉棄損訴訟における...
比嘉氏は同社記者から取材を受けていなかったが、記事では微生物の効果について「開発者の比嘉照夫・琉球大名誉教授は『重力波と想定される波動によるもの』と主張する」などと記載。[Sankei 2015/07/03]
という奇妙な記述の理由が見えてくる。

四半世紀前から「現代農業」の連載[(1) 1991/08(11) 1993/07]などで、「波動」を掲げてきて、現在も「波動」などのキーワードを連呼している以上は、能動的に検索した人々が「波動」にたどりついてしまうのは仕方がない。しかし、そうではに人々(すなわちemroサイトが対象としている人々)にまで、新聞報道の形で、「波動」ネタが届けられることは、望ましくない。したがって、そのような人々に対して、「自分たちは非科学を主張していない」と広報しておく必要がある。その広報手段として(そして、同様の報道を躊躇させるために)、訴訟を行うのは効果があるだろう。


もっとも、実際のところは、「波動に胡散臭さを感じる人々」が、「波動」を含む豪快な主張群を目にしたとしても、「自分の信念に合わない聖書の記述への反応」と似たような反応をするかもしれないが。たとえば...
  1. 「EMが環境に良い」以上の知識はなく、それ以上、知る気はない。提唱者が誰であるか知らないし、知る気もない。提唱者が何を主張しているかについて、関心もない。聞かされたところで、聞き流して、記憶にも残らない。
  2. 荒唐無稽な主張は、すべて冗談だと受け取る。「電気製品の機能向上や寿命延長」といった主張を聞いたところで、「本気で言っているわけがない」と思う。それを批判する者たちを、ただの揚げ足取りあるいは、嫌がらせだと思う。
  3. 何らかの理由・理屈を追加したり、主張を改変したりしてから、それらの主張を受け入れる。あるいは比喩扱い。「屋外で活動すれば健康的」とか「EM団子づくりで土に触れると・・・」といった麗しい解釈をするとか。

posted by Kumicit at 2015/08/14 04:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015/08/12

自分の信念に合わない聖書の記述

自分の信念に合わない聖書の記述に、キリスト教徒はどう反応するのか?あるいは、そのような記述をそもそも知らないのか?

少し例を見ておくと...

いろいろ死刑


聖書はいろいろ死刑を定めており、その中には、不倫(レビ記20章10節)・口寄せや霊媒(レビ記20章27節)・父母を罵る(マタイによる福音書15章4節)・土曜出勤は死刑(民数記15章32-36節)などがある

[James Tissot: The Sabbath Breaker Stoned](土曜出勤者を死刑にする様子)

一方、米国では今でも30%近くが、聖書は神の言葉だと信じてる。
GpollBibleGodWords.png
[Gallup Poll (2014)]
では、これらの人々が、聖書の言葉に従っているかというと、もちろん、そんなことはない。たとえば...
神は、『父と母を敬え』と言い、『父または母をののしる者は死刑に処せられるべきである』とも言っておられる。 (マタイによる福音書15章4節)
を実行する者などいない。それをジョークにしたネタも...

聖書を全文読んで諳んじている人はまずいない。そもそも「父または母をののしる者は死刑に処せられるべきである」という記述の存在を知らず、そんな記述がある言われたところで、驚いたり...

ハゲのエリシャと42人の子どもたちと2頭のクマさん


「ハゲに向かってハゲハゲ言うな」というおとぎ話だと思えば、なんのことはない列王記下2章19-25節...
LA_HIRE-The_Children_of_Bethel_Mourned_by_their_Mothers.jpg
[Laurent de LA HIRE(1606-1656):"The Children of Bethel Mourned by their Mothers"(1653) at Palais Saint-Vaast, Arras]
(ハゲのエリシャに向かってハゲハゲ言ったために殺された子供たち)

しかし、聖書は字義どおりに正しく、書かれたことは史実だという立場をとる創造論者たちにとって、「ハゲに向かってハゲハゲ言ったくらいでクマさんに殺される子どもたち」というのは、望ましいものではないようだ。小さな子どもではなく青年で、暴徒でとか、いろいろ言う創造論者たちもいる。

何かと盛り上がるネタのようで、Yahoo Answersなどにも、わらわらある。「小さな子どもではなく青年で、暴徒で」とか反応する人々もいれば、旧約聖書を別扱いする人々やら。

反応のパターンは色々あるが、IronChariotsは以下の例を挙げている。
  • おとぎ話
  • エリシャは見知らぬ街だったので、生命の危機を感じていた。
  • エリシャも人間なので、間違いもある。
  • 神がやったことだから良きことのはず
  • 子供ではなく青年だ
まあ、そんなところだろう。

私のイエス


当然のことながら、イエス・キリストが保守と一致しない点、リベラルと一致しない点があり、そのことを保守・リベラルとも認識はしている。そして、保守は、イエスが自分たちの考えに近い倫理問題を優先し、富の不平等や非合法移民の扱いについて重視していないと考え、リベラルはその逆である。まあ、「私のイエス」というやつ。このあたりが、普通の反応かもしれない。




posted by Kumicit at 2015/08/12 18:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015/08/11

波動への言及

EMの出自は、世界救世教のようだ。
EM(Effective Microorganisms)は、琉球大学農学部比嘉照男教授に よって開発され、救世自然農法の目指す5つの条件をクリア出来る 応用技術として、普及しています。... 比嘉教授は、創始者岡田茂吉師の思想に触れ「自然界はもともと これら5つの要素が潜在しており、自然農法はこの自然の持つ力を 最大限に発揮させる農法である。」「あらゆる物は存在の正当性を有するが、 自己矛盾を生じた場合は滅亡し、自己完結出来るもののみが残りうる。 そして、人間はこの原理を無限に利用しうる。」という点に着目しました。

[有効微生物群応用技術 on 自然農法国際開発センター]
この自然農法国際開発センターは世界救世教教祖である岡田茂吉師が創設した財団法人である。

で、世界救世教には「波動」は存在しないようで、1990年頃に書かれたと思われる「Kyusei Nature Farming in Japan: Effect of EM on the Yield of Paddy Rice (救世自然農法: 米収穫へのEMの効果)には、"wave", "hado", "vibration"という記述はない。また、1991年3月付けで出版された「微生物の農業利用と環境保全」は、一見すると、普通の農業本っぽい本でも「波動」を連呼していない。

ただし、見慣れた怪しい記述が散らばっている。たとえば...
物質は無機・有機にかかわらず分子状になると固有の共鳴構造(外部からの波長刺激に対し共振する性質)を持っているが、水素結合のレベルの高い水は共鳴場がきわめて強く、あらゆる物質の共鳴構造を写し取る能力があるといわれている。水は純度を上げ続けると水素結合子のレベルも高まり、通常の水とは異なった物理化学性を有するようになる。極論すればこのような水は他の物質のもつあらゆる共鳴構造、すなわち物質固有の性質をその振動(共鳴)を通して記録し保持して他へ伝える能力があるということになる。

[比嘉照夫:"微生物の農業利用と環境保全", 農山漁村文化協会 (1991/3), P.103]
1998年のJacques Benvenisteの「水の記憶」事件を思わせる記述である。そして、この流れなら、ホメオパシーに連鎖して不思議ではない。実際、EMの原典というべき1992年の「波動の作物生理学」という直接的なタイトルの記述では、「波動」を連呼するとともに、ホメオパシーへの言及もある。
物質の共鳴現象を写し取る場となり,水そのものがその物質の性質を帯びるようになってくる。超微量の成分を水に溶かし,分析では不可能なレベルまで薄めて治療薬とするホメオパシイー医療法もこの原理に従っている例が多く,水の性質の応用は無限的な意味をもち始めている。

[比嘉照夫:"波動の作物生理学", 騒音制御, Vo1.16,No.6,1992(via breathingpower)]
あまり読む気がしないかと思われるので、KH coderで共起グラフを描いておいた。
gentenC.png
とても明瞭に、よくあるキーワードが連なっている。そして、翌1993年には、サンマーク出版から、「地球を救う大変革」が出版。ここで興味深いのは、あっち側用語としての「抗酸化・酸化・還元」などとともに...
水には情報転写力があって、雨になって落ちてくると、最初にあたった物質の情報をつかんでしまうことです。(p.55)
雨水は落下浸透する過程で最初に触れた活性物質の性質を転写し、それを他に伝える機能がある(p.109)
[比嘉照夫: "地球を救う大変革", サンマーク出版 (1993/10)]
が再び主張されているが、ひとたび連呼した「波動」が、見当たらなくなっている。1991年時点にもどったのか、それとも、キーワード「波動」を避けたのか。

そのことを考える材料として、15年後の2つの連載記事がある。いずれも、EMの対象として出されるトピックは同様だ。
higaDND2.PNG
higaRNS2.PNG

しかし、「波動・結界」への言及頻度は大きく違っている、
higaDND1.PNG
higaRNS1.PNG
意図して、想定読者によって記述を変えているようだ(もっともそれは、特に奇異なことではないが)。

posted by Kumicit at 2015/08/11 22:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015/07/03

東京電力の公表している電力使用量と東京の気温 (2015/06)

東京電力の過去の電力使用実績の最大需要と、気象庁の過去の気象データの東京(地点番号47662)の日平均気温を平日についてプロットした。
TepcoTokyo_201506.PNG
直近の最大電力使用量がこれまでよりも少ないことが見える。

これは日単位の電力使用量でも同様:
TepcoTokyo_201506_D.PNG

2012年以降だけを見ると...
TepcoTokyo_201506_Da.PNG
2012年と2013年はほとんど差がないが、2014年に入ると差異が見える。そして、2015年に入ると明瞭な電力使用量の減少が見られる。

そこで、2004年以降のPPSの送電端供給量の月次推移を、資源エネルギー庁の電力調査統計の「2-(8)特定規模電気事業者」の年度別Excelファイルを結合してグラフ化してみると...
PPS_201504.PNG
2010年〜2013年前半までは、PPSの商売に大きな変化は見られないが、2013年後半から送電端供給量が目立って増大している(圧倒的シェアをエネットが占める状況は変わりないが、それ以外のPPSが供給量を増加させている)。もちろん、東京電力と比べれば、ごく小さなものだが、PPS全体合計すれば、四国電力・北陸電力と同程度。
PPSPower2014.PNG
この影響が、目に見える差異になってきているもよう。
posted by Kumicit at 2015/07/03 08:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015/05/22

「地球は温暖しているが、対策してもムダ」あたりに退却する?共和党

今年(2015年)はじめあたりから、共和党が「温暖化否定」から「温暖化しているが、対策してもムダ」へと転じる兆しがあるとの報道がみられる。
While still repeating a number of easily disprovable climate denial whoppers (e.g., that the earth hasn't warmed in the last 18 years, even though it has, and the usual cheap attempts to downplay the overwhelming scientific consensus), the author seemed to be striving to reposition conservative opinion to accept the reality of climate change -- this, even though he is a member of the Heartland Institute, notorious for (among other travesties) its repugnant Unabomber billboard campaign.

Others have noted the curious phrase that is now ubiquitous among Republican politicians – "I'm not a scientist" -- and like Jonathan Chait, have speculated on whether this phrase represents a kind of tactical retreat:

“I am not a scientist” makes sense as a way to resolve a tension within Republican politics. It may be a political liability for Republicans to openly associate themselves with the kook conspiracy theories popular among conservative ideologues. One solution might be for Republicans to concede that anthropogenic global warming is indeed real, but that any solution is simply too costly. That might allow Republicans to minimize their kook exposure while still hewing to the bottom line party doctrine that individuals and firms ought to be able to dump carbon into the atmosphere for free.

[kindler: "The Impending GOP Retreat on Climate: From Denial to Do-Nothing-ism" (2015/01/09) on DailyKos]

3月にも...
Ed Rogers’s piece last week on global warming is timely in a number of respects and worth reading to see how the Republicans, having lost their argument that global warming is not real and man-made, have shifted to a new argument: Global warming may be real, but the solutions cost too much and won’t work anyway. The new Republican argument against doing anything to combat global warming has moved from denial of its existence to despair of its mitigation. This is what passes for progress today in the Republican Party.

[Carter Eskew: "The Insiders: Republicans move from denial to despair on climate change" (2015/03/09) on WashingtonPost]
とはいえ、気候変動研究予算削減など、今のところ、温暖化否定の立場で行動しているように見える。
Living down to our worst expectations, the House Committee on Science, Space and Technology voted Thursday to cut deeply into NASA's budget for Earth science, in a clear swipe at the study of climate change.

The committee's markup of the NASA authorization bill for fiscal 2016 and 2017 passed on a party-line vote, Republicans in the majority. The action followed what appears to be a deliberate attempt to keep Democrats out of the loop. According to Rep. Eddie Bernice Johnson (D-Texas), the committee's ranking Democrat, her caucus "did not even know [the markup] existed before last Friday. ... After we saw the bill, we understood why."

As outlined by Marcia Smith at SpacePolicyOnline, the measure would cut NASA's Earth science budget to at most $1.45 billion in fiscal 2016, from $1.77 billion currently -- a cut of $323 million, or nearly 20%. Under some circumstances, the budget could shrink even further to $1.2 billion, a cut of nearly one-third. Compared with President Obama's request for fiscal 2016, which is $1.95 billion, the proposal would amount to a cut of at least 26%.

The budget plan perfectly reflects the House GOP's glorification of space exploration, which masks its disdain for research on climate change

[Michael Hiltzik: ""The GOP attack on climate change science takes a big step forward" (2015/05/01) on LA Times]
ただ、共和党大統領候補の座を狙っている人々の気候変動に対する立場は様々:

Is human activity contributing to climate change? Should we do anything about climate change?
Marco RubioUnclearUnclear
Ted CruzNoUnclear
Rand PaulYesYes
Jeb BushUnclearUnclear
Chris ChristieYesYes
Scott WalkerUnclearUnclear
Mike HuckabeeUnclearUnclear
Rick SantorumUnclearNo
Rick PerryUnclearUnclear
Bobby JjndalYesYes
Carly FiorinaYesUnclear
Lindsey GrahamYesYes
Ben CarsonUnclearUnclear
Sarah PalinNoNo
John KasichUnclearUnclear
Mitt RomneyYesYes
John BoehnerUnclearUnclear
Mitch McconnelUnclearUnclear
Jim InhofeNoNo

[THE GUIDE TO REPUBLICANS AND CLIMATE CHANGE (2015/02/08) on National Journal]


posted by Kumicit at 2015/05/22 08:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | Sound Science | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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